地獄の季節




ああ、やり過ぎてしまった―――
もう得れぬこの快感。


ふとした事から、共闘は狂闘となる。
未だ、しっかりと根付く憎しみをぶつけてくる君を
僕は斬り伏せるのがとても愉しいのだ。
その肉を、僕の愛刀で抉ると
君が痛いと、眉を顰めて歯を食い縛る。

知っているか?この瞬間の為に研いで在るのだと。

和紙を裂いた様な傷口など、美しくは無いものだ。
三日月の様な鋭い傷が美しい。
…だが、最近君は恐れを知らぬ。
傷が癒えるのを良い事に、あまりにも勇猛果敢に飛び掛ってくるのだ。
それに伴い僕の刃も鋭さを増す一方で。
手脚の表皮から筋を斬っていたその行為が
いつの間にやら筋から骨へ。
突き立てて臓物を掠めていたそれは
貫通してその身を串刺しに。

嗚呼、もっと、もっと深く、もっと…
僕の本能が止まらない。
その、すぐに癒えるのが腹立たしくて、かと云って都合良くも有り。
繰り返殺せる生贄の如き君を、使役出来て本当に幸せだよ。
しかしそれの先を見てみたい知的好奇心は、サマナー特有の性か?


その先を見る為に、あくる日…逃げぬ様に翼をもいだ。
だからと云え無抵抗なぞ風情の欠片も無い。
逃げ回れる程度に残した身体の機能。
その、怯えた眼を見ると、人道に背く行為等という意識は消える。
君から滾々と湧き出る美酒に、空気が酔わされる。
しかし、檻に飾った君を鑑賞するばかりでは進まぬ。

「これはね…再生能力を掻き消す刃なんだ」

懐かしいそれを、すらりと鞘から抜く…
アポリオンキラー

「人修羅である君には効くのかな?」

それが分からぬから、これから試そうと云うのだ。
あの、当たり前の様に癒えていく傷が、塞がらぬ。
そう聞いた君は怯えているね。

知っているか?君が意識を手放し
僕の兇刃に倒れるその瞬間。
哀しげに、苦しげに、切ない表情で手折られる君を見て…
僕の胎が嫌な熱を持つ事を。
何か分かる?
…しかし、いつもすぐに立ち直る君が居た。
君も、そうどこかで思っているから、その怯えは完きものでは無かったのだ。

だから、今度こそ違う。
死が、そのすぐ先に在る…!
君の恐怖は本物、真実の絶望、癒える事の無い疵をその身に宿す。
それを見て、我慢できない。
サマナーが使役する悪魔を、どう扱おうが構わないだろう?
慰み者にしようが、殺そうが。
それは…契約の内に入っているのだから。
ねえ、そうだろう功刀君?
僕に犯されようが殺されようが、それは契約内…

「ひっ…嫌、だ、死にたく…ないっ」

あああ、いつもより、震えるその声に快感が駆け抜ける。
体中のマグが暴走する、その君の血に惹かれて躍りだす。
刃を、突き立てる度に、溢れ出す悲鳴が僕の熱を、上昇させる。

あああ、君の、腕が、脚が、削がれていく。

あああ、動けなくなった君を、靴の裏で踏みにじる。

嗚呼、僕の息が乱れる。
君の心音が、乱れる。
僕のが、頭をもたげている。
君が、項垂れて虚ろな眼をしている。

振り上げたアポリオンキラーに、君が金の眼を輝かせ
いよいよ完き絶望の色を宿した…!
あ、ああっ
良い、好い、イイっ

「やだああああああ
 あ、あぁ…
 がっ…あふ…っ…」

断末魔。

がくりと、崩れた君を見下ろす僕は…
放心して呼吸を荒げたまま…だらしなく哂った。
口の端から垂れる唾液を舌で舐め上げる。
下着を濡らす生暖かい感触に、恍惚として呟いた。

「ふ、ふふ…ようやくイけたぁ…っ」


地獄の季節・了



↓↓↓あとがき↓↓↓
ライドウ曲として薦められたALI PROJECT『地獄の季節』から。
本格的にSなライドウ。
性的興奮を暴力でしか得れない。
殺してようやく達する事が出来た。
サマナー失格…