ヴァニラ・アクシス

(バレンタインSS)



「ちぃっす!修羅の兄貴!!」
窓の下から妙な挨拶が聞こえて、二重にしてあるカーテンの薄い層を少し捲る。
隙間から下を臨むと、黒いマスクも仰々しい猫眼のロングストレート。
ぞわりとして、学生服の詰襟をかちりと締める。
下の階に小走りに駆ければ、ライドウの姿は無い。
奴の事なんて別段どうでも良いか、と思い直し玄関を開けた。
「ちょっと貴女」
「おはようござぁっす!お迎えにあがりやした!!」
「要りません、電車使ってますから…って云うかバイク通学は駄目なんです」
「修羅サンの走りのテクが泣きやすぜ!錆びさしちゃ勿体無ぇっすよぉ」
黒いカラスマスクの下がモゴモゴと、眼下は少し緩んで。
どうしてそんなに嬉しそうなんだ、招き猫みたいだ。
「近所に何噂されるか分からない…家の前で待つの、止めて下さい」
あからさまにヤンキーなのに、本当止めてくれ。
「俺には自転車が……っ、え?」
踵を返して駐輪場のルーフ下を見れば、バイクの横が妙にがらんとしている。
「え?えっ?」
無い、自転車が無い。二度、三度見しても無い。
駅まで漕ぐソレが視界に無い。
「ん!そぅいやあライドウの奴が乗って行ったっすよ、チャリンコ」
「はぁ!?」
「後ろに剣道用具みてーなバックパック背負って、何すか、木刀?」
あの男、俺の自転車使って神社に行きやがったのか。
確かに家で素振りするなとは怒鳴ったが、誰も俺の自転車で行けとは云っていない。
背後のネコマタに、納得いかないまま、呟いた。
「…あの、乗せてって下さい」
このままでは間に合うか分からない、行きは縋った方が楽だ。
「ニャーんッ!修羅の兄貴とタンデム!ステキ!!!!」
ヤンキースタイルが瞬時に乙女になって、俺は溜息を吐いた。
「自分のバイクでは置き場に困るから、頼むだけです」
促し、その自分の愛車から引っ掛けてあるメットを掴み持つ。
「安全運転で!宜しく…お願いします」
Dカンにコードを通して締め上げると、ネコマタはコクコクと力強く頷いた。

「あんなタラシのどこが良いんスかね〜」
曲がり角、速度を落とした時に前方から聞こえた。
それに完全同意とまではいかず、吐き棄てた。
「ああいうのが好きって女性も大勢居るんでしょう」
「自分は兄貴一直線っす」
「どうでも良い」
流しつつシールドの向こう側、接近しつつある神社を視界の中央に留める。
薄暗いその境内、無人で誰も寄り付かない偏屈なその場所。
手入れもされていない樹々の隙間から、影が見えた。
上下黒の着物袴で、得物を振るその姿。
その瞬間は哂っていない事実が、妙に脳裏に焼きつく。
「本当、どうでも…良い…俺、悪魔には興味無いので」
境内の隅に停めてあった自転車は、やはり俺のものだった。
振られていたその輝きは木刀では出せない反射。
やはり日本刀だった。


「んにゃっ!お気を付けて!兄貴!」
仰々しくお辞儀をするネコマタ、黒のレザーオールインワンが艶めく。
その身体のラインがくっきり出る着衣は、いくらバイク乗りでも戸惑う。
「学校ですから、危険って危険も無い、貴女の方がよっぽど危ないですから」
しっしっ、と早く行けの合図で腕を振るう。
鋭いけど煩い程でも無い排気音が遠ざかって行った。
「ひゅーやるぅ」
振り返れば、雑踏を背景にニカニカと笑う新田が居た。
「何、二輪仲間?それともいよいよ彼女かお前?」
鞄を掛けた腕の小指を、クイクイと曲げ伸ばしして喰いつく。
仲間でもなければ、仲魔とも認めたつもりは無い。
「どれも違う」
「まさかアッシー?ひでー!!」
「だから違うっつってるだろ」
半分無視してツカツカと電車のホームに一直線する。
でもこの男は俺を脱線させんと必死だ。
「ゾッキーの総長すか?矢代兄貴ィ」
「いい加減にしろよお前」
ジロ、と眼鏡のフレームから露出した範囲の新田を捉える。
「怖ぇの、いやいやちょっと敏感になってるだけだっつうの、悪ィ悪ィ」
「何」
電車の有象無象、俺にとっての異界に足を踏み入れつつ、新田が発した。
「明日は何の日か分かってんのか?お前」
その言葉に今日という日を思い返す。
ああ、そうだ、まだこの世界には日付が存在していた…
「セント・バレンタインデェーッス!!」
「…ああ、今日、十三日か」
そう、俺にとっては前日が問題だから。
重い気が肩紐の喰い込みを更に強くした気がして、げんなりと吊革を掴んだ。
じっとりとした満員電車の異界で、息を潜めて思案していた…
また今年の今日も、こっそりと引き受ける依頼を思って。





「何だい、その紙袋は」
台所で何やらごそごそと立て込んでいる人修羅を見る。
「あんたには関係無い」
いつも通りの返答に、僕もいつも通りの哂いしか漏れない。
汗は湿らなかったが、袴胴着を脱衣籠に放って来る。
この世界はカラスの眼が無いので、鍛錬しても清々しい。
奴等にそういう所を見せたいとは思えぬのだ。
「あの自転車、空気抜けてるよ」
「あんたが入れろよ、道中パンクさせたんじゃないのか」
「…あぁ、ヒールで刺してしまったのかもねぇ?」
「馬鹿云え」
侮蔑と共に小さな鍋に火をかける、暗い色のサロンエプロン。
「ねえ、僕の夕餉は功刀君」
「いつからあんたの食事係になったんだ俺は、毎晩あると思うなよ」
「この世界でも変わらず君の主人だから、命令」
「煩い…これは、人間の…用事だ」
薫ってくる、カカオのそれ。
「そういえば悪魔達もクスクスと囁いていたよ、バレンタインデイ」
女性悪魔が人間の僕に寄越そうとするのは、本物のチョコ。
「でもね、あまりに多く頂いても困るだろう?」
湯せんして、黒いその塊をトロトロと蕩かせる君。
カウンターキッチンなる優雅な其処から覗き見て、続ける。
「おまけにその日は恋敵も多い…そんな日にわざわざ寄越すのだから、余程自信があると見た」
「…」
「普通に、僕が歓びそうな貢物を頼むよ、と一言云っておいたよ」
「このホスト野郎」
「ホスト?ああ、それも良いかもね、僕には合っている」
もしかしたらサマナーよりもね、と、せせら哂う。
しかし…今、この場に学生服のシャツとスラックスだけで居ると、薫りが移りそうだ。
「何故君がチョコを作っているのだい?まさか意中の相手でも?」
「違うってか答える義理も無い」
真剣に粉を振るうその姿、そのさらさらと零れ落ちる白い風花に、フッと吹きかけてやる。
「っげ!…っほ、ゲホッ!!」
「おっと失敬…塵程の接触でも、契約破綻の亀裂へと繋がる可能性が有るからねえ?」
「っ、さ、いあくっ、げほっ」
「ほら、吐き給え功刀君?吐くまでまともに調理出来ると思うなよ」
フフ、と哂って上から見下ろせば、じとりと恨めしい視線が撥ね付けて来た。
睫に粉雪がまだかかっている…もう冬も終え始めているというのに。
僕の吐息で…と思うと、滑稽で胎に力が籠もった。
「俺があげるんじゃ無いんだよ」
「何、ではこの紙袋の山は?」
「あんたと同じ、依頼だよ依頼…ほら…」
適当に掴んだ袋の中から、がさりと指先に踊る紙。
視線を流せばレシピだという事が解る。
「これ作ってくれ、って、その通りに材料入ってるから、俺が作るんだよ」
「どうして君が?材料すら揃えたのなら自ら作った方が早いだろう」
「材料揃えても作れない人は作れないんだよ」
作業続行する君、きっともう答えたから赦された、と思っているのだろう。
「クラスの女子から君はチョコではなくレシピを頂戴するのか」
「去年から」
「ククッ…滑稽だ、それはそれは…」
「受け取る野郎の笑顔を教室で見ていると、正直複雑だ」
「それはそうだろうな、君が作ったとは知らぬままかい?その憐れな御学友達は」
「当然だ…!」
成程、女性達は完璧な物を貢ぎたい訳だ。
それも、情愛の為…労力を割いた、と嘘を吐いてまで。
「無償で?慈善事業を重ねても人間には戻れぬよ」
「たっ…タダな訳、無いだろ」
「へぇ、僕と同じだ」
依頼というものは報酬というモノがあって成り立つ。
それが、物にしろ金にしろ…
「何を頂くの?報酬は」
「物でも金でも無い」
まるで読心されたかの様な口ぶり、思わず唇が吊り上がる。
「まさか奉仕の心、かい?ククッ」
「それも違う、ってかあんたさっきから邪魔なんだよ!」
上の照明が僕に遮られ、人修羅の手元は翳っていた。
手際良く織り成されていく、チョコレイト。
甘ったるいその空気の中、似合わぬ程淡白な面持ちで君が作り上げる。
「刀身が砂糖を噴きそうだな」
哂って携えた刀の鯉口を切れば、君がぼそりと呟く。
「あ、ライドウ、そういやあんたの晩飯、あった」
お気に入りの鍔、今日は椿だ。
それを爪の先に遊ばせれば、人修羅が突然吹き出した。
「そうだよ、あった」
「気味悪いね、君のニヤけた顔なんぞ」
さもつまらなそうにしていたのに、突如訪れたその笑い。
「俺の舌を悪魔舌って馬鹿にするなら、あんたが味見しろよ」
「は?」
「これ全部、しっかり美味しいか」
紙袋は十以上。
「スペア作るから、去年の俺ならしっかり判ったんだけど、悪魔の俺じゃあ、なあ?」
「何故君の依頼を僕が手伝わなくてはならない、功刀君」
「バラすぞ…」
「何?試合う?僕は構わぬが?フフ…君の四肢を逆にバラしてあげる…」
「バラすぞ、業斗さんに…こっちの世界で偶に修練してるって」
一瞬、強気に光る金色の眼。
まさか、それを持ち出してくるとは思わなかった。
「どうぞご勝手に?それによるデメリットなぞ無い」
「あ、そ…じゃあ今度伝えとくからな」
呆気無くすれば、君も呆気無く話を進め終える。
あの童子の猫笑いを思い、少し癪に障ったが…別にその一瞬で済む。
僕が今まで鍛錬も無しにこの地位を築き上げたなぞ、それこそおかしいだろう。
ひと時の真剣さを見られたとて、何が弱みなのだ、馬鹿馬鹿しい…
広い居間、いい加減甘すぎる空気から抜け出ようかと思い立った、が。
ちらりと傍のステン・レスの作業台…置かれる紙袋のひとつが、やけに眼に止まった。
君より高い目線から見下ろすその中…覗く白いカードを、眼を細めて脳内で読み上げる。
他の紙袋の様な、レシピの紙切れは入っていない。純粋に、チョコレイトと、ソレだけ。

 去年はありがとう
 今年は食べて下さい

違う、これだけ、違う―――
「あっ、おい!」
「確かに空腹だな」
鍔から逃した指先を、その紙袋に引っ掛けて掬う。
「まだそれは着手してないんだ、っがあぁツ!」
「煩いねぇ、この袋、レシピは入って無いよ、ほら」
するりと蹴り飛ばした人修羅に、紙袋だけを放った。
抜いたカードは、スラックスのポケットに素早く滑り込ませる。
「適当に作って、渡してあげれば良いのでは?」
見せ付けるように、舌の先に銀紙ごと乗せ、ニタリと頬張った。
解けたエプロン紐に躓きながら、君が僕に掴みかかる。
「何やっ、そのまま喰う奴があるか!おい!」
蕩ける味は、形すら認識しなかったが…確かに悪くなかった。
しっかり溶けきっておらぬ上白糖が、砂を噛む様で。
そこに人間の不得手が滲んで、凄く、人間の味がした。
「っ…!?…ってぇ…」
「…クッ、豆鉄砲でも喰らったみたいにさぁ…その間抜け面!」
舌先に解いた銀紙を弾丸の様に、君の眉間の皺に吹き付けてやった。
「ッフフ……ああ、美味しかった」
「おい、レシピの代わりに見本入れてあったんじゃないのか?おい!ライドウ!」
「そう激昂するでないよ、付き合ってやるからさぁ…」
掴み返し、後味が消えぬ内に、教えてやろう。
「んっ…!!」
ほら、どうなのだい?
味が君に判るのか?微かな風味なぞ…僕の魔に掻き消されているに違いない。
しっかりと舌を絡めて、教育しているのに判らない君。
顎を掴む僕の手に、爪を立ててくる。
「解った?どういう味か」
離してひと哂いすれば、虚ろ眼した君が、ふらつく足を懸命に立たせ、吐き出した。
「…っ…なん、だコレ……ブランデー入れ過ぎじゃあ、ない、のか」
それが揶揄なのか勘違いなのか、この際どちらでも良い。
「ほら、作ったのから持っておいで…今宵はチョコで我慢してやろう」
そのまま哂って、ソファに脚組みして寝そべった。
憤怒の君が口元を押さえ、赤い顔のまま作業に戻るのを遠目に見つつ…
スラックスのカードを、少しポケットから引き出した。
見える文字が鮮明に、脳内に飛び込んでくる。

 今では功刀君が好きなの

そんな言葉、形にした瞬間から脆くなるのに。
その縛りが、その恋慕を鎮火させるというのに。
「甘いねぇ…」
クス、と哂いがこみ上げて、ふわりと傍を舞うイヌガミの頭を撫ぜた。
ハッハッと舌を出す不可視の狗を、寝そべったまま首筋に引き寄せて共に覗かせる。
「どう思う?」
『読メナイ、ライドウ、壁張ッテルカラ』
白いそのカードを、イヌガミの視線から外した。
「フフ、お前の意見だよ」
『ライドウモ、甘イ』
「おやおや…どうしてそう感じる?悪魔のお前が」
ペロリと耳元を舐めて、イヌガミが鳴いた。
『人修羅ニ、苦イケド甘イ』
その、意外な言葉に僕は額の紋を塞いでやった。
圧に負けて、狗はひょろりと項垂れ、床に萎んだ風船みたく落ちた。
「功刀君、火」
喫煙の合図に、苛々した人修羅がキッと此方を睨んできた。
「あんたで何とかしろよ!いっつもいっつも!!」
泡だて器を放した指が、綺麗にしなる。
「火傷でもしやがれ」
放たれたのは、バニラエッセンスの薫りがする焔。外れても家具に燃え移らぬその軌道。
僕の体目掛け奔るその火を、一緒に寝そべる刀の鞘で振り払った…
“ついで”に
カードをくべた、その甘き焔に。
指先に燃え上がった恋慕は、瞬く間に炭化した。
「ビターチョコレイトを知らぬのかい?イヌガミ」
傍でくたりとしたままの悪魔に哂って云う。
「苦いのも、病み付きになるのだよ?」
人間の味が判らぬ君を哀れんで、蔑んで、哂ってやっていたいのに。
それすらどうでも良い事にしてしまいそうな、甘い毒物。
恋情の罠。
「可哀想にねえ…君は作るばかりで、貰えはしないのか」
哂い棄て、改めて着火した煙草を指先に。
「…煩い、別にそういうの、求めちゃいないんだよ」
洞察力の無さを呪い給え、人修羅…功刀矢代。たった今も、消えたよ。
甘い君に這い寄る蟲は、駆除せざるを得ないのだから。
「やはり、甘いねぇ…」
舌先に残るは、どの甘さか?
カカオ…とは、違う、僕しか知り得ぬこの甘露。魔の滴り。
他に渡すのは、酷く…腹立たしいのだ。





「ねえ、功刀君てさ…どうしていっつも席替え、一番後ろなのかしら」
「はぁ?どーって…そりゃ、運じゃなね?なあ矢代」
新田勇の隣で、当人が眉を顰める。
ストローの中を昇っていた烏龍茶が、するすると下降していく。
マックでは、烏龍茶しか頼まないこの男。
「橘さん、俺がまるで何か八百長してるみたいな云い方だ」
「あら、でもおかしくない?毎回よ毎回」
「俺、席の運だけは良いから」
と、視線を一瞬泳がせた功刀が、立ち上がる。
「…悪い、ちょっと帰る、片付けやっといて」
「おい!何だよいきなりおま」
突然、静かに無難な飲料を飲んでいた筈の彼が立ち去る。
新田は頬杖で、溜息する。
「やっぱアレか〜…昨日貰えなかったから辛過ぎて、いてもたってもいらんなくなったんだな、うん」
「何よ、まさかチョコの話?」
ダブルチーズの高カロリーなバーガーを頬張った新田は、頬張ったまま云う。
ほんと、行儀悪い…だからって、功刀の様に細々とした食でも気になってしまうけど。
「俺は貰いましたぁ〜ッ!なんと手作り!」
「あっそ…幸せねぇ」
「すげー美味かった、ホント、ウチのクラスの女子って料理上手いよな〜、あでも俺の本命はぁ〜」
「その料理上手って、私含んで無いでしょうキミ」
あ、ばれた?と、おどけた新田のシェイキを持つ手を抓ってやった。
「あら、こんな処でデート?」
悲鳴が歓喜の悲鳴に変わった新田、そう…ちょうど背後に現れた…私達の先生。
「デート?まっさか、三人でしたから」
「そう、矢代君?」
「はい、もう出てっちゃいましたけど、彼」
傍に座られて有頂天の新田、きっと良いニオイだぁ〜とか、そういう事しか今脳内に無いのだろう。
…馬鹿ね。
「祐子先生もおかしいと思わない?功刀君って、毎回席替えすると一番後ろなの」
「本当ねぇ、残念だわ」
暗い色の唇が微笑んだ、でも眼が寂しそう。
「二人は一番後ろの席に当たっても、替わってあげちゃ駄目よ?」
その言葉に私も新田勇も、ニコニコして頷いた。
…何処かに違和感を感じながら。
「それじゃあ、遅くなり過ぎないうちに帰りなさいね、橘さん、新田君」
「先生ぇ〜ちょ、もっと居て!まだまだカカオマス受付中ですよ受付チュウ!」
うざい新田を無視して、チープな味のアイスティーを飲み干した。
水滴の付いた指を、ハンカチで拭ってから、先生の立ち去った席をふっと見る。
「…ねえ、新田君」
「あ、何?橘女王の奢り?ちぃーす!」
「ほんっとウザいわね…そうじゃなくって、ねえ」
数を確認する、そして記憶も確認する。
「キミ、功刀君のゴミ…片した?」
一瞬きょとんとして、新田は一応その辺を視線で彷徨っている。
ねえ、でもたったひとつ見つからない。私も片付けた覚えは無い。
「せ、先生が片付けたんじゃないのかな?」
どうして新田も私も、そわそわしているのかしら。
「へ、へえ…随分局所的、ね」
だって、功刀が唇をつけてたストローしか…
消えてなかったのだから。



-了-

先生はサイコティック。
ネコマタは長編に出ます…恐らく。

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