血で咲く徒花
〜長編との相違点解説〜
(ネタバレにならない範囲で説明させて頂きます)


長編の第一章を終えた後の話です

(2010/04/20現在、まだ長編第一章は途中なので明言出来ませんが…)
人修羅はライドウの使役下にあり、互いに利用・反目し合ってます。
それぞれの目的・野望の為、二人して閣下に従属。
なれあいつつも一触即発。
しかし依存・執着も酷い…
契約上だけでなく、ライドウの悪癖による肉体的な繋がりも少し有り。
勿論互いに男色の気は無し(戯れ事です、人修羅は拒絶)
本来の二章に行かず、雷堂の運命と交差したのが徒花の開始地点です。

どうでも良い情報ですが、徒花はかなり[陰陽座]の曲を連想します。
元々親彦がメタルっぽいのが好きというのもありますが…歌詞も美しいので。
各話関係無く聴くのは『甲賀忍法帖』です(バジリスクのOPテーマのあれです)
格好良い…「水の様に優しく 花の様に劇しく 震える刃で貫いて」
他にアリプロとブラックマトリクスのサントラを聴いたりしながら…
基本的に重苦しい、ダーティ&ウェットな曲ばかりで…(長編もだろ?)
最近は各キャラに頂いているイメージBGMを聴いたりしています。



長編との相違点
(あくまでも予定)

《帝都中心》
⇒長編第二章は現代の東京も飛び廻ります。

《アカラナ回廊での行き来》
⇒長編ではあんなに容易では無いと思います。

《生い立ち》
⇒ライドウ・雷堂は徒花の構成上、生い立ちは結構違います。寧ろ関係が。

《カオス・ロウ》
⇒徒花では色濃い。長編第二章はこれの見方を変えた抗争を書く予定。

《ライドウ》
⇒野望より人修羅を優先している?ちょっと人間くさい。

《雷堂》
⇒長編第二章でも多分出ますが、徒花の雷堂とは別人です(キャラ性はかなり近い)

《閣下》
⇒長編よりライドウ本人に接点多い?(接点というのか微妙)

《ヤタガラス》
⇒十四代目達への仕打ちは同じですが、長編より多く露出します。

《夜・明》
⇒上にもあるように、この二人の関係が一番違います!!徒花特有毛色の違い。

《陰陽》
⇒身体に宿る陰陽の偏りは…多分長編ではそんな頓着で無い筈、です。





個人的な執筆後感想
(各話内容ネタバレ)
>タイトルの意味・造語なら解説


【逢魔時】
>「大きな災いの起こりやすいときの意・夕方の薄暗い頃」

出会い、です。この時ライドウは既に雷堂と邂逅済み。
(アバドンの邂逅も済んでます)
まだこの話を書いた時、シリーズ化を予定していなかったので、単品な雰囲気。
しかしライドウの独占欲は既に滲み出ています。
雷堂のキャラがあまり掴めていないこの話。
:
:
:
【羅刹日】
>「陰陽家で大凶日とする日」

「もう少し早く加勢に来い、愚図」好きなライドウの台詞。
ライドウVS雷堂な話ですが、この辺では思想の違いしかあまりでておりません。
ヤタガラスに望まず与するライドウ。
ヤタガラスに与する生き方に、自身を納得させる雷堂。
:
:
:
【その名を紡げ】
>主人は誰?をメインテーマにしたので。

怖ろしい、この話から全ては始まったのでした(笑)
これの反響がかなり大きく…まあ、今読んでもなかなかアレです。
この話、ずぶずぶと発想が深みに嵌っていきまして…止まらず…(病的)
これで終わり、のつもりでしたが…後を知りたい、と御感想を頂き…
雷堂は、まだ純粋に友情を望んでいました。
吊り橋現象&性的ショックで、その感情は歪な恋心に昇華したのです。
:
:
:
【烏の印-シカケ-】
>「熊野牛王(くまのごおう)宝印の事」狂言『梟』から拝借ですね。
>「シカケ…すっと立ち、扇を持った右手をやや高く正面にだす事」

人修羅と雷堂が逢うなら、恐らく他からの命令で、だろう。
という事で、任務により…という流れ。
しかし、そこに私情が入り込んでくる、狂い始めた雷堂。
何気に車に乗る描写が多い彼。
:
:
:
【烏の印-留メ拍子-】
>「留メ拍子…一曲の終わりにはっきりと、2回踏む事」

とにかくライドウを強く流麗に。
しかし雷堂との一騎打ちでは、殴り合いに発展する泥臭さ。
剥き出しの闘争本能を互いに出し合えば、解り易いかと思いまして。
そして、手首が…ですが。
これは皆様「げええええw」となっておりました。
この話で、徒花のイメージは固定されたと思います。
肉は、身体から独立してパーツになると、途端にフェティッシュになる。
:
:
:
【泥中の蓮】
>「真理・悟りなどが煩悩(ぼんのう)に汚染されないことのたとえ」
>「転じて、汚れた環境にあっても清らかなもの」

その後の雷堂は如何お過ごしでしょうか、な話。
―ヤタガラス…
―我を生かす床…我を縛る根…
―そこから抜ければ、枯れ果てる、我…
当人のこの見解は、紛う事無き真実と思います。
そしてこの話のライドウの台詞「その羽を散らして、ね」
タイミング、嫌味、完璧だと思いました(自画自賛)
今の私はこういう物を、書けなくなった気がします。
この話、色々伏線が…
式を飛ばさせたのは、陰陽座の『式を駆る者』という曲でピンと来たからです。
「今 式を打つ 撫でた護符を塗り潰し」
「其の時を待つ 罪穢れの澱みを着せて」
まさに、という感じです。
:
:
:
【 】-クウハク-
>分岐の先をこの【 】にはめ込むイメージでつけました。

なんと、突発的に企画した分岐SS。
鳥を追う描写、結構気に入っております。
悪魔を街中で使役するライドウは、異常者にしか見えぬのです。
土蜘蛛使役のライドウは陰陽座『悪路王』がイメージBGMです。
まあ、曲名から既にライドウ色が滲み出ていますが…
「ふん縛るは土蜘蛛の…」
「逆行!逆行!逆行!我精の!魂!堕すらば!潮時よ!」
「絵にも描けぬ空論を したり顔で仄めかす」
ううん、美味。格好良い。

⇒【愛を乞う屠人】
>「屠人…屠殺を業とする人、屠者」雷堂は人を多く屠ってきましたので。

「全く…後背位にすべきだった…」ライドウの素晴らしい台詞。
これが正規ルートというのも…噴飯物ですが。
いよいよ狂った雷堂。
肉体的に雷ライ。精神的にライ雷。

⇒【殉教者のサバト】
>「殉教…信仰する宗教のために自分の命を捨てること」
>「サバト…土曜日の夜に開かれるとされていた魔女集会、ヨーロッパでの俗信」

―それは、僕が云う筈だった…のに
…はい、ライドウ受けという無茶な内容です。
雷堂と人修羅が完全にヤっちゃってます。
しかし、これは完結させて正解です。
私が書けない…ライドウ受けは、難しいです。
サバト…これはPSゲーム「ブラックマトリクス」のサントラがBGMでした。
色んな悲鳴が入りまくっている凶悪なBGMがあるので…(笑)
:
:
:
【三世因果】
>「あらゆる存在が、過去・現在・未来の三世にわたって因果の法則に支配されている」

「来い、遊んでやるよ」影法師への挑発、戦いが嫌いでないライドウらしい台詞。
教科書を捨てるシーンをどうしても書きたかったのです。
そういう、何故そんな?という前後の状況説明が必要なシーンが好きなので。
この辺からライドウが崩れ始めます。ライドウ無双終了。
:
:
:
【泥眼に遮眼帯・前】
>「泥眼…能面の一。目に金泥を塗った女面。嫉妬に狂う女性に用いられる」雷堂…の金眼

初っ端眼を抉る雷堂(笑)もう皆様慣れてきた頃かと思います。
そして、これを書いた時…何かが降臨していたのでしょうか↓
---
「あいつみたいに、煽ったり出来ませんけど」
---
「お、男だったら、分かりません?一応半分悪魔でも同じと思うんですけど…」
---
「サマナーでも同じか?」
「えっ…」
「デビルサマナーでも、解る感覚か?それは」
「同じ生態なら、あ、あと不感症とかじゃなければ…」
「……ふっ、まともに答える奴があるか」
---
「強い君なのに、我の指で何故啼く?」
「俺が力を揮うのは…っ、俺を害する相手にだけ、です」
「では、君の主人は?」
「…っあ、痛!いた、い…!」
「君の主人は君に害以外に、何をくれるのだ?愛…か?」
---
「痛みを、束縛を与えられてもか?」
「俺も、あいつも、答えを必要としないから…っ!」
「そう…か」
「あっ、ひ…あ、ああ…指、外して…!汚れる!汚れるっ」
---
…超、耽溺的。
このサイトで一番艶やかなやり取りな気すらします。
ライドウ相手と違って、人修羅が饒舌。素直。可愛い気がします(えっ)
:
:
:
【泥眼に遮眼帯・後】
>「遮眼帯…馬が前方しか見えないように視野をさえぎる装具」前にしか進めないから。

雷堂がいよいよ人修羅の眼を手に入れます。
この辺から雷堂のキャラが固定。
能樂堂の養子。跡取りの候補だったがヤタガラスに拾われていった…という。
舞うのが巧いのはライドウも同じです。
雷堂の設定は結構気に入っております。
これは長編にも投影させる予定有り…
その際には、読んでニヤリとして頂ければ、と思います。
:
:
:
【盲目の秋】
>「中原中也『山羊の歌』より」季節と内容から、是を拝借。

ライドウがかなり感情的な話。
これは少し迷いました。
何処までライドウに叫ばせるべきか…
あまり発露させては、ラストが薄くなるので。
:
:
:
【太陽と月に背いて-明星-】
>好きな映画のタイトルから。詩人ランボオとベルレェヌの破滅愛を描いた映画。
>上記映画、ランボォの破天荒・破滅型っぷりはライドウにかなり当て嵌まります。

「…墜ちてるぞ、お前…どっかの誰かだな、まるで」
ダンテの云う誰か=兄
…まあ、ダンテは相変わらず未練たらたらです。
でもライドウに届け物する程度には割り切った様子。
:
:
:
【太陽と月に背いて-夜闇-】
>太陽…雷堂。月…ライドウ。のイメージです。

凪と組み合わせた人修羅が、意外と輝く事を再認識。
普通の少年に戻るようで、心は何処か病んでいる…
凪が可哀想な話ですが、強い娘だと思います。
きっと立ち上がるでしょう。
“流行最先端の赤色ドット”
この比喩が個人的には満足。
:
:
:
【メランコリの蕾】
>「メランコリ…躁鬱(そううつ)病の鬱の状態。憂鬱(ゆううつ)症」

タイトルイメージは「ブラックマトリクス」の戦闘BGM『閉鎖病棟メランコリ』から。
戦闘曲?…何と云うか、奴隷市場や非公式の見世物を覗いている雰囲気。
ちなみに冒頭の雷堂の夢は、超極彩色です(笑)
徒花シリーズは季節を結構意識しているので、完全に冬です。
冬の装いの雷堂。新たに出たカマエルが結構重要。
喫煙するライドウの姿を描くのが大好きな私です。
何気に「夜」と再び口にする人修羅…
:
:
:
【曼珠沙華】
>「彼岸花の別名、捨て子花の異名あり」後者の異名を連想。

乱筆にて申訳御座なく候
…実はあの置手紙に一番苦労しました。
候文って、純粋な物はあまり無いらしいですね。
結構人によって違うのが…苦労しました。
この話、ライドウとの契約が切れてしまいます。
皆様、この辺りから徐々にライドウに同情し始める傾向が…
ヤタガラスに弄ばれるライドウは陰陽座『奇子』がベストマッチ。
初っ端の歌詞が
「鮮やかな暗闇に独り 嗤い尽る白い徒花」
ですから…(もう徒花とか云ってしまっている)
「咲いても花に成れぬ 悲劇の野草」
「愛を知ることもない間に 姶を白肌に湛えて」
愛=姶=哀
野草=夜想
…言葉の重なりが凄い歌詞です。
:
:
:
【恐悦至極に存じます】
>「かしこまり喜ぶこと。感謝を述べるときに多く用いる」思い込み雷堂が述べる。

尺、繋ぎの話ではありますが、悪魔をぞろぞろ引き連れるライドウを描くべく。
人修羅のなんとも云えない嫉妬が、個人的には見て頂きたいところです。
久々の殺戮シーンに人修羅も親彦も高揚。
いけない事は、すればする程文章的には強くなる。
:
:
:
【影の煩ひ】
>「熱病の一種。病人の姿が二人に見え、どちらが本人かわからなくなるもの」
>「離魂病。影の病(やまい)」影法師を出すのでしっくり来る。

ライドウがかなり痛々しい、おまけに癇癪起こしております。
影法師の設定は捏造入りますが、あんな事を望んでいそうな気はしませぬか?
此処でされた取引が後々どう影響するか…EDのどれかで発露しますね、恐らく。
悲恋好きな方には美味しいフラグかと…(むぐっ)
:
:
:
【淡雪】
>「寒天にメレンゲを合わせた和菓子」読めば解りますが、正体は卑猥。

人修羅の項の突起をフ○ラする雷堂を書きたかった(最悪)
おまけに車内プレイ。そして白濁手袋!
この話の所為で銘菓『あわ雪』が微妙なイメージに。
:
:
:
【叉手】
>「両手を組み合わせること。さす。しゃす」
>「手をこまぬくこと。物事に手を出さないこと」この意も有り。

無神論者で遺伝子学的見解に偏るライドウは、サマナーとして異端。
この回で、ライドウもフェティッシュな人体改造。
ゲートをくぐる為なのか、人修羅の肉を取り入れたいだけなのか。
ルシファーにボコされるシーンがお気に入りです。
強い人が、紙切れ同然に吹っ飛ばされる快感。
手首ネタは斬っても切れぬ仲w
:
:
:
【蝕甚】
>「日食または月食で、太陽または月が最も欠けた状態。また、その時刻」

あとがきにも有りますが「食人」とかけています、タイトル。
そのつもりだったので、まず食人をイメージする単語を探し…
で、太陽と月が関係する語呂がぴったりな「蝕甚」というのを発見。
そこから書いたので、日蝕な展開に。
人修羅の依存は、求められる事で形を成す。潔癖同士で行われる血の惨劇。
この辺から心の拠り所を失い始める雷堂。
:
:
:
【狂信者】
>「正常な判断力を失うほどの、強烈な信仰」
>「特定の考え方に強く支配されている状態」

シンプルながらしっくりきたタイトルです。
--「どうしても何も」
から最後にかけてが、気に入っております。
人修羅の居ない所では、微妙に本心を表すライドウ。
酷く暴力的で、支配が大前提の彼の中に密やかにこぞむ
人修羅への絶対的な陶酔…
:
:
:
【カインとアベル】
>「旧約聖書中の人物。兄カインは、弟アベルの捧げた供物が自分の供物よりも神に喜ばれたことを怒り、アベルを殺す。」

この兄弟という関係は、中盤前には考えてあったのですが
どうやってそれを知る事になるかが問題でした。
何気に彼等の父にあたる人物が、マガタマを創ったという…
この因果が彼等と人修羅を結ぶのか…
身内殺しは大昔からの事象。
--「ふざけるなよ…脆弱な奴等…」
ライドウの吐き出す言葉が寂しげ。
:
:
:
【栗の花の薫り】
>いわずと知れた精液の匂いの喩え。塩素系漂白剤のような臭いでもあるそう。

タイトルの通り、酷く淫靡な回。ライドウの自慰ショウ。
扉の隙間から覗く手は人修羅なのに、開ければライドウというホラー。
相手を貶めるのに、自らの身体は道具のひとつ。
まあ…なにより、この話で一番の変態は雷堂な気が…
だって、触らずに、ですよ?如何でしょう?(何がだ)
:
:
:
【致死量】
>「摂取・被曝すると死に至る量」

雷堂世界の鳴海が凄まじい。笑顔で雷堂を試す日々。
完全に上の側の人間なので…ルシファー側の人修羅とは対極に有る。
ライドウも当然ルシファー側についているが…彼こそ微妙な気が。
いよいよ再会した人修羅とライドウですが…
私の意向で未だライドウの左手は見せず。
吐血ライドウ、雪に墜つ。
【陀羅尼】
>「本来、陀羅尼(だらに)は暗記して繰り返しとなえる事で雑念を払い、無念無想の境地に至る事を目的とした。」

人修羅の頼みなら何でも承諾するのか。
というのがこの回において書きたかった内容。
--「あの男を生かして、俺を助けて下さい…」
愛し君の頼みなら、憎き男を生かすのか。
危うい境地に行きかけて、ギリギリで戻る事を繰り返す雷堂。
己を殺いで造り上げる生は虚像。
陀羅尼の如く、人修羅の名を脳内で繰る…
:
:
:
【聖痕】
>「イエス・キリストが磔刑となった際についたとされる傷、また何らかの科学的に説明できない力によって信者らの身体に現れるとされる類似の傷をいう」

“君の着衣を、剥いでいく、蕾のままなのに強制的に萼を脱がす様な”
“水気を湛えた花を搾れば、滴る蜜が在る事を本能で知っている”
なにやら手術台で犯される事が多い人修羅(繋がってはいませんが)
背中の対比をしようと思った。
ライドウの背中は憎しみを忘れない為。
雷堂の背中は甘美な痛みを忘れない為。
それを誇りたがる雷堂の薄暗い欲。
:
:
:
【焔の楼閣】
>「楼閣とは、重層の建築物をいう。たかどの、高楼のこと。塔と類義であるが、塔は本来仏塔を指す」

師も愛も寄る辺も尊厳も無い。
ライドウにあるのは、そんな不確かなものより鮮明な“破壊”
記憶の中の朱い華は焔と血の色。
“既に心が壊れている人間”という彼の設定で語れる精神構造。
その水底にある静かな杜を彼は知らない。
精神の階層は下る程に当人の意識せぬ景色が広がる。
これで同情を買わせたいのでは無く、ただ純粋に夜の闇を見せたかった。
:
:
:
【十字轡】
>「もっとも普通の轡。鏡を十字に透かしてあるもの。一説に出雲(いずも)轡のこととも」
>(十字(十字架)の轡、という意味合いでのタイトルの為、上にある紋の説明とは異なります。単語通り十字型の轡《ギャグ》のイメージ)

出だしの“amen”ですが、日本で最初に使用されたらしい「我等を凶悪より逃し給え」を引用させて頂きました。
“殺しを赦す神なぞ居るか?贖罪とはなんたるか。”
“その穢れに言い訳をしたいだけでは無いのか?”
神を信じない雷堂ですが、彼を取り巻くものは天上の使徒。
--「ぁぁああああああ〜ッ!!!!矢代ぉおおおおお!!!!矢代ぉおお」
号泣す。徒花の中で、雷堂が一番感情を曝け出し、正直である。
眼の前の人間に糾弾されたくない一心で、それを理由に殺してきた日々を今、呪う。
この時に掛けられたロザリオが最期まで彼を縛る…
:
:
:
【芥子の花畑】
>「アヘン・ヘロイン・モルヒネが採れる阿片芥子のイメージで」脳内花畑な雷堂。

--「よ〜やく…完成……し、た」
鳴海のこの台詞に数種類の含みを連想させるが、正解は用意してないです。
--「矢代君、生殺与奪の権利を、貰ってくれ」
“デビルサマナーと、悪魔の立場を逆転しよう?”
“君の、元の主人と真逆の契約をしよう?”
“なあ、我を生かすも殺すも君次第なのだ。”
“君の痛覚を、消してあげよう、我の命を賭して”
この辺りに、夜との相違点が浮き彫りになっている…
自分を好きにさせる事に至上の喜びを見出す姿勢。
ずっと受け身で生きてきた明らしい思考回路。
その姿勢が人修羅を縛る事も理解している。
この回で完全に夜と明を別ちたかった。
:
:
:
【黒い絵画】
>「我を過ぐれば憂ひの都あり…我を過ぐれば永遠の苦患あり…」地獄の門から…

--「ルシファー閣下」「手折るなら、此方にして頂きたい」
“燻らせた煙草を、折れていない指で摘まみ、唇から離す。”
“左手にこの苦い薫りは残したくない。”
己が斬り落としたのに、その己が大事にする人修羅の手。
ここで登場したセエレは、おっとりしているのに核心を突く。
ライドウにとって、魔界の方が居心地良さそうなのも強調したかった。
「地獄にいくしかない」と、諦観の哂いを浮かべるのは毎度だが…
それの道連れを欲するという、彼らしくない弱音。
人修羅を欲する本当の理由を挿げ替えている。
:
:
:
【白い絵画】

“白は、強い色だ。
包まれると、自分が見えなくなりそうで、闇にも似ている。”
黒と白、その対比をする為に、あえて同質な感じを醸し出す事を意識しました。
--「…“好き”というのは、説明出来なければ駄目…なのだろうか?」
仔犬みたいな眼できっと云っている、明。
こう!と云われたらその通りに感じてきたので
好きな事にも理由を探すが、自分で答えは分からない…
理由が無ければ不安。説明が出来なければ虚の様で恐ろしい。
「辛きゃ泣けば良いんだし、嬉しかったら笑って良いんだ!罪なんかじゃ無いっ」
人修羅のこの叫びは、通り越してライドウにも向かっている…
:
:
:
【徒花】
>「咲いても実を結ばずに散る花。転じて、実(じつ)を伴わない物事」
>「季節はずれに咲く花」
>「はかなく散る桜花。あだざくら」

【偽りの太陽】
(実は当初、雷堂は業斗に転生する予定だった⇒穢れを伴いメシアとなるを赦さぬ天上が、もう幾度か転生をさせているという設定。転生した先で己が業を本能に刷り込まれた業斗として、穢れ無き十四代目雷堂を育成しようとする。人修羅のような存在に情をほだされる限り続くループ)しかし、夜と双子にしようと確定させた時、シンプルに『ああ、それなら同じ素体に潜り込ませよう」と思ったので。理解し得なかった弟の肉体・立場に存在する事で、真の悲劇が生まれるだろうと思い…
非常に雷堂こと日向明らしい顛末だと思います。未来を示唆するかの様に散る桜。

【新月の涙】
影法師と一度戦っている(『三世因果』にて)が…ライドウの体調が優れぬとはいえ、そう苦戦していなかった当時。そうやって退ける場面を用意しておく事で、最期に死因となった際のショックが大きいと思い…(普段なら勝てる相手が原因で死ぬ、という事実が読者を落胆・脱力させる)現在の夜ならば、決して自殺などしそうにない。しかし、此処で自らに刃を通させる事で、彼にとってのアイデンティティ崩落を見せつけ、そうまでした理由に答えを曝け出させる。好きだとかを声にしないのは絶対です。湿血帯で彼等の話が全て終わるまで云わない気がします。それっぽい事を云ったとしても。
人修羅を護る為にしたのは、自らの破壊だった――というのが、最期まで夜らしいです。誇るかの様に、暗闇に知れず満開の桜。

【廻る陽と月】
懐中時計と名前の伏線回収。この名前の事実は少々『GOTH』(著:乙一)を読んだ方ならピクリとくる設定と思われます。ので避けようか?と思いつつも行き着いた構想がこれだったので、そのまま突き通してしまいました。夜と夕…って、まあかなり近いのですが、字面から既に(笑)そもそも森野夜さんの御名前は大好きでしたから、私…
夜には「愛情を与えられなかった自分には陰の生き方が相応しい」「愛を知らぬのだから認識出来ない」という“思い込み”をさせたかったので、時計と同じ名前を間違えて与えさせました。
『砕けた時計、欠損を補い合い歯車を回す…秒針を進める…時を刻む…』復縁の展望が見える内容ですが、ライドウ&雷堂の生死は定かでは無い上、共に捜索する面子はダンテと凪。 その後は多分書きませんが、一応後ろ暗い部分をイメージして書いたのです、この話…
ダンテは結局自分の付き合ってきた人修羅(湿血帯的に呼べば前修羅)への未練があって、それをやはり引き摺っているから今回の件も軽々しく請け負ってしまった。凪は人修羅の事が好きとはやはり云いだせない、このままライドウが見つからなければ、自分がそのポジションに立てるかもしれないという無意識下での欲望が有る。だが彼女はいくら葛葉とはいえ人修羅とダンテから見れば短命。それを傍でダンテは哀れみつつ、半永久に生きる己も虚しいと感じている。ダンテと凪は虚しい共同体。結局人修羅の心を縛るのはライドウだと解っている。
:
:
:
連載を終えて

思えば、今年の一月頃…SS『その名を紡げ』を公開したのが始まりでした。あの話の反響が今までの中でも、やはり一番大きかったのです。修羅場…一方的な暴力…抜歯…後孔への刀挿し…手首落とし。あの短さに怒涛の様にエグイ場面を詰め込んであり、今読み返すと荒いながらも当時の親彦の貪欲さを思い知ります…
そして、当時の勢いに鞴の様に「この後の雷堂と人修羅の後ろめたい関係が見てみたい」と声が送られ、火力を増して『烏の印』に流れました。この話で、雷堂が人修羅の手首を落とした瞬間に「ああ、これはもう別枠展開しよう」と決断しました…
《血で咲く徒花》と連載名を決めた瞬間、皆様「ああ…死にENDかな」と、既に察知されたと思います(笑)連載を決めた瞬間、ライドウの行き着く先は決定しておりましたが、雷堂は途中まで彷徨っており…
そもそも、雷堂が人修羅に惹かれている事実が当人にしか解らない感覚的なものなので、これの表現が非常に難しかった…!「…“好き”というのは、説明出来なければ駄目…なのだろうか?」は、私が雷堂にさせた言い訳にも等しいです。その感情やきっかけは、彼にしか知り得ないのです…
でも、眼の前で自分の為に歯を折られたら、結構衝撃だと思います…あの辺から心臓を締め付けられ始めたのかとは思います。
長編では出来ない位に、滅茶苦茶な展開を執筆出来て、とても愉しく、そして悩ませてくれた連載でした… 雷堂の影が薄くなるか?と思い、ライドウとは違うベクトルから依存を書きましたが…そうしたらば、何故か変態に(断言)ライドウと違うのは、はっきりと愛を叫んでいるところです。しかし、口にして軽くならない様に、心理描写は更に重く耽溺的にしました。 ライドウの方は“長編での期待を殺がずに”何処まで感情吐露させる事が可能か、という難題があり…帳シリーズと違って、婚姻に言い訳も出来ないですから…

…紺野夜は、帳や長編でも皆様に愛されている様で…(当人は愛なんざ〜という風なので、なんとも妙ですが)あんな傍若無人、極悪非道なのに、どこか切ない。そういう人格が表現出来ていれば、私としても嬉しい限りです。
…日向明は、夜がアク強いので大丈夫か?と危惧しておりましたが、話が進むにつれ彼を好いてくれる方々がちらほらと…これは本当に嬉しかったです。ボルテクスからの因縁が有る夜と違いますし…人修羅と仲良くする事にしっくり来ないかと思いましたが、それが少しでも払拭出来ていれば…と思います。
…功刀矢代は相も変わらず(笑)本当に弱いのだか強いのだか。妙な処・タイミングで激昂したり、翻弄するかの様な台詞を吐く…もしかしたら、夜と明よりクセが強いキャラだったりしますね。

独占欲、依存、愛憎、暴力、偏愛…
色々詰め込んで参りましたが、人修羅・ライドウ・雷堂の三者全員に云える事は『理不尽な運命』です。誰が一番不幸なのか?というのは、比較が出来ない。 そのまま流されて生きればライドウは生きていたかもしれないですし、雷堂は何も知らずにメシアとして上に拾われていたかもしれない。人修羅はライドウとルシファーとの間で翻弄されるまま…最期まで苦悩していたと思います。人修羅と雷堂が接して、ライドウが感情を爆発させて、ぶつかりあって砕けた…が、その断面から真の色が垣間見えた。そういう話でした。

最後に…夜の最期を泣いて下さった方へ。泣かせたい、と思い執筆した訳では無いですが、素直な気持ちを云えば…彼を想い、そうして流して頂けたのか…と、感慨深いものが御座います。この連載の機会を与えて下さった全ての閲覧者様に感謝しております。私の中で確かに、約9ヵ月間…素晴らしい期間でありました。

 徒花として儚く散る、しかし実は心の杜で結ばれる…


最終更新日2010/9/21




back