秘め始め

 
血管が浮き出る程に力を込めて、拳を握る。
それを書生に向かって叩き込めば、その拳はいとも容易く
ぱしりとその書生の掌に納まった。
「それで本気だった?」
いつもの腹立たしい、凛としたテノールが聞こえる。
拳を包む掌と指先は、相変わらず冷たい。
「今の君は、人修羅では無いよ」
指先の整った爪を、甲にぎりりと喰い込ませてきた。
「痛っ」
普段より敏感に来る痛みに、思わず声が出る。
「同じ条件なら、どう考えても僕が強いね」
「…」
「君はどうせ、学校で体育の授業しか受けてないのだろう?」
「その通りだけど」
「あまり筋肉無い様だしね」
掌が腕に滑り落ちて来る。
「ほらこの辺の肉が柔い」
そう云って指先で摘んで、小馬鹿にした様に哂う。
「触るなっ」
振り払い、その書生から一歩退く。
辺りの雪が、土と混ざって汚れていた。
先刻の戦闘で、散々な景観にしてしまった様だ。
(まさか、あんな悪魔が居るなんて…)
初詣と称した喧嘩の途中に、乱入者が来たのだ。
強い力の奔流に呼応するかの様に、姿を現した悪魔。
ボルテクスでも、帝都でも見た事が無かった。
それを認識した瞬間、ライドウは標的をいち早くそいつに切替えた。
俺を斬り裂いていた刀は、その悪魔の肉を裂き始めた。
召喚した仲魔に命令し、俺の肉体を治癒させたライドウを見て
ありがとうも云わず、ひと睨みの一瞥をくれてやった。
あの男は哂って返し、そのまま悪魔に向かって駆け出していった…

「いつ消えるんだろう、この魔封…」
寒さに震え、コウリュウの上で呟く。
「さあ?一度ドクターヴィクトルに診てもらうべきと思う」
前に乗るライドウの背を、恨めしげに見つめる。
あの黒い外套は、それなりに暖かそうである。
(寒い…)
正体不明の魔封じの為に、俺は今人間状態だった。
先刻の戦闘、とどめの前に放たれた術にかかってしまった。
身体の力が抜け落ち、強制的に人間としての力を上限とされた。
あの時、ライドウが居なければ正直危なかった。
かなり、腹立たしいが。
「いっそこのまま人間なら、俺も目的達成なんだけど…!」
俺がカチカチと歯を鳴らしながら、云えば
首で振り返るライドウが冷たく言い放つ。
「安心おし、君の内に根付くマガタマがそうはさせないだろうから」
「あ…そ」
「ルシファーが黙っちゃいないさ」
珍しく具体名を挙げたので、俺も溜息をついてしまった。
その溜息のあまりの白さに、外気の感覚を思い出し震えた。
「寒い?」
「当たり前だろ!俺…半裸だぞ」
あの脱衣麻雀とかいう頭悪い罰則さえ無ければ、上は着ていただろうに
誰の所為だ、と前を睨む。
「先程から物欲しげだけど…この外套、使うかい?」
しかし、その前から意外な言葉が飛んでくる。
こいつの親切に甘えるなんて、自分が嫌になりそうだが
この肉体の前にはそうも云ってられず。
「…貸してくれ」
眼を合わさずに云う。
程なくして、方に黒い布地がかけられた、が。
「おい、なんであんたがセットで付いてくるんだよ」
「僕だって学生服一枚は結構堪えるのだが」
「下にシャツ着てるから良いだろ?出てけよ!」
一緒に包まるライドウを押し退ける。
「高い温度を保つにあたって、密着するのは重要な術と思うのだけど?」
「南極でしてろ!あんたに触れてるのが嫌なんだよ!!」
ぐいぐい押したのだが、ライドウは退かない。
かじかむ手が、感覚を失くしていく。
跨る脚が、雪で湿りコウリュウの鱗から滑る。
「ぅわっ!?」
突如反転した天地に悲鳴を上げる。
このまま空に投げ出されると思ったのだが、脚に感触。
視線を其方にずらせば、ライドウが俺の脚を掴んでいた。
このまま放されたら、確実に地上で接地した瞬間に弾け散る。
人間の肉体では、まず生きている事は無いだろう。
「お…いっ」
なかなか引き上げないライドウに、焦りを感じる。
「君、僕に触れてるのが嫌なのだっけ…?」
愉しげに哂う口元に、寒いのに冷や汗が出る。
「や、やめ…っ!!」
俺の悲壮な声を聞いたのか、金色の竜が口を開いた。
『おい14代目、、あまり虐めるでない』
その重い声音にライドウは軽く前方を見て、何か返答していた。
そして、俺の脚を両手で掴む。
「仕方ないね」
ずるずると救助された俺は、情けないのと怒りで温まり
外套いらずになっていた。


「…寒い」
布団に包まり、震えていた。
あの後ヴィクトルに診てもらったが、時間経過で恐らく治る…との事。
それしか解決策が無く、しょうがないので放置である。
久々の長時間に亘る力の抑制は、かなり俺を苛んだ。
思うように動かず、先程なんかいつもの調子で階段を下りてしまい
見事に足を挫いた。
鳴海にそれを偶然目撃されてしまったのも、ショックだった。
「あ〜矢代君って、学校で高い所からジャンプで飛び降りるの競うタイプ?」
そんな目で見られたらしい。
「…違う、筈です」
階下で仰向けに倒れたまま、そう返答しておいた。


「足も挫いて風邪までこじらせて、中々上々な正月だね」
外から帰ったライドウが、俺を見るなり云う。
「いちいち煩いなあんた、寝たいから早く出てってくれ」
「此処は僕の部屋だし、それは僕の寝具なんだが?」
「鳴海探偵社の備品だろ」
「14代目葛葉ライドウが給与で購入したのだが?」
「…俺あんたの仲魔だろ?その位赦せ…」
身体の疲労と気だるさが、俺を襲っていた。
この男との応酬も、本当にだるい。
腹は立つが、云い返す気力があまり無い。
「今は仲“魔”じゃ無いだろう?」
その声と同時に、温もりが消える。
俺を包んでいた布団は消え、代わりに黒づくめの男が傍に立っていた。
「や、返せよ!」
「仲魔になら貸してやらんでも無いのだけどね?」
底意地の悪い笑みでそう云って、布団をしまっている。
嫌がらせだ。
「力が戻る前に肺炎で死んだら、あんたどうすんだよ…俺を利用するんだろ?」
「死にそうになったら考えるよ」
椅子に脚を組んで座り、装備を外しているライドウ。
管を一本一本、抜いては布で拭っている。
(ああいう几帳面な所はまともなのに…)
見習うべき点と、そうでない点の落差が激しい。
「君の為に状態異常回復と、耐性持ちの面子にすべきかな」
嫌味ったらしく云い、引き出しの中に整頓された管と入れ替えている。
「あ〜はいはい、お好きにして下さい、おやすみ」
そんなライドウを流して、もう掛け布団は諦めて目を瞑る。
あんな奴にいちいち返していたら、身が持たない。
(これで目が覚めたら、流石に戻れてるだろ)
人間らしい睡魔が、俺の航海を約束していたのに
その船出は見事妨害されるのであった。

しゃーこしゃーこ

気味の悪い音がする。
これは、何かを磨る音の様だが。
まさか、刃物か?
(あの男なら俺にその刃を向けかねないな)
俺が人間状態だろうがお構いなしな気がする。
薄く眼を開けると、机に向かっているライドウが
何かをせっせとしているのは確認出来た。
(…恐)
今何かされたら、正直太刀打ちできない。
こんな貧弱な肉体では、鍛えているサマナーに挑むのは無理だ。
ああ見えてあの男、体術も心得ているので恐ろしい。
以前、無理矢理連れて行かれた大衆浴場で
学生服の下の、薄っすらと付くしなやかな筋肉を見た。
羨望と嫉妬がじわりと滲んだのを覚えている。
同年代の同性が理想的な体躯をしているのだ。
そんな感情が生まれても仕方ないだろう、と自分に云い聞かせた。
周りに居たやくざ者の一部から、熱い視線を贈られていたライドウ。
前すら隠さずにその男達に向かって
御機嫌よう、組の皆さん。
とか云って堂々たる様で浴場を闊歩する姿に、俺は死にそうだった。
色んな意味で付いていけない。
浴槽にタオルを入れてしまい、殺されそうになった俺とは
居る世界が違うのだ。
ちなみにまともさで云っても、世界が違う。
あの男は色々おかしい。
半分悪魔の俺の方が、性格がまともって…そもそも其処でおかしい。

「功刀君」
「…」
覚醒しているが、その声を無視する。
「書初めは興味有る?」
「無い」
「起きているなら返事したまえ」
「今の俺、あんたの仲“魔”じゃ無いんだろ?」
屁理屈で返し、上半身を起こす。
「なんだ、あんた正月に書初めするような嗜みがあったのか?」
「今回は俄然する気になってね」
そのライドウの机の上に視線をやれば…
(多くないか、その量)
大量に磨られた硯の中の墨。
半紙何枚分だよ、と突っ込まれる量である。
「何書くんだよ、まさか将来の夢とか今年の抱負?」
自分で聞いておきながら、想像してみると…
【悪魔召喚皇】
と半紙に書くライドウを想像してしまい、腹を抱えた。
「何勝手に妄想しているのか知らぬけど、僕は文字は書かないよ」
用意した筆を指で弄びながら、云うライドウ。
「は?何書くんだよ」
そう聞き返した俺に、ニタリと哂い
何故か管を手にする。
溢れた光を身に纏い、彼の仲魔が姿を現す。
『あらぁ、戦闘中…では無いみたいね』
蔦に体を覆われた女性悪魔、アルラウネだ。
俺はその風貌に、思わず眼を逸らす。
何故あんな悪魔を直視出来るのか聞きたい。

「アルラウネ、そいつを縛り上げろ」

信じたくないその台詞。
俺はがばりとベッドから飛び起き、部屋の扉に向かって駆け出した。
『ごめんね!』
女性の声と共に、脚から掬われ宙吊りになる。
足首に、植物の蔦が絡まっている。
『あら、良く見れば人修羅ちゃんじゃない』
「放せアルラウネ…!」
逆さまの彼女を睨み、苦しげにそう吐けば
『ごめんねぇ、ワタシのご主人様はライドウだから…』
パンッと両手を合わせて笑顔で拒否された。
「何のつもりだライドウ!?」
元凶に向かい、俺は怒鳴りつけた。
彼は学生服のみとなり、身軽な姿で袖を捲っている。
「何って、書初めだよ」
「意味が…」
「秘め始め…と云っても差し支え無いかな?」
その単語に、嫌な汗が滲み出てきた。
「アルラウネ、適当な物に蔦で固定しろ」
『どう?』
「窓側と扉側に蔦、ベッド上に彼が来るように」
『ああ、基督の磔?』
「その連想で構わない、ただし脚は少し広げてくれ」
勝手に進む打ち合わせに、俺は何と云えば良いかも分からない。
そして、天地が元通りになると
打ち合わせの通り、俺はベッド上に磔にされた。
表現としてはおぞましいが、まさしく緊縛物のポルノ画そのもの。
「アルラウネは見ていく?」
『え、遠慮しとく。人修羅ちゃんと後日顔合わせ難いしねぇ』
「へえ、思慮深いね」
そう云いライドウは彼女を管に戻した。
アルラウネに罪は無い、と思った。
「…で、あんたの品性下劣なショーの始まりって事?」
蔦がチクチクするが、それより今は目の前の男の動向が気になる。
「書初め、だよ」
「どこがだよ」
今は人間であるから、されても半殺し程度だろう…等と
最近イカレてきた脳が、俺をそう諭す。
「君が早く人修羅に戻るように願掛けも兼ねて…」
そう云ってライドウは、筆を墨に浸す。
(願掛けって、まさかダルマみたいな?)
羽根突きで負けた側の受ける、あの眼周りの○を連想した。
しかし…
そんな幼稚なものでない事に、直後気付かされる。

「指先から始めようかな」
云うライドウが手にした筆を、俺の手の指先に走らせた。
「!!」
そのくすぐったいような、ぞわりと這い上がる感覚に
息が止まる。
上手いこと固定する蔦が、指先の動きすら禁じていた。
「な…にしてんだよ…!?」
筆先を俺の指から放したライドウに、詰まる声で問う。
「君、今斑紋無いだろう?」
まさか
「だから、僕が描いてあげようと思ってね」
その眼に邪が宿った。
吊りあがる口の端が、ライドウの心境を映し出す。
「確か、この関節部分と付け根に…」
ライドウは作業に戻り、筆先を再び俺の指に這わした。
「…っ」
これは、恐らく拷問なのだ。
人の指なんかとは違う、不安定な感触が身体を惑わす。
大笑いするくすぐったさとは違う。
「で、この付け根から甲を這って腕に…」
「ひ…っ」
(…しまった)
思わず喉から這い上がる声を、抑える事が出来ずに吐露してしまった。
その瞬間、ライドウが筆を止める。
「…どういう意味の声?」
その含みがある言葉に、俺は一瞬間を置いてから
「何が云いたいんだよ!この悪趣味サマナー!!」
そう侮蔑の言葉を吐きかけてやったのだが
この男、それすら愉しいらしい。
「記憶だけで描くのも、一興だな」
そう云い、続けて甲に数回滑らせる。
吐く息が、浅い。
堪えようと、無意識に呼吸の感覚を狭くする。
「服、邪魔だね」
「…」
「取り払ってしまおうか」
「この…っ」
ライドウは云うなり、筆を刀に持ち替えて構えた。
シャツのネック部分に切っ先を潜らせ、縦に下ろす。
布の裂ける音がする。
「弁償ならしてあげる」
纏う服が、ただの布切れになってゆく。
身体から落ちきらなかった分の、その布切れを
ライドウが払い除けた。
「あんたの身体で弁償しろよ」
「おや、それは何のお誘い?」
「ぶん殴らせろって事」
「へえ、それもまた一興」
もう何を云っても無駄らしい。
見事上半身を晒された俺は、この後の展開に恐怖した。
「この人差し指と薬指の先が繋がる意味は何だろうね」
「知ら…ないっ」
腕を走る毛先が、鳥肌を作る。
蔦がぎしり…と軋みを上げる。
「肩はつまらないな、毛細血管の集まる箇所がやはり良い」
そんな事を云いながら、ライドウは肩を手早く済ませる。
「ふ…」
「あれ?」
「ふぁ…っ!」
「意外だね、背中が性感帯だったとは」
そのライドウの吐いた単語に、頬が熱くなる。
「ち…が…」
背骨の上を滑走する筆が、まるで這い上がる軟体生物の様。
「…あ、あぅ…っ」
「違わないのでは?功刀君?」
見えないけど分かる、背後で哂っているその顔。
「項の突起が無いけど、この生える箇所も怪しいな」
容赦なく、筆が項を行き来する。
顎を突き上げ、歯を食い縛る。
「っ…!!」
(早く…終われ)
この地獄よ、早く終われ。
堕天使に刻まれた斑紋を、今度は悪魔召喚師に刻まれる。
本当に呪いの斑紋だ。
「ちょっと、動かないでくれ」
背後から伸びた手に、前髪を掴まれる。
「うぁ…っ」
「線が歪む」
一方的な行為に、怒りが湧いてくる。
「ねえ、君が不安に思っている箇所をやろうか?」
耳元で囁くライドウ。
「っは…ぁ…」
返す言葉も無かった。
「ほら」
筆先が、胸に移る。
そして、所謂先端をつつき出したのだ。
「ああっ!!」
声が出ない筈無い。
恥と、怒りと、その何とも云い難い感覚に
あられもない声が。
「へえ、流石にここは感度良いんだ?」
「こ、このッ…あ!!」
「フフ…」
「あ、あ…ッ!!」
「分かる?立ってきたけど」
爆発しそうだった。
自尊心が、崩壊している。
この声が自分のだと認めたくない。
「う…ぁ、やだ、やめろ」
「何?」
「もう…胸やめて…くれっ」
顔が熱い。
心臓がドクドクいっている。
「では、胸の何処を止めて欲しいか云え」
「…」
「胸っていうのは、そこそこ範囲が広い筈だが?」
そのライドウの、云わそうとする単語が何か位知っている。
唇が、意識に反して開こうとする。
大人しく云わねば、いつまで経っても終わらぬぞ…と
(ああ…もう、楽に、なりたい)
「くび…」
「はっきり云ってくれ」
「もう、ち、乳首やめて…っ」
多分、俺は真っ赤になっている。
耳まで熱いのだから。
「良く云えました」
しつこく撫ぜられた両胸が開放され、少しホッとする。
「まあ、問題点がいくつか残っているのだけどね」
ライドウの台詞に、引っ掛かりを感じるが。
腹を這う筆に耐え、なるべく意識を逸らしていた。
「にしても…君、こっちもあまり啼かないね」
「…そうそう、啼いてたまるかよ…っ」
睨みつけてそう云ってやれば、ライドウは口を歪ませる。
「声は上げる為にあるものだろう?」
「会話の為だ」
「行動指針の伝達なら、動きや文章だけでも成り立つが?」
「そんなのじゃなくて!」
「なくて?」
「…」
どうしよう、墓穴を掘ってしまった。
云いたい事は有る、が、この男にだけは聞かせたくない。
「た…大切な事は口にした方が、良いからだ」
その沈黙に、ギリギリで答える。
黙っても良いのだが、それはなんだか…負けた気になる。
「へえ?君が言霊として紡ぐべきと思うのはどんな内容?」
ライドウの声と、脚を駆け抜ける感触が身体を穿つ。
「ま、違っても、あんたには云わない事だ!」
びくりびくりと反応する肉体を無理矢理抑えて
憎まれ口を叩き込む。
「当てようか?」
ライドウが俺の脚の指を、墨でぐるりと舐めた。
「は…あぁっ」
「友愛の言葉なんかより、酷く形が鮮明で…僕は悲鳴が好きだよ」
「し、死ねっ!」
「空気のような賞賛より、芯に刺さる侮蔑が、酷く興奮する」
「もう嫌だ!何故あんたは俺を…」
俺を仲魔にしたんだ?とは聞かない。
理由はもう、聞いてある。
俺だって承知で傘下へと下った。
今更何だ、往生際が悪いぞ、自分…
「僕が君を…何だって?」
しっかり続きを求めてくるライドウ。
もう、云ってやろう。
「何故あんたは、俺を戦い以外の時も傍に置くの?」
この状況にそぐわぬ、何気ない疑問だった。
「…自惚れていないか、功刀矢代」
足元から、筆先と一緒に這い上がるライドウの視線。
指の先から頭の天辺まで、侵食される。
その黒い蛭に。
「君を監視しているのだよ…」
「い、痛っ」
「勝手に何処かへ消えぬ様に」
「痛い!痛いぃい!!」
「堕天使の元へ行かぬ様に!」
「今は人間なんだ!頼むから!頼むからあっっ!!」
普段なら、どうという事も無いライドウの爪先。
項に突起が無いのを良い事に、指を埋め込まれようとする程
ギリギリと喰い込ませてきた。
裂けた皮膚から、何かが伝う感触がする。
息を荒げる俺の目の前で、指に付いた血を舐めたライドウ。
「魔力の欠片も無い、鉄錆の味」
そう云って、掌にぷっと吐き出した。
「不味い」
「知る…かよ…」
「早く悪魔に戻って…人修羅に戻ってくれよ功刀君」
その手が、俺の腰を這って
スラックスの端に掛かる。
弾かれたように、ライドウの眼を見た。
俺の恐怖を煽る光が、眼の中に見える。
「嘘…」
「嘘じゃないよ、見えない所も満遍なく書かないと」
「殺してやるっ、封魔が解けたら絶対に!」
「それは楽しみだ」
「俺の斑紋だって、誰が見せてやるかっ…その両目…抉ってやるっ!」
「大丈夫だよ」
俺の喚きたてた言葉を、軽く流したその男。
ゾッとする言葉を、耳元で囁いた。
「見えずとも、憶えている…もう飽く程に、眺めてきたから」
脚が、手が震える。
恥なのか…
恐怖なのか。
「愛玩動物の毛や眼の色くらい、飼い主は記憶しているだろう?それと同じ…その程度の事…」
「やめろ!!!!」
その発言に対してか…
その指が着衣を剥がす事に対してかなのか。

直視、出来ない。
固く目を瞑り、首を真横へ向けた。
下半身が外気に触れる。
その寒さと、別の寒気が胎内から来る。
視界を遮断しているというのに、ありありと手に取るように。
「これも弁償」
その言葉と同時に、布の裂ける音。
化学繊維特有の、簡単に解けてゆく軽い音が鼓膜を撫でる。
脚を伝って、脹脛に当たって、ぱさりとベッドに落ちた音。
もう、何も身に纏っていない自分が、脳内に浮かぶ。
「君の裸を見る機会はあまり無いから、ここからが本当に記憶頼りだな」
そう云い、腰の骨を指先でなぞるライドウ。
その指が筆先にすり替わって、胎を行き交う。
「臍は確か避けられていたね」
筆の先が、胎の中心を避けて旋回する。
まるで胎内をこねくり回されている様な錯覚を起こす。
「オムファロスって知っているかい?」
突如来る問いかけに、俺は沈黙したまま意識を逸らしていた。
間を置いて、墨を塗る手が止まる。
「創造論の仮説なのだけど、ギリシア語で臍という意でね」
「…」
また始まった。
偶に語られるこの男の語りは、博識とは思うが
かなり隔たっている。
それに何と回答すべきか、困るのだ。
俺を試しているのかとさえ感じる。
おまけに今は、そんな事に答えれる余裕は無い。
「アダムとイブに臍が在ったのか、って話」
「…俺に在るのは悪いのかよ」
早く終わらせたくて、適当に文句をつける。
「慈悲深い神が、人を騙す為に人体に祖先の印を刻んだのだと…」
「何が云いたいんだよあんた」
「全て完全に存在する状態で地球は創造されのだ」
「…」
「そういう説」
創造…という単語に、俺はずくりと心を抉られる。
理由なんて考えたくも無いが。
「もしかしたらアダムとイブの前に世界があって、受胎したのかもね?」
「…そりゃあんたの勝手な仮説だろ」
「東京受胎後の世界は新生なものだけど、全てが完全に存在しているだろう?だから、一体どの時代が真の意味での世界の始まりなのか…考える事は無いのかい?」
(俺の臍から何処まで話を拡げるんだよこの男)
呆れてしまう。
俺を虐めて遊んでいるかと思えば、この論議。
何処から何処までが、この男にとって
お遊びなのか、真面目なのか。
嘘なのか真実なのか。
「この胎の蓮華の花…下までどう続いていたかな…」
筆先が、一番恐怖していた箇所に到達する。
下がる放熱器官から、萎えた竿までつい、と筆の先が焦らす。
「そ、んな所、入ってなかった」
「そうだっけか?間違いなく入っていた筈…だけど?」
薄く眼を開けば、見てしまった事を後悔したくなる光景が映った。
「この器官、悪魔に必要なのか?」
そんな嘲るような口調で、筆を滑らせる。
「ふ…あっ」
「少し、塗り難いのだけど」
「…!」
「あ、そうそう…傾斜つけてくれると、大変助かるよ…」
「こっ、この!!こッ…ぅ…うぅ」
痙攣する手足の先の蔦が、肌に喰いこみ血を吸う様だ。
筆が俺の肌を舐めると、それらが咬み付いてくる。
ゆるり、ゆるりと熱が胎から込み上げる。
何故、悪魔になっても身体にこんな機能が残っているのだろう。
「ふぅん、ご立派様には程遠いかな」
その言葉に、ブツリと頭で切れる感覚。
「ぶっ殺す!!葛葉ライドウ!!」
蔦も気にせず、ギチギチと肉を削がれつつ暴れる。
こんな発言、この男にしかした事が無い。
「殺してみれば?」
鼻で笑うライドウが、竿の外周をぐるりと筆で囲んだ。
「ひ…っ」
(もう喉を、誰か潰して)
「弛んでた所も、墨で埋めないとね」
愉しそうに、ぐいぐいと伸ばされる。
新しく浸された墨が、熱を奪うように纏わり付く。
ライドウの黒に、体が侵されていく様だ。
「ねえ、出るまで此処で遊んでいて良い?」
決定的な発言に、息が止まった。
「人間だから、出るのは精子かな?それとも力の抑制が有るだけだから、違う物質が出るのかな?」
「やめ、やめて」
「どう思う?エセ人間?」
「やめてくれえッ!!」
込み上げる熱と、恥と、焦りで
脳内がもう沸点を超えていた。
飽和状態だ。
「海綿体の中が血液なのか、マガツヒなのかも謎だ」
ライドウの、分析めいた口調に
まるで現実味が無かった。
間違いなく、今身体を苛まれているのは現実なのに。
這い上がってくる、この感覚も嘘では無いのだ。
その先端に、身体の感覚が集中するかの様だ。
(筆で…なんて)
最悪…だった。
この男の、例えば指だって嫌だ。
しかし、別の用途の道具で解されるのが
すでに自身の尊厳を崩落させていた。
「うっ、うう、う〜っ!」
食い縛り、つま先がピンと伸びきる。
目尻に何か滲んでいる、気がする。
食い縛った口の端からは、唾液が伝っていた。
もう情けないとか、そんな事を顧みる余裕は無い。
「そんなに良い?」
「う、うぅッ」
「クク、嘘。そんな陳腐な台詞は吐かないよ…だって其れが生理的な反応という事位、判るからね…」
裏側を、触れるか触れないかで毛先がよろめく。
「黙ってたって良い箇所くらい解る、同性だ」
毛先が、先端手前で突っ掛かる。
その溝を、執拗に撫ぜる…動きに
背筋に冷水を掛けられたようにビリッと電流が奔る。
「あっ、あああっ」
絶叫している自分の声が、まさに嬌声という表現が相応しくて
誰かと思った。
駄目だ、この墨は毒なんじゃないだろうか。
だって、そうでもなければこんな感覚異常だ。
指先から、そこらの先端から、その局部に斑紋を伝って流れてきて
甘美な感覚が
背徳的な悦楽が
俺の中身をかき混ぜて、混濁させる。
「ひ…!!ひああぁっ!!」
何かを吐き出して、混濁した胎内に黒だけが残る。
あの外套の様な、あの漆黒の睫の様な
あの暗黒めいた心の様な色だけが。
「っ…君、前兆無く吐くのは止めてくれないか」
下方からするライドウの声に、肩で息をしながら視線を配る。
なにか、その顔に掛かっている、気がする。
「たたり生唾って、本当に避けるのに一苦労だな」
そう云い、軽く指で拭う奴を見て
(あ…あれは俺の、吐き出したものなのか)
と、放心しきった頭でようやく理解した。
もう、恥ずかしさとかは臨界点に来ていたので
そうとしか考えが浮かばなかった。
「処理して」
眼前にその顔を突き出してきたライドウ。
(この男、何でこんな整った顔してて…イカレてるんだろう)
何故か、もう突拍子もない事しか浮かんでこない。
そのライドウの長い睫に、白っぽい雫が垂れている。
泣いている様にも見えるが、間違ってもそれは無い。
この悪魔召喚師が泣くなんて、天変地異が起こる。
「ほら、してくれ」
「ぐうぅっ!?」
股を膝頭で、ぐりぐりと潰される。
身体を捩るが、回避のしようも無い。
「あ、悪…魔…」
かすれた声で、その綺麗な顔に侮蔑を吐けば
笑顔でひと蹴り、股に綺麗に決められた。
胎がきゅうと伸縮して、胎内の血管が縮む様な衝撃。
「あ゛…っ」
痛くて、痛すぎて。
閉じぬ口からぽたぽたと、ベッドのシーツを濡らす唾液が垂れた。
「絶対服従させる快感が、悪魔も人も関係無いのだと…」
ライドウが云いながら俺の顎を掴む。
「君のお陰で良く理解出来たよ、功刀君…」
「な、める、舐めるから!もう、終わらせて、くれ」
確かに、絶対的な恐怖が俺を支配していた。
人間の身体では、もはや赤子同然だったのだ。
人修羅の時だって、あの悪魔召喚師の強い気が
俺の人間の部分を制して、悪魔の部分を飼いならしてるというのに…
「はぁ…は……んっ」
舌で、その通った鼻筋から涙袋を辿って
苦い蜜を舐めとる。
自分の吐いたものだとか、そんな場合では無い。
もう、赦しを請うだけの犬だった。
俺は今、俺では無いと信じたかった。
ライドウの黒で身体に呪いをかけられているだけ、だ。
その呪縛に操られている哀れな人間なんだ…
「ああ、顔も書かないとね」
そんな事を云って、ライドウは指先に墨を付けて
俺の眼元から首筋まで、そろりと指の腹で撫で付けた。
「顔は指でやろうと思っていた」
「…」
「一番好きな箇所だから」
頬に手を添えられて、妖艶な笑みで俺を見下ろすその顔。
指先に、迷いは無かった。
その自信を、俺に訴えているのか…
「泣いているみたいだといつも思う、その眼下を伝うライン」
「…泣いてない」
「フ…」
あんたと居て、泣きたい事ばかりだけど。
云われて享受する程、泣き濡れちゃいない…


「まあまあの出来か」
筆を硯に置いて、椅子に腰掛けたライドウ。
俺はそのまま放置されていた。
今はむしろ蔦が有ってくれて助かっていた。
無ければ既に突っ伏している程、疲弊していた。
(いや、突っ伏した方が身体を曝け出さずに済むんじゃないか?)
だが、もう地に伏したら、完全に負けた様な気がするのだ。
「功刀君、此方を向いて御覧」
突如掛かったその声に、重い頭を上げた。
俺を真っ直ぐに捉える、レンズ。
「な、にそれ…」
「セコハンカメラ」
自分の開いた口が閉じない。
カーテンを開け光を取り入れたライドウは、ピントを合わせている。
「何だよそれ!あんたは何がしたいんだよっ!?」
流石に暴れるのだが、蔦はビクともしない。
「完成品を撮影して何がいけない?」
「そのネガ、絶対破壊してやる」
「フィルム?駄目、此れはタヱさんから頂いたものだからね」
ここで他人を挙げるのが、腹立たしい。
一対一での撮影。
まるで、生徒手帳に貼る写真の撮影会だ。
目の前に来て、正方形の様なカメラが俺に向けられる。
「フフ、哂って御覧」
「…」
いつか絶対殺してやる。
真横を向いて、それだけをひたすら考える様にした。
「ピント合わせが難しい」
愉しげな撮影会を終えて、ライドウはようやく俺を解放した。
だが、その辺りからぼんやりとしか、記憶が無い。
泥のように、そのまま突っ伏した、結局。



「!!」
冷たい空気。
がばりと飛び起きれば、台の上に居た。
「な…んだ」
新宿衛生病院で目覚めた時に酷似していた。
俺が一瞬で覚醒した理由はそれだった。
「おお!気付いたか人修羅よ!」
あの声は…
「ヴィクトルさん、俺一体…」
「葛葉が先刻担いで来おったぞ、随分疲労困憊だったが、どうした?」
ハッとして、両手を見た。
擦り合わせてみるが、落ちない。
「ど、どうしよう落ちない…!」
「人修羅?」
「落ちない…!ヴィクトルさん!シンナーとか無いですか!?」
「どうしたのだお前」
「この墨、薬剤でもないと落ちないんだっ!!」
身体中を擦り、声を荒げて叫ぶ俺に
ドクターは手を翳し制してきた。
「待て待て!何を云っているのだ!その刻みは元からだろうが」
「え…」
「お前は既に人修羅へと戻っているのだぞ???」
ゆっくりと、指先を見つめた。
確かに…これは、皮膚に刻まれている。
墨なんかじゃ、無い。
「まだ覚醒しきっとらんのか…まあ良い、大人しく寝ていろ!」
言い残し、その場から立ち去るドクターヴィクトル。
なんだ…
人修羅に戻ったから、一応連れて来たって事か?
自身に掛けられた布が、まるで遺体にする布を連想させた。
ゆっくり起き上がり、布を纏ったまま辺りを見渡す。
此処には偶に運ばれるのだが、いつもはすぐにお暇する。
薄気味悪い、手術室か霊安室の様だから。
(ライドウの奴、会ったらまず一発顔面からだ)
暗い欲望が胎に渦巻いている。
ククッと笑って、適当に棚を眺めていた。
「…」
一冊、真新しい本が目立っている。
指を掛け、引き抜いたそれをパラパラと捲ってみた。

日・未明
帝都にて初の致命傷。
人修羅の気の緩みと思われる。
胎から胸部にかけて、大きく裂傷。
完治まで28時間。

なんだ、これ…は。

霜月ノ十日
精神感応にかなり弱い。
仲魔まで殴打しだす始末。
此方に矛先を向けた為、応戦。
やり過ぎて右上腕裂傷、関節部が剥離。
完治まで27時間。

覚えている。
これはこっぴどく怒られた時のだ…!

霜月ノ末日
目覚めない。
内腑を意外とやられていた様子。
血反吐を吐きつつ応戦していたが、卒倒。
※記述中に覚醒、結局完治までは三日に至った。

どの文にも、写真まで付いていた。
一瞬死んでいるとしか思えない、酷い状態の人が写っている。
それは、俺だ。
(これ、何だ)
更に捲ると、罫線入りのページに到達した。
何か、図が描いてある。
人の背から羽が伸びていたり、蓮の花が咲き乱れている。
シャープな線で、緻密に描かれた下に注釈の様なものがある。

背面のライン、翼を模している気もする。
各部の同一モチイフ、恐らく蓮。
※蓮華の花、仏門とインドでの神話からか?
そちらの悪魔と見合わせて解釈する必要有。

(俺、の斑紋だよな、多分)
俺の観察日記かよ。
隅から隅まで、俺ですら知らない事が載ってそうですらある。
これ、どう考えてもライドウの字だ。
それは…斑紋も完全に再現出来る筈である。
目覚めた時、あの墨で刻まれたままの身体かと錯覚した位だ。
俺について、調べ抜いておこうという算段か…
確かに、悪魔召喚皇としては重要かもしれないな。
未知の“人修羅”についての解明は。
(フン、寝首かかれない様に先手を打っとくって事か?)
あいつらしいか、と既に怒る気にもなれず
パラパラと捲り続ける。
すると、重圧な背表紙の浮きを確認出来た。
折り返し部分に変な浮きを感じる。
違和感を感じ、そこを指で触る。
(何か、中に挟まってる?)
折り返し部分を、そっと捲り取り払った。
はらり、と紙の様な物が足下に落ちた。
「…何で」
(何でこんな…何時撮った…!?)

斑紋も無い、人間の成りをした俺の
寝顔が写っていた

この写真が、あいつにとって何の得を与えるんだ?
悪魔の、人修羅の生態でもあるまいし。
おまけに人間時の能力〜だとか、そんなの無関係な就眠時。
(認めるか)
写真の中の平和そうな俺の寝顔が腹立たしい。
「認めるかよっ!」
その写真に向かって、腕に点した焔を
指先から叩き付ける。
軽い音を立てて燃える写真を、素足で踏み躙った。
一瞬、じり…と足裏に熱を感じる。
(ライドウ…)
おかしい、もう身体の毒は消えた筈なのに。
あの写真を見た瞬間、何かがこみ上げた…
急いで本を棚に戻して、脚の煤を掃った。
(あの本のページは、一体どこまで記述がされるのだろう)
先刻撮られた写真も挟まれるのだろうか。
悪魔召喚皇になったら、あんなの必要無くなるんだよな。

あれが処分されるのか…
完全なる混沌の王となった俺が記述されて、完成するのか…

ギィ、と音のする方を振り返る。
「おはよう」
『おい、寒くないのか人修羅』
ライドウに、ゴウト…扉を開けて此方へと入ってきた。
何か手にしている。
「はい、弁償すると云ったからね」
「え、ああ…」
ぶん殴るつもりが、服を受け取っている俺。
「…あんた、どの時代で買ったんだよコレ」
「アカラナ使って2003年頃で」
溜息が出る、それ位バッチリだからだ。
おまけに、趣味の良さに更に腹が立つ。
この男、脳が先を行き過ぎているのでは無いだろうか?
「今年の書初めはなかなか興奮した」
哂って云うライドウに、俺は拳を贈り返そうと思ったのに
「なあ、これ着て力制御したら、完全な人間に見えるか?」
何故か返事の期待出来ないこいつに、そんな事を聞いていた。
ライドウは、一瞬哂いを引かせたが
すぐに戻り、云った。
「見えるよ」
「そ、そうか」
「成りだけは、ね」
そう続けて、俺の耳を引っ張り顔を無理矢理寄せる。
そして、痛がる俺を無視して耳元で囁いてきた。
「だけどね、人修羅への戻り方を忘れたら、ただじゃおかない」
甘い声音で、囁く…

「今度は葛葉ライドウの血で、刻んであげよう…」

俺の身体がその言葉に返事するかの様に
啼いた気が、した。
(ライ…ドウ…)
俺は、まだ熱があるのかもしれない。
そうだ、きっと。

秘め始め・了
* あとがき*

正月SSから派生して、何故こんな事に。
筆責めという無謀な内容に挑戦しましたが、これは玉砕でしょうか?
でもあの斑紋を描いたら、絶対くすぐったいと思います。
あとライドウのストーカーレベルが更にアップしていて
本当にどうしようかと。
ところでこの話、エロいと思います…?