泥眼に遮眼帯(後編)

 
「何卒…」
額を床に擦る。深い木目の色が、視界一杯に広がった。
「何卒、御助勢願い奉る…」
一斉に視線が、僕を射る。
見える訳では無い、身に感じる。
(ああ、やはり同一体か)
雷堂と、同じ事をしている。
折った指を床に沿え、額を擦り、懇願の形を取っている。
「十四代目よ、同じ失態を犯すで無いぞ」
「飼い犬に逃げられるとは、滑稽…」
「これだから、縄で繋げとあれ程に云ったものを」
「十四代目…もう良い、上げ」
許しの言葉を投げられ、視線から、首、と徐々に上げる。
「では云うた通りに…人修羅は始末せず、捕獲しよう」
「有り難う御座います」
「ただし、極力、だぞ…暴走されては遅い」
「その際は、このライドウが、責任を以って殺めます故…」
ヤタガラスに、願ったのは人修羅の事。
アカラナ回廊から、あの平行世界に行けない為だ。
向こうから封しているのだろうが、そんな事は容易では無い。
(ルシファーに頼んだのか…あいつ)
ずっと、なのか定かでは無いが…僕を行かせぬ為か。
しかしそれでは、あの堕天使がつまらぬだろう。
きっと、封はすぐ解ける…
それまで、ヤタガラスの…サマナーの糸を張る。
多くの視線が、代償に僕を串刺しにした。
気持ちが良い訳無い。
しかし、こうして恥を晒してまで、声を大にして唱えなければ…
抜け駆けされる。


『お主、よくもまあ大衆の面前で頭が下げれたものだな』
「わざわざ云わないでくれますか?胸糞悪いですよ、正直ね」
表に出れば、ゴウトが感嘆の声を上げた。
こんな事で感動しないでくれ、とそのヒゲを一本引っ張る。
『ででっ!!八つ当たりは止めんか!!』
「…では、貴方ならどうします?」
指を離し、その猫面に問い掛ける。
「育成途中の、力を秘めた悪魔を野放しにして…」
『…』
「最期まで面倒を看たいのがサマナーでしょう」
『強い悪魔なら、尚の事…な』
「あれを野放しにしてみて下さい、それこそ敵は身内に在り、ですよ」
先に表へと出て行ったサマナー達が、遠方から此方を観察している。
「ほら、ね」
『…噂に聞く人修羅を管に納めんと、虎視眈々と狙うておるのか」
「抜け駆けしない様に公表したまでです」
『成る程』
ニヤリ、と猫笑いするゴウトに哂い返す。
「まあ、功刀が他に転がる様なら…人修羅の暴走と称し、そのサマナーごと屠りますがね」
『おいおい、問題を増やしてくれるな』
隠しもせずに、そう会話をして人並みを掻い潜り歩いてゆく。
様々な視線の雨が、外套を貫通してきた。
「十四代目…お噂はかねがね…」
すっと両端に寄り、浅く礼をする衆。
じっと、妬ましげに伏した視線を寄越す衆。
「迷惑を掛ける、申し訳無い」
そこへ形式に則った挨拶をすれば、いいえいいえと首を振る。
この内の何人が、僕を嗤って居ぬのだろうか?
「して十四代目、少々確認事が御座いまして…」
スーツ姿のサマナーが、一歩踏み出でる。
「何か」
「その…人修羅、なのですがね…もし、もしですよ?応戦する事になったとしますよ?したらば…何が効果的ですか?弱点は?」
その、如何にも…遇いたそうな彼に、僕は笑顔を作る。
「時と場合によりけり、かと」
「は、はあ…」
「ああ、あと破廉恥な行為には人一倍弱い」
「は、破廉恥…ですか?」
ぎょっとして、眉をひそませる。
きっと云っている意味が解せぬのだろう。
そのまま僕は通過し、背後に佇む衆に向かって振り向く。
「そうそう…襲い来る獲物は喰い千切れと教育してあるので…そのつもりで」
そう云えば、ざわつく一同。
堪えきれぬ笑みを口の端に滲ませて、僕はその場を去る。
『そんな教育しとらんだろうて』
ゴウトが呆れた声で僕に語りかける。
「舐められては腹が立つ」
『お主の事では無いだろう』
「それを使役している僕への評価に繋がりますから」
『お主の実力くらい皆知っておる』
それだからこそ、狡猾に、強かに振舞うのだ。
人修羅を使役し始めてから、申し込まれる決闘も増えた。
徹底的に、完膚なきまでに叩き潰してきてやった。
もう、人修羅なぞその頭から消せ。
これは…十四代目葛葉ライドウの悪魔ぞ、と。
「銀楼閣で待機します」
『お?意外と悠長だな』
「何の為に土下座したと思っているんです」
懐から太鼓を取り出し、ぱかりぱかりと打ち鳴らす。
天に煌く金色が、ぶわりと僕の下へ降りてきた。
『十四代目、お主の背後からの視線が痛いぞよ』
コウリュウに笑われる。
それはそうだ。何せあのコウリュウを移動手段に使うのだから。
彼等にとって、それを見せられるのは…癪なのだ。
「コウリュウ様、一杯に煌いて下さいませな」
『ははは!相変わらず意地の悪い小童め!』
その龍の笑いに、笑い返して跨る。
…そう、今は待つしか無い。
もし、あれが主を替えようとするのなら
僕を殺しにくる筈だ。
それを想像して、腹立たしさよりも先立つのは、興奮。
(それならそれで、構わない)
あの透明な感情を湛えた眼が…強く光り、ぶつけてくる殺意。
それを一身に浴びて…僕は綺麗に成るのだ。
纏わり付く余計な感情を棄て、彼とただ…命のやり取りをするのだ…
見えてきた銀楼閣を眼にし、密やかにほくそ笑んだ。



「あの、雷堂さん…本当に大丈夫ですか?」
「ヤタガラスから許されたのだ、問題は無い」
深めに帽子を被り、眼元を包帯で覆う書生。
異様なその成りが、周囲の好奇の眼を拾う。
「足下、気をつけてくださいね」
「君が引いてくれている、安心して歩ける…」
確かに、俺が手を引いて先導はしているが
視界が一切無い人を連れるなんて初めての事で、戸惑う。
その手から、体温が伝わる…
ああ、雷堂さん…まるで夢の中の人みたく儚げだったのに
こうして外を歩けば、現の住人になる。
一体、どっちなのだろう?
「カラスは…視えぬなら外界に出しても良いとの判断だろうて」
「俺がこの帝都で暴れたらどうするつもりです?」
そんな冗談を口にすれば、彼は口元で微笑む。
「君が我に優しくしてくれているのは、分かっている様だ」
「雷堂さんを餌にしてませんか?」
「君が喰らい付いてくれるなら本望だが」
「な…ちょっと、止めて下さい!そういう冗談…!」
微かに滲む、雷堂の暗い感情が発露する。
そんな瞬間、俺は恐い反面、とても不安になる…
この人を放っておいたら、どうなってしまうのか、と。
「あ、雷堂さん…落ち葉踏んでますから、気をつけて」
「落ち葉…どの木のだ?」
「モミジです」
「紅葉しているのだろうか?」
「はい、足元のは紅いですね」
「もう…そんな季節になったのか」
そう呟いた雷堂は、足先を滑らせて其れを確認したのか
葉の上から靴先を退けて踏み出す。
「君は、流石に雪の季節までには還るのだろう?」
「…まあ、多分ですけど」
「随分とあやふやだな」
「俺も、いつまでこうしているのか…正直迷っていますから」
「そうか…」
深く滴る言葉を吐くのに、この人は俺を咎めない。
指の隙間から零れ落ちた水で、己の脚が濡れても
そのままにしているかの様だった。
「寒くないですか?」
「大丈夫だ、君は…」
「あ、すいません…勝手に雷堂さんの着物借りました」
雷堂の箪笥の中は、ライドウのよりも更に渋い着物ばかりだった。
ライドウは、無頓着に見えて着道楽っぽかった。
あいつは俺に審美眼が無いとか抜かすけれど、少しは分かる。
正絹とか、大島紬とか…地味に見えて、高い…半端なく。
あいつの買い物に付き合ってれば、何が高いかなんて解ってくる。
「ライドウのより、着易くて好きです」
「ふ、安物だからな」
「あ!違います!そんな意味じゃ…」
俺が慌てて否定すれば、雷堂さんは可笑しそうに笑った。
「いや、すまぬ…君は正直で…可愛気が在るからつい」
「あの、嬉しくないですそれ」
「いや、本当にすまぬ、ふふ」
あれ?また俺は迷い込んでいる。
この人の心の中で…まるで見知らぬ町の路地裏みたいだ。
こうやって、普通の会話で和気藹々としていたかと思えば
行き止まりで絡め取られる。
(本当の雷堂さんの気持ちが、見えない)
暫く、手を引いて歩く。
この外出の目的地に向かって、紅い絨毯を歩き往く。
「あの…この建物…芝居小屋、ですか?」
云われた方にあるそれを見て、俺は背後の雷堂に聞く。
「そう見えるならそうだろう」
「答えになってませんよ、もう…」
「まあ、ふくれるな…能樂堂と表記が在る筈だ」
俺は別に、頬をふくらます様な幼い真似はしていないのだけど。
この人の脳内ではそんなイメージが展開されているのか?
少し恥ずかしい心地で、その入り口を探す。
「明!!」
突如叫ばれた声に、身体が止まった。
いや、正確には雷堂の手が、俺を止めた。
「其処に居るのは…間違いなく明だろう!?」
初老の男性が、呼ぶその名は…雷堂の真名だった筈。
「…小父様」
雷堂が、ぽつりと返す。
その声に、その男性は口元を押さえて寄って来た。
「おお…どうしたのだ、その眼元…そんなに任務が、過酷とは」
「…いいえ、俺の失態ですから、機関に非は無いです」
蚊帳の外の俺は、その二人の関係を勝手に推測する他無い。
(肉親…?居たのか?)
「君、明の御友人とお見受けするが…本日は遠路遥々有り難う」
と、その蚊帳から突如俺に向かって言葉が向けられた。
「いいえ、俺は大した事してやれて無いですから」
「いやいや、この子に友人が出来たのが…せめてもの救いだった」
その言葉の端々に、雷堂への情を感じる…
「有り難う、時間が許すなら是非公演も観てくれないかい?」
「え、でもお金とか…」
「要らぬよ…明も聴いていきなさい」
云われ、雷堂が少し握る手を強張らせた。
「小父様、俺はもう雷堂ですから…」
彼がそう、固く呟けば…小父様と呼ばれる男性は寂しそうに笑った。
「そうだったな…では雷堂よ、聴いていきなさい」
「はい」
その妙な空気に、俺は疑問符を浮かべたまま館内へと誘導されていった。


(参ったな、俺こういうのはサッパリだよ)
遠い席で、離れなので気兼ねなく観れる席だ。それに安堵する。
しかし…俺には到底分からない舞台の世界に困惑していた。
「矢代君…つまらぬか?」
傍で耳を澄ます雷堂が、俺の沈黙をそう受け取ったらしく聞いてきた。
「いや、圧巻ですけど…俺の感想といえば…高そうだなあ、とか」
「ふ、いや…分からぬならそう観て愉しめば良い」
呆れていないだろうか、俺の教養の無さに。
こんな時、もう少しこっちの方面にも知識が有ればと悔やむ。
「どの様な面を着けて舞っている?」
「えっと…なんか、白い、真っ白で、女性の顔?でも…恐い」
「…その能面、泥眼だろうか…聴いている限り曲は鉄輪あたりか」
「泥眼?そういう名前の面なんですか?」
俺の、もしかしたら超初歩的かもしれない問いに、雷堂は語る。
「怨みや嫉妬の情念を湛えた女性の面だ」
「恐いですね」
「白い肌は雲母の輝き…眼は金泥だ」
「えっ、金って純金!?」
「そうだ」
それに思わず溜息が出る、だって純金とか…あんな小物ひとつに。
貧乏性の俺は、ボルテクスで魔貨さえ出し渋っていたというのに。
「金色の眼は…人ならざるモノの証…」
それは、何に対して云っているのか…
雷堂が、遠くで暗闇の中照らされる舞台に耳を向けたまま
俺に語り続ける。
「少し昔話をして良いだろうか」
「え?あ、はい…」
舞台は聴かなくて良いのだろうか?と思いつつ、俺は既に聞きの体制だ。
「…我は、昔此処に居たのだ」
「此処に?え、この…一座に、って事ですか?」
「男が生まれなかった此処の宗家に、拾われた捨子だ」
そうだったのか…ヤタガラスに最初から居たのかと思っていた。
ライドウは、確か物心ついた頃にはヤタガラスに居たから。
てっきり同じだと、俺は決め付けていた。
ああ、だからこの人は常に姿勢が良いのか。とか妙な納得も在った。
「来る日も来る日も、稽古稽古で…正直逃げたい心も在った」
「雷堂さんもそんな事思うんですね」
「幼かったからな…しかし、いつだったか…我の異能を聞きつけたヤタガラスが来て、我を引き取った」
まるで第三者の様に語る口調は、もう彼が雷堂である事を証明していた。
「雷堂さんは此処に居たかったんですか?」
「…さあ、だが、常人には視えぬ悪魔が視えたのだ…ヤタガラスの説得に、小父様達は従う他無い」
「折角の跡継ぎを?」
「致し方無い、それに…後先を考えぬ我は、稽古三昧から解放されると寧ろ喜んでいた気すらする」
そう云って、軽く笑い顎に指を沿える。
「まあ、ヤタガラスに行けば結局修行の日々だったのだが」
「いやいや、笑い事じゃないですよ」
「もう、過ぎた…遠い日の事だ、もう舞台に立つ事も無い」
その、包帯の下の虚は何を見つめているのだろう。
照らされた遠い昔の舞台か?これから先の奈落の闇か?
「もう一度、来ておきたかった…」
そう呟いた雷堂は、俺の手を握り締めた。
「楽の世界も、ヤタガラスも閉鎖社会だ…我は、結局外には生きれぬ」
「雷堂さん、それは悲観的じゃないですか?」
「だが、今はもう良い…感情に汚染された我は、もう内の世界に居れば」
その指が、俺の指に絡まる。
「もう、帰ろうか…」
「え、舞台は良いんですか?あの人にも別れの挨拶とか…」
「良い、小父様が来る前に帰りたいのだ…そう、させてくれ」
その懇願に、俺は席を立った。
あの人も、いつでも帰れるように此処へ座らせてくれたのだろうか。
雷堂の、帰る場所は本当は存在していたのだ。
いや、もう帰れぬ、遠い世界の様だが。
それにせよ、ライドウが知ったら、きっと機嫌を悪くするだろうな…
あいつは、本当に帰る場所なんて無いんだもの。
俺と同じで。


雷堂の部屋へと帰り、俺は最近そうしている様に
彼の手を握ったまま布団の横に座る。
横になり、雷堂が寝息を立てるまでそうしている。
これで知ったのだが、この人…酷く寝つきが悪い。
不眠症の類だと思う。
実際、数日間寝なくても平気らしかった。
「そんなの身体に悪いですよ!夜は寝て、朝は起きて下さい」
俺がそう云えば、雷堂はこう返した。
「では、安眠の呪いとして君が手を繋いでいてくれ」
仕方ない、とか云いつつ、求められる安心感を俺も感じていた。
その温もりに囚われているのを、分かっている。
暗い、もう帳が落ちた頃なのに…射す光りは、月光だろうか。
遠くに虫の声がする、涼しい風が肌を撫ぜる。
こんなに近くに居るのに、雷堂と俺はあれから何も無かった。
いや、有っても困るのだけれど…
それはある意味、区切りが訪れない無限地獄の様でもあった。
と…指先に、ぴくりと動きを感じてそちらを見る。
「起きてますよね、雷堂さん…寝れないですか?」
「…」
「もう一度、お風呂とかゆっくり浸かったらどうです?」
「矢代君…日中…あの泥眼の話をしてから、君の眼が…気になる」
そう云い、絡めた指先をくい、と引き、俺を引き込んだ。
少しどきりとして、俺は思わず視線を逸らした。
「でも、雷堂さんには…もう視えない」
「だから、傍に感じたい」
「ほ、本当に雷堂さん…ちょっと、待って、待って下さいってば!」
嫌な予感に思わず引き剥がし、俺は動悸を抑えて制止する。
「あの…俺と、その…最終的にはどう在りたいんですか?」
「…」
「雷堂…さん?」
彼の指が、俺の指を引いて導く。
その…右の眼の虚の在る、包帯の上へと。
その、弾力も反発も無い空虚な感触に息を呑む。
「あ…ぁ」
彼が眼を抉るあの瞬間が、脳内にフラッシュバックする。
震え始めた俺の指先を、雷堂は指の腹で撫ぜた。
「どうして…この眼に君を宿してはいけなかったのだろうか…」
「俺、そ…そこまで」
「君の眼には、いつも…君の主が…形だけは、同じなのに」
「別に、あいつは…!」
「君が!」
指を撫ぜていたその行き先が、俺の腕を伝い首へ、項へ移る。
「君が…視るのは…明けた俺で無く…深き夜」
「…よ、夜…ライドウ、ですか」
「君は、夜と魂を契約しているから…明け方の光は受け付けぬか」
「…でも、俺はあいつを憎いです」
そう、苦々しく吐けば、雷堂がするりと右目の上を解く。
ゆっくりと、その虚の上の綿糸を剥がす…
暗い、闇がぽっかりと浮かぶ。
「外気に晒すの、良くないです…」
「見てくれ」
「…嫌、です…俺を…困らせないで」
「我が君を視れぬなら、君が我を視てくれ」
その、虚を見た俺は…身体の震えが止まらなかった。
もうひとつの眼も、晒されては堪らない。
そう思い、ただ震えていた。
「寒いか?」
「…恐い、です」
でも、俺もおかしい…その虚を見て、妙な感情が込み上げる。
俺を映さない眼なら…要らぬと云い切った彼が、恐くもあり…
俺の心を捕らえぬ筈無かった。
「矢代…俺の、好い人…」
そう唱え、項をやんわりと落とされる。
寄せられる唇に、俺はぼうっとして唇を捧げた。
何故、こんな自然にしているんだ。俺は…俺も壊れたのか?
眼の前にきた、その虚を見つめる…
暗い深い闇は、俺を見つめて離さない。
「ん…んふっ」
次第に欲を増す口付けに、俺は息を弾ませながら思った…

雷堂さんを、ひとりにしてはいけない

その彼の心の闇を、俺が埋めてやらねば破滅する…と…




『おい、ライドウ…ライドウ!起きんか!』
聞き慣れたお節介な猫の声が、目覚めの一声となる。
「…ああ、僕…また寝てましたか」
どうも陰陽の均衡が乱れてから、眠気が酷い。
皺になった外套を捲り、着衣を正す。
寝台から起きれば、口に何かを咥えたゴウトが寄る。
それをつい、と掴み上げれば手紙の様だった。
無言で広げて眼を通す。
『何とあるか?カラスの使者から寄越された』
「…名も無き神社へ行きましょうか…どうやら開いたらしいですから」
『平行世界への穴が、か?』
「ええ…さ、参りましょうかゴウト」
刀身の頑丈な刀を帯刀し、銀楼閣を降りた。


先日、刺す様な視線を浴びつつ後にしたその機関本部。
相変わらず薄い警備に、鼻で笑う。
だが、今回は堂々と行く必要は無い。
此処に確実に人修羅が居ると限らないからだ…
これで居なかったなら、とんだ無駄足である。
『どう入るのだ』
「あの離れた処から行きましょうか」
僕の視線を追ったゴウトが、ミャウと鳴く。
『おいおい、高いだろうが…あの窓』
「だからこそ、ですよ」
それに、あの位置…在っても部屋はひとつ。
囲まれる事は無い。
その近くまで、歩み寄り上を見上げた。
ぽっかりと浮かぶ月が、辺りに光をもたらす。
「明る過ぎる」
『行脚には十分だろうて』
「落ち着かないです」
まるで日中の様だ。と思いながら管を抜く。
『ちょっとおお!最近非戦闘中ばっかじゃない!』
怒れるモー・ショボーに、平然と命令する。
「飛ばせる所まで、上に飛ばしてくれ」
『風の通り道ですらないし…っ!足りなくても知らないわよライドウ』
「そうだな、それで全身骨折でもしたらお前が看病してくれ」
そう云えば、その悪魔は急に笑顔になる。
『ええっ、ライドウの看病!? ちょっと美味しいかもぉ』
「分かったならすぐに頼むよ」
急かせば、また膨れ面になったモー・ショボー。
『もうっ!勝手に飛べぇっ!!』
二撃、三撃と打ち上げる風。
それに乗り上昇していけば、当然モーショボーは追いついて来れない。
『ライドウ!』
焦った声のゴウトの尻尾を掴み、管を更に抜く。
フギャア!と鳴くゴウトを無視して召喚したのは茨の化身。
「アルラウネ!」
『了解!あそこで良いのよね?』
みるみる内に伸ばされた茨の蔦が、窓の格子に掛かる。
そのアルラウネの肢体に脚を絡ませ、そのまま壁へと接地する。
茨蔦でぶら下がった状態のまま、アルラウネの頤を掴む。
『どう?ご主人様?』
「完璧」
そう云い、そのぷっくりとした唇に吸い付く。
働きには、当然マグネタイトの対価を与えるのが身上だ。
唇を放せば、うっとりとしたアルラウネの身体の薔薇が咲き誇る。
『あ〜ん!やっぱり貴方のマグって極上!』
「それはどうも、お前の薔薇も相変わらず良い香りだ」
咲いた薔薇の芳香をひと嗅ぎして、笑顔で視線を流してやればくらりとする悪魔。
『おい…っ!いつまでそうしておる!さっさと昇れい!』
その声に、そういえばゴウトを掴んでいたかと思い出した。
蔦をするすると手繰るアルラウネに、しっかりと脚を絡ませれば
ゴウトが怪訝な眼でこちらを見る。
『あまり異性に密着するのもどうかと思うが』
「遊郭ではこれを仕事とする人種も居ますが?」
『それとこれとは別だ』
「なら構いませんよね?」
そう云いニタリと笑んで、アルラウネの乳房にがりりと咬み付く。
のぼせた吐息をつくアルラウネにまで、何故か切れるゴウト。
『お主も翻弄され過ぎだ!全く…!というかお主だライドウ!!』
「だって、女体の方が美味しいに決まっているじゃないですか」
『既に比較対象がおかしい』
戯言を交わす内に、格子へと手が届くまでに昇れていた。
『じゃあ、後はどうするのライドウ?』
「僕が中に入ったら、もう管に戻ってくれて良い」
『了解。ああ、短い逢瀬だったわぁ』
名残惜しげな視線は、遊郭の遊女のそれに似ている。
そんなどうでも良い事を思いながら、格子の上へとよじ登る。
その空から、窓を確認する。
高い位置だからか、鍵すら無い。
簡単に、するすると開いた窓の隙間から中を見る。
暗闇が広がり、射した月光に照らされる物も見えない。
(無人か…?)
警戒しつつ、身を中に移す。
アルラウネが管に戻ったのを感じ、すぐに違う管を抜いた。
淡い光と共に現れたイヌガミに、目配せで命じた。
『話シ声…下階カラ…聴コエル』
「何と?」
『…コノ部屋…十四代目ノ、使ッテイル部屋、ラシイゾ』
「…そう」
しかし、今は不在の様子だ。
『デモ、ソノ十四代目…眼ガ見エテナイラシイ』
「眼が?何故だ…」
『他ニ拾ッタ無駄話ニヨルト…ナンデモ、眼ヲ抉ッタ…トカ』
「抉った?それはまた…ふふ、気でも狂えたかあいつ」
一体何があったのかは知らぬが…それなら好都合だ。
屏風の陰に身を潜め、待つ…
『ライドウ…!』
「分かった、隠し身で命じるまで待機しろ」
そのイヌガミの声に、身体を臨戦態勢にする。

がちゃり

金具の音がして、その音の方向へと視線を送る。
薄ぼんやりと浮かび上がる…人影。
黒い外套、学帽…だが、その眼元を覆うのは白い包帯…
(葛葉雷堂…)
本当に、眼が駄目になったのか。
それも両の眼を覆っている…盲人と成ったのか。
それではもうサマナーなど勤まらぬだろう。
雷堂は、確かめる様に脚を踏み出していき
前に翳した手は、やがて壁へと着いた。
その壁を伝うように、掌を這わしている。
(全くの盲人ではないか…)
その姿に少し驚いたが、不安要素は減った。
どうしようか、背後から羽交い絞めにしてやろうか。
そうしたら、人修羅について問い質し…
雷堂の事だ、庇う可能性が在るな。
そうすれば、口を割るまで嬲ってやるのも一興か…
脳内を巡る思惑に、思わず口元を歪める。
向こうで壁に這わす雷堂は、壁に掛かる物を指先で確かめている様だった。
あの、例の大太刀がその指にかかると、ゆるゆると鞘から引き出している。
視えぬのに、抜き身とは危なっかしい事をするものだ。
そう思い、眺めていた。
屏風の端からずっと覗き見ているのも飽き、その屏風を背に陰へと戻る。
『ライドウ!』
突如、イヌガミの声が、脳内でなく耳に聞こえた。
その声に、すぐ抜刀したが、声が降り注ぐ。

「視えぬと思うて油断したか!」

背が熱い。
音を立てて、花鳥画の屏風がばらりと床に崩れる。
振り返り、刀を翳せば二撃目がそこへ打ち付けられた。
「へ…え、どういう事?心眼?」
じくじくと血を流しているであろう背を丸め、それを受け止め続ける。
「貴殿こそ、不法侵入もいいところであろうが…」
「…不意打ちする奴に、法など関係ないだろうよ…っ!」
がちがちと咬ませた刃を、そのまま床へと流した。
空いた手で銃を抜き、その不可視の筈の彼へと発砲した。
狭い屋内、なので銃はなるべく使わぬ様にと思っていたのだが。
かすれた音がして、その雷堂の眼下がはらりと見える。
白い包帯が捲れ、その覗いた彼の右眼に、釘付けになる…

金色の眼が、彼の其処に在る

身体中の血が、奔流となって脈動する。
何故? 何故其れが其処に、其処に其処に其処に其処に!?
「日向あああああっ」
発砲した銃をそのままかなぐり棄てて、刀を片手に雷堂へ突っ込む。
突き飛ばし、馬乗りになって僕は叫んでいた。
「その眼は、その眼は何だ!?云え!其れが何かを云え!!」
前髪を鷲掴みにし、額を曝す。
口の端を切ったのか、赤く唇を濡らした雷堂が…
笑った。場違いな、酷く柔らかな笑みで。
「矢代君が、くれた…」
その言葉に、血の気が引いた。
「我の眼の前で、同じ様に抉って…差し出してくれたのだ…」
うっとりと微笑み、その右眼の金色に指を沿わせる。
僕は、慟哭をなんとか治めて問う。
「待て、よ…お前に何故、人修羅がそうした光景が視える…なんだ?妄想ではないのか?」
そう、哂って云えば…下の彼は唇を引き結んだ。
「本当に我が心眼と…妄想の中で眼を貰ったと、貴殿は云うのか…?」
雷堂の眼元の指が、その傍の左目に移る。
するすると外されていく包帯の下に…
墨色に煌く眼が、在った。
それは濁っていない、間違いなく…視えている。
「その両眼、駄目になったのでは」
「皆、こうして両の眼を塞げば思い込む…」
「な…」
「我が帝都を放置して、無責任に身体を化石にする筈なかろう」
「お、お前…」

「左は視えてる…右は、元より義眼だ」

つまり…雷堂は、何も以前と変わらない。
ただ、眼に包帯をしていた…だけだ。
「右の傷を見れば分かるだろう…もうこちらの眼は死んでいた」
何故、僕は違和感に気付かなかったのだ。
そうだ、その通りだった。
それだから、仲魔を常に右へ置き、打ち合えば右が弱かったのか…!
「それ、人修羅に云わず…お前は眼を奪ったのか」
「奪ってはいない、彼は自ら我の右の虚へと嵌めてくれた…」
「同情で奪ったのだろうが!」
「何もこうするつもりで抉ったのでは無い…しかしな、彼の哀れみが…!罪悪感が!この身に浴びれるのなら、騙し続けようと思ったのだ…」

なんなのだ、この感覚は。

「彼の眼を、包帯の隙間から垣間見た…!あの…あの罪悪に苛まれた!怯える様な金の眼が!とても、とても!綺麗だった!」

何故僕は黙って聞いている。

「温かかった、矢代の手が、その眼が虚の筈の我の眼に注がれる度に、視えぬ鎖が彼を絡めるのを、はっきりと感ずる!この内に!」

こいつ…は、何を、何を云っている。

「泣きながら!啼きながら!抉ってくれた、容れてくれた!あの瞬間を思い出すだけで口元が歪む、笑みが、自身が抑えきれぬ…っ!ふ、あは、ははははっ!!」

こんな男だったか?こいつは…雷堂という男は。

「抉るなら、取りたいなら取るが良い…ライドウよ…」

こんな顔で哂うのは、一人しか知らない。

「此れをくれた、その事実がかけがえの無い、我の宝物なのだから」

こいつは…僕か?

ここで、抉り出したところで…なんなのだ。
雷堂の云う通り、事実が抉り消せる訳では、無い。
「それに、矢代君に伝えるのなら…伝えてくれて構わぬ」
「お前を、怨むだろうよ、雷堂」
「…貴殿なら解ると思ったのだが、夜…殿」
声を上げていた時のそれとは違う、酷くうっとりとした微笑で…
雷堂はその右眼をまばたかせる。
「憎まれたとして…その憎しみこそ、永遠に我々を結ぶ鎖となるだろう?そして彼の眼がこの身に在る事実が…それを鮮明にする」
「お前、何を云っている…」
「反して…憎まれず、更に同情を買うのなら…今度は何処を欠損させようか、と、普通に妄想する我が恐ろしい…!」
口元を押さえ、歓喜に震える雷堂から、伝わる…
どくり、とマグネタイトが感情で溢れている。
「次は振りでは無い、彼が哀れんでくれるのなら、偽り無く何処でも差し出そう!その度に彼は、その箇所を、肉をくれる…」
「あれは…僕の…悪魔だ」
「一体…何処までなら、差し出してくれるのか、知りたくない、おぞましい…浅ましい!!だが…我は…本当の我は知りたい!知りたくてしょうがないのだ!!」
「あれはお前の悪魔では無い!!生殺与奪も身体も魂も僕のものだ!!」
その口を黙らせたくて、刀を翳し振り下ろす。
月光を反射させる刀身。
それで煌く、金色の眼をまともに見てしまった。
「…っ」
切っ先が、彼の眼前で止まる。
(ち…がう、こいつは、功刀矢代では、無い…だろうが!)
その金色の眼に、制止させられたかと思うと…気持ち悪かった。
馬鹿ではないか?何を躊躇うのだ?人修羅であったとしても、殺せる筈。
何を躊躇したのだ?いつも半殺しくらい、容易くやってのけるのに。
まさかそれより先に行けぬのか?僕は…
いいや、それよりもっと感じる予測に憤りを感じる。
「貴殿も分かるだろう…平行世界の分身を消すことが、良い影響をもたらさぬ事くらい…」
雷堂が、落ち着いてそう呟く。
そう、そのまま、そう感じていた。
互いに…憎くても、殺せないのだ…僕と、この男は。
だが、僕はこのまま雷堂を五体満足で返したくなかった。
「く、くくっ……ギリギリ、なら大丈夫だろう?」
沸騰しきって麻痺した脳内が、身体を動かす。
そう、殺す、殺す寸前で止める。
首の皮一枚で…!
そんな暗い感情が、迸る。再度刀を、振り翳す…!
「サンダルフォン!!」
「何!?」
その雷堂の号令に、思わず背後を振り返った。
イヌガミが疾風に弾かれ、こちらに飛んでくるのが視界に入る。
避ける間も無く、そのイヌガミをぶつけられ壁際まで弾き飛ばされた。
「が!あっっ!!」
背の傷から、滴った血が床を汚す。
『ラ、ライドウ…スマヌ、アノ天使…巧ク隠レテイタ…』
「…ち…っ!」
棄てた銃を拾いに、その場へと駆ける。
「葛葉ライドウ!彼の…魂を使役するは、我ぞ…!それだけ刻め!!」
銃を取った瞬間、更なる衝撃が身体を巻き上げる。
この狭い空間では避ける事すら不可能な、突風。
「ら、雷…堂っ!」
「またいずれ…十四代目葛葉ライドウよ…貴殿が刀を抜くなら、我もそうしよう」
その言葉を合図にして、窓に向かってなだれ込む風。
「っああ!!」
イヌガミと、一緒くたになって窓に叩き付けられる。
びしりびしりと亀裂が入ったかと思えば
あっという間に格子も折れ、僕の身体は宙に投げ出された。
『ライドウ!』
追って飛び降りてくる黒猫の声にハッとし、ぼやけていた頭が晴れる。
管を引き抜き、イヌガミを戻したと同時に口で引き抜く。
地面に激突する前に、召喚したツチグモの背でなんとか受け止めさせた。
軋む背に、痺れを感じながら…考えるのは人修羅の事、だった。
あの雷堂の口調…もう、元の帝都に還っているのか…
『おい…あの雷堂…何故あの様な事に?』
「さあ?薬で頭がいかれたんじゃないです?」
辺りでうろついてるであろうモー・ショボーの影を探す。
『人修羅に、奴の眼が視えていた事は云うのか?』
ゴウトのその台詞に、探す事を中断して、ゆっくり振り返る。
「…憎しみまで取られたら、僕には何が残ります?」
『…』
「憎しみまで雷堂に奪われては、堪らない…」
燃え立つ、内で暗く、燻る感情が。
雷堂のあれを、狂っている…と云いきれる筈があろうか?
僕とあの男は、やはり…根底にあるものは同じなのだ。
「あの眼が本当に人修羅のか…確かめなくては」
『お主も…もう虜…ではないのか?』
「ゴウト、召喚師としての僕をあまり侮辱しないで頂きたい」
ツチグモの上で体勢を立て直す。
背に奔る痛みに、一瞬食い縛る。
「っく」
あの、鞭の傷が浅く開いていく感触が、ぴちりぴちりと
塞がりかけの傷口が、ぱくぱくと呼吸を開始する感触が汗を滲ませる。
『背の呪いも解けぬうちに挑む奴があるか…』
ゴウトの言葉を流して…沈黙のままツチグモを走らせた。



破れた窓から、自身の影を見下ろした。
そのまま地に叩きつけられ、潰れるとは思っていなかった。
そんな軟弱な思考はしていない。
我が話していた時の、あの猛獣の様な眼が…今思えば恐ろしい。
純粋な殺意、不純物の無い、美しい殺意。
『おい、派手に散らかしたではないか』
「業斗…!すまぬ」
ギイギイと揺れる扉の隙間から、黒猫がすらりと現れる。
「もう肉体は大丈夫なのか?」
『ハッ、お主の茶番をいつまでも放置する訳にいかぬからな』
ピンと立てた尾をそのままに、我の傍に寄る。
その翡翠の眼が、恐らく…我の右眼に注がれている。
『人の身には、その眼球の魔力はキツかろうて…何故無理して嵌める』
「…これが、罰…だから」
そう答え、落ちた包帯の中に在る、左眼を覆っていた眼帯を拾う。
其れを今度は右眼に掛けた。
『おまけに、外出先で芝居小屋に行くのは許可しておらぬぞ』
「聞いたのか」
『従者が常に見張っている事くらい承知だろう』
それもそうだった。
視えぬ振りのし過ぎで、どうやら視えなかったらしい。
バラバラになった屏風の上に飛び乗り、業斗が啼く。
『お主に親なぞ居らぬ、還る事は禁じられているだろうて』
「小父様に…会った」
『聞いているのか雷堂』
「一曲聴いていきなさい、と云われた」
『おい』
「跡取りもせず、逃げた俺に、笑って下さった…」
あの瞬間だけ、視えなければ良かった。
『明では無い、お主は雷堂だ!』
「知っている…もう、茶番は終いだ、舞疲れた…」
転がる太刀を拾い、鞘に納める。
「明朝、皆の衆に謝罪しよう…そして元以上の働きをしようぞ」
業斗にそう云えば、ふっと鼻を鳴らした。
『お主が義眼だったと知るのは、俺を含め数名だけだったから今回の様な戯れた真似が出来たのだ…分かっているな?』
「ああ…もう、夢は醒めた」
そう、醒めた。
この右の虚に、彼が居るから、もう現を歩ける。
(小父様…この不貞な息子を御赦し下さい)
狂った舞を、きっとこれからも隠れて舞うのだろう。
能面も無く、扇も無いが…
嫉妬に狂った、この己の面が在る。
金泥では無く、暗く輝く金色の眼が在る。

(嗚呼、まるで我が泥眼…)

明けていく窓の外を見て、掌を陽に透かす。
其れを扇に見立て、ひとつ舞う。
咎める業斗を聴こえぬ振りで、舞う。


君の心を縛った我の罪を
この身に受ける魔の力で罰としよう
屍になるまで舞おう
君の心に立てるなら

泥眼に遮眼帯(後編)・了
* あとがき*

はい、眼球移植です(一部の御方には読める展開)
しかし、元から義眼という設定は少し特殊では…
あんな傷が眼元に残っていれば、そうではないかと。
人修羅も結構簡単に身を捧げてしまう辺り、病気が染ったのかと。
雷堂の過去…もう捏造が半端じゃないですが、なかなか似合ってると思います。
気品が在るのです、雷堂には。
ライドウは、強かに生きるしか無い、そんな人生を歩んでいます。