※徒花本編の雷堂END後の話です。更に雷堂も人修羅も精神的に壊れてきております。
SS『初夏のRhodonite』既読である事をおすすめ致します。




秋空に空蝉

 

「随分蝉の声も遠くなったなあ」
鳴海が呟き、食後の珈琲を啜る。残暑の熱が尾を引くのか、冷製珈琲だ。
割った氷がグラスの中でくるくると回る。
「秋頃まで鳴いてたら、きっとニイニイゼミだな」
「鳴海さん、詳しいんですか」
「おぅ、だって俺のガキんちょの頃なんか昆虫採集とかしか娯楽なかったもんね」
「俺、蝉苦手で…蟲嫌いだし、そもそも煩いですから」
「まあね、暑っ苦しい中ミンミン集団で鳴かれちゃ堪らん時も実際あるな」
くい、と氷を残し、珈琲だけを啜った鳴海がグラスを金閣寺の横に置く。
微かな振動、しかし密接に組まれたマッチ棒の建造物は揺らがなかった。
「でもさ、長い間眠ってて、いざ外に出たら短命だぜ?そりゃ必死に鳴きたくもなるだろうさあ」
「煩くしたら疎まれるのに」
「人間の為に生きるんじゃない、自分等の世界に生きてんだよ……おっと、勿体無い」
云うなり、グラスの氷を口に頬張る鳴海。
少し呆れて、人修羅が小さく微笑む。何処か寂しげな表情、もうずっとそうだった。
「折角氷買ったのに、水にしたら勿体無いもん、なあ?ライドウ」
瞬時に考える、“彼”なら、どう答えたかを。
「そうですね、十八番のつまらぬ洒落でも云ってみればどうです?凍ってくれるかもしれませんよ」
「な、おま本当酷いよなぁ〜…」
氷をごりごりと噛み砕きながら、盆を持つ人修羅に今度は矛先を向ける鳴海。
「慰めて頂戴よ矢代君〜ライドウが苛めるぅ〜」
「ど、どうして俺が…」
眉を顰めた人修羅は、空のグラスと盆を抱えて水場に向かう。きっと鳴海から逃走したのだ。
木戸の隙間から、片したそれ等を洗う彼の後姿が見える。
浅黄色の薄手の着物袖を、襷がけで捲り上げていた。
女性の人間ならば、きっと良い貰い手が多く居たろうに…
「なあ、ライドウ」
と、机からの声に、その思考を中断させられる。
「はい」
「お前さ、最近…矢代君と喧嘩でもしてんの?」
「喧嘩?毎日それに近いのは、此処に連れて来た当初より、でしょうに」
「いやさ、そうじゃなくて…何か、お前、妙に冷たいよ…あの子にさ」
ああ、それは意外だったな、少し冷酷になり過ぎていたろうか。
どうにも、ライドウが此処ではどの程度寛げていたのか、推し測るのが困難である。
「鳴海さん」
「あ、ご苦労様、いつも御免ね」
「いえ、氷、まだ有りますから」
「そう、んじゃ果物も冷えたの喰えるよねえ?」
「分かりました…明日は何か買って、入れておきます」
「やったぁ〜い、矢代君だぁーい好き!おにーさんのお世話ずっとして頂戴な」
「ちょっ、放して下さいっ、俺まだ用事あるんです」
眼の前の一歩的な戯れから視線を外し、帳面に戻す。
ライドウの受けてきた通りの間隔、乱さず遂行する義務。
己に鞭打つかの様に、依頼をひたすら請け続けるのだ…
(一体彼は何時、鍛錬していたのだ)
我の様に中途半端な時期からの訓練では無かったのであろう、里で育ったなら。
ただ、それだけの為に生かされてきた事は…あの強さから窺えた。
彼の眼光は常に敵を捉え、次の動きに転じるまでの型を身体が自然に取っていた。
我の振るった大太刀をひらりとかわし…天使の羽を斬り削ぐあの冷然とした一閃。
それがこの身だという事を、思い直しては不安が過ぎる。
何も、真似出来ておらぬのか、と。
「すいません鳴海さん」
「いやいや、気を付けて行っといで。最近またこの辺物騒になってるから」
「…誰も俺なんか狙いませんよ」
扉の閉まる音。消えた人修羅の気配が階段に移り、銀楼閣から抜ける……今、出て行った。

(今、何時だったろうか)
(月齢はどうだったろうか)
(彼の呑んでいるマガタマは何であろうか)
(何処に向かったのだ)

「ライドウ」
は、として、指先を見る。
「気になるなら、追えば?」
葉巻を噴かす鳴海が、マッチ棒をからから転がして我に云う。
気付けば、帳面を捲る指先は完全に静止しており…指摘を受けて当然だった。
「悪魔ですか?大丈夫ですよ、アレには一応見えるのですから…逃げるくらい出来るでしょう?男児ですしね」
「お前、本気で云ってるのか?軍人だって殺されるんだぞ」
「それは見えぬ者だからですよ」
マッチ棒が止まる、持つ鳴海の視線が我を刺す…が、それは真摯なものであり、嗜虐の気は感じぬ。
「尚更だろうライドウ…あの子がお前と同じ世界に居るんだったら、大事にしてやりなよ」
息を呑んでしまう、その穏やかな言葉に。
帳面の頁を掴んだままの我の指先に、一瞬震えが奔った。
「お前があの子を此処に連れて来た時…俺は正直お前のお遊びかと思った」
「今だってそうですよ…」
「あの子がお前の奔放さに堪えかねて、きっと出て行くと思っていた…」
葉巻の煙は、薄く開いた窓に流れ往く…
「でも、あの子は今も此処に居る」
「他に行き場も無いからです」
「お前が呉れてやったんだろ?此処を、さ」
嗚呼…止めてくれ…同じ姿でそんなにも優しい言葉を吐くのは…
気が解されて、骨ごと抜かれ、泣きそうになる。
「ボコし合いの毎日が駄目とは云わないけど…ま、一線だけは越えるなよ?」
どきりとして、思わず即座に返す。此処が、我と紺野の違いだろうか。
しかしどうして、問わずにはおられぬ。
「それは、肉体関係の事でしょうか」
「…えッ?」
違ったか、それとも恍けたか。軌道修正せねば…
「フフ、失敬……少し、見回って参ります、ついでにアレも引っ張り戻しましょう」
「うん、そうしてやりな」
立ち上がり、書棚に閉じた帳面を入れる。この世界のこの棚には、あの写真立ては無い。
傍に置いてある装備一式を纏う最中、マッチをうねらせ積み上げる鳴海が呟いた。
「なあ、ライドウ…」
「はい」
「矢代君てさ…キリシタンだったのか」
その単語に連結する…銀色の鎖の様に。彼の首から提がるロザリオが脳内に浮かんで消えた。
鳴海は見たのだろうか?確かに、あの着物の衿から垣間見えるかも知れない。
「さあ?どうでしょうね」
「俺、今まで失礼な事云わなかったろうか」
「それを云うなら鳴海さん、僕の職業こそ冒涜でしょうに、クス…」
大太刀よりも薄い、軽やかで鋭利な刀を帯刀する。力の入れ方を違えば折れる、神経質な刃よ。
「では、行って参ります」
「ん、お前だって、強いからって油断するなよ?」
見送る言葉のひとつさえ、違う。
あの鳴海なら、きっと同じ笑顔でこう云うのだろう。いいや、云っていた。
“血塗れで帰ってきたら、此処まで上がるなよ、汚いからさ”






『ちょっとおライドウ!最近偏り過ぎで、ショボーつまんなぁい!』
「選り好みするなら、今直ぐ里帰りしてくれて構わないが?」
『ぐぬぬ…っ…そんな辛辣なトコが、ス・キ』
幼い色目をたっぷり使ったつもりでいるモー・ショボー。
うきうきとはしゃいで、舞踏する足下には天使族の崩れた肉が有る。
『ねえねえ、でも最近テンシばっか。元から嫌いってのは知ってたケド…』
「煩いねぇ…勘繰る女は殿方に嫌われるよ」
『んん〜ん〜っ、もぅ!イジワル!』
「却下、今のではペド・フィリアにしか効果は無い」
『むきぃいいいッ!どぉーせアルラウ姐さんみたいなむっちんぷりんにゃ程遠いですよぉーっだ!』
あかんべえをしてから、我の学帽をぺしりと翼の髪で叩いたショボー。
それを軽くあしらい、路地裏からするりと街路に戻る…異界から、緩やかに這い出る感覚。
何もそ知らぬ帝都人達が、様々な姿で行き交う陽射しの下に来た。
夏も終わりとは云え、まだまだ暑い。我の重苦しい姿に振り返る者も、少なくなかった。
『ねね、最近そぉいえばアルラウ姐さん出さないのね』
「丁度お前が見てないだけだろう」
『なんかちょっと前の面子が懐かしいなあ〜』
「僕の召喚選出に文句でも?」
『んん〜違うチガウ!それにショボーはヤシロ様が居ればノー・コメント!』
「ノー・プロブレム、だろう…語学者の脳味噌でも吸ったらどうだい?」
『あっ、居たわよほらほらライドウ!あそこ!』
やれやれ、と溜息のまま指す方角を見やれば、確かに居た。
上空から捜させただけあって、思ったよりも早く見つかった。
『んもう!あーんな無防備じゃいつ脳に嘴ぶっ刺されるか分からないわよ!ああもぅヒヤヒヤしちゃう!』
「もしその痕跡が有ったら、間違いなく犯人はお前だな」
『そんなライドウに殺されるよーな事ショボーはしませぇん、ライドウとヤシロ様の両手に花状態が一番な・の』
「フフ、色餓鬼め」
どうしてこうも享楽的な悪魔ばかり集めれたのだろうか、やはり夜の人格が惹き付けるのか。
以前より応酬には慣れたものの、稀に我を忘れそうになる、それが堪らない。

(何処へ向かうのだ、こんな暑い陽の下)
(君の白い肌が、日焼けしてしまう)
(あんなに項を紋抜きして…よからぬ輩を引き寄せやしないだろうか)
(その着物は、ライドウが買ったものだろうか)

嗚呼、君への想いが止まらぬ。
思っていたよりも、狂う事無く季節は廻り…そろそろ人修羅と出逢った秋の頃となる。
落ち葉を踏み、君と歩んだ我の世界の帝都が…今となっては遠い追憶の様だ。
『ちょっと、お屋敷ってどーゆうコト?』
ショボーの声に見渡せば、洋風の屋敷の麓で…門の前に佇む君が居た。
『ねえねえライドウ、あのお屋敷知ってるの?』
紺野なら…知っていた、かも知れぬ。
「人修羅が粗相せぬ内に、挨拶でもしてこようかと思うよ」
下手な事は云えぬ。ホルスターの管をカツン、と指先で叩いて合図する。
『はぁーい…ちぇ、いっつも二人だけでズル〜イ』
「童には宜しくないのでね」
『えっち』
それだけ云うと、疼いた眼で管に還るモー・ショボー。
何を想像しているのか知らぬが、そう遠くも無い気さえする。
この姿になってからというもの、我は箍が外れた様に人修羅に欲をぶつける様になったから。
(薔薇園…か?)
裏手だろうか、屋敷の大きさの割に狭い門、それも鉄の格子のみ。
人修羅は何をするかと思えば、その門の上の細工に指を絡ませ…腕にぐ、と力を込めた。
その流れに予感がして、我は即座に外壁の角に隠れる。
呼吸を失くし、胎内から廻るMAGの能動を意識的に留める。
(此方に視線を送っている…)
あの綺麗な眼が、警戒を寄越しているのだろう。本当はそれを全面に受け、見て欲しい。
だが、今この身体は、この立場はそれを赦さぬ。
大事なのは、ライドウとして人修羅の勝手な行動を追跡する事、それだけなのだから。
(大丈夫だ、空気に融ける事は容易い)
沈黙…遠くの蝉の声が、鳥の声に交じり輪唱している…
その静かな水面に一滴零れたかの様に、魔力の余波が肌に感じられた。
(人修羅としての気配……擬態を解いた…?)
直後、ギイ、と錆付いた音がして、覗き見れば君の影は消えていた。
恐らく、門を乗り越えたのだろう。悪魔の力なら呼吸をする様に楽な筈。
(此処は…不法に侵入しているのか?矢代君)
彼にしては不穏な行動に、少し警戒しつつ、そっ…と門より覗き見る。
荒れた庭だ。薔薇という事は判るが、伸びに伸びた蔓荊が縦横無尽に駈け巡っている。
その先端から瑞々しさを失くし、色褪せた花弁が申し訳程度にぽつりぽつりと咲いていた。
こんな寂しい庭園に、一体何の用事が有る?
怪訝な想いで見つめれば、艶やかな斑紋をその指先に宿した君が、徐に荊に向かって差し伸べる…
(何をしている)
萎れかけとは云え、荊だ。それが入り組んだ垣根に、ずぷりと腕ごと突っ込んだ人修羅。
食いしばった表情で、その腕に痛みが奔った事を理解する。
(やめろ、止めるんだ矢代君、君の腕が、指先が)
抜いて、案の定赤く染まった腕が彼の視線の先に。
その己の腕をぼうっと見つめた後、人修羅はふらりと歩み始めた。
朽ちた木製ベンチの傍を通り、上から枯れた枝葉を垂らすアーチの下に移る。
この門の外から、なんとか見える範囲で、安堵の様な不安の様な。
やがて、上からの荊を一枝、指先に捕らえた人修羅。
アーチの傘の下、その渇いた枝先を…恐る恐る、震えながら
(馬鹿…!)
薄く開いた唇の隙間、その闇に投じたのだ。棘だらけの薔薇の先端を。
瞼を閉じ、がくりと膝立ちになった君から、まるで薔薇が生えている様に見える。
この暑さも手伝って、混濁してくる脳内は、その景色すら甘露に魅せる。
だが、決して赦されはせぬ。薔薇にとて、君の血を吸わせたくは無いのだ。
一体、何の理由が有って?
「あ…ふ」
人修羅の唇から天に昇る荊に、じわりじわりと赤い輝き。
葉脈を流れるその瑞々しさには覚えがある。
マガツヒ、だ。
MAGとも少し違う、魔力と云うよりも、生命力そのものに近しい赤き光。
思わず息を呑む。
君の唇から伸びる蔦が、艶やかな緑に染まる。葉の白けた表皮が光沢を得る。
君の頭上だけに、まるで極彩色の傘が開かれたかの様な光景。
大きく抜かれた衣紋から出る角は、微かに震えていた。
(己の生命力を削ってまで、其処に何が有る?君にとって、其処は意味を持つ場所なのか)
此方の世界は分からない。君のすべてを知っている訳ですら無い。
そのまま、この薔薇園に君が吸われてしまうのではないか?不安で居てもたっても居られぬのだ。
赤い薔薇が、まるで君の血を啜ってそのまま染め出したかの様な、綺麗な色で咲く。
上からはらり、はらりと散る赤が、人修羅の黒髪にそっと触れる。
「ぅ…」
厳かな呻き。
「…ぁ…んぁ、ぅ」
咲き乱れる薔薇の、毒々しいまでの薫りと、君の声。
心臓が落ち着かぬ、紺野の心臓だというに、嗚呼、落ち着かぬか。
「は……ぁ…は…」
荊に浸食される君、活力のままに伸びる蔦。その黒い斑紋はアーチでは非ず。彼に絡むな、頼むから。
君は、このまま薔薇に喰われたいのか?
「よ……よ…る…」
その声の発した単語に、ぞくりとした。
いつの間にか、袴を石畳に流す君。角は形を潜めて。擬態している…人間の姿に。
斑紋で判り辛かった頬の色、薔薇の様に高揚して、染まっている。
「んっ…ぁ…あっ、あふ」
荊に忘我状態でしゃぶりつき、血の混じる唾液すら零して。
(何をしている)
その柔らかな指先は、袴の脇に差し込まれ…
(何を、その指先で)
己の下肢を虐めているのか、まるで彼にされていた様に。
「夜…夜っ」
(何をその口先で)
此処で、此処でされたのか?君は。
溢れんばかりの薔薇の薫りの中、君の痴態はあまりに毒で。
興奮する胎とは真逆に、沸騰しそうな憎しみが脳内を埋め尽くす。
嗚呼、君は、君は何故、この肉体を求めぬ!?
器ですら、縋ってくれぬのか!?
「は、ぁ、ああ、ぁ――」
君の声が上擦る、薔薇が一層赤く開く。
その瞬間、鉄格子に感じる門を、力の限り握って揺らす我が居た。
「何をしているんだ矢代!!」
瞬間、眼を見開いた君…が、がくがくと浅く開いた脚を揺らした。
直後、だらりと弛緩した様子からして…達したのだろう。
荊がずるりとその赤い唇から抜け、だらんと垂れ下がった。
すれば、ゆっくりと枝葉は艶を失くし、人修羅の頭上の絵画は劣化して往く。
君という養分を失った薔薇のアーチは、彩を失くした。
「……覗きかよ……悪趣味…変態野郎…」
ぜえぜえ、と、かすれた声のまま、小さく君が呟いた。
その視線は、今だ天を見つめたまま。
「変態はどちらだい」
抜刀し、眼の前の鉄を裂いた。鍵など、最早構ってられるか。
此処が誰の占有地だとか、既にどうでも良い。
この肉体では慣れたヒールで、横たわるままの君に詰め寄る。
「青天井を見ながら御愉しみかい、随分君も大胆になったねえ?」
腕を組み、上から見下ろす。乱れ髪の君。袴の帯も、緩んでいた。
嗚呼、疼く、欲してしまう。先刻呼ばれていたのは、この肉体ではないか。
このまま、喰ろうても、人修羅にとって本望では無いのか?
たとえそれが、“我”を欲しておらずとも…衝動の欲は、消せる筈。
「右手、出して御覧よ」
「…」
「ほら!」
袴に差し込まれたままの右腕、その肩を、刀の切っ先でずぐりと刺した。
「ぐゥ…ッ」
筋が引かれ、びくびくと跳ねた腕。くい、と切っ先を捻れば、呻いた君は己の眼前に指を差し出した。
ぬらりと光る白き蜜の薫り、毒々しい薔薇のそれにも似て。
「ねえ、僕は此処に居るよ?何故独りで、それもこんな場所で求める訳だい?」
抜き取った切っ先を睨み、汚れた指を懐から取り出した手拭いで包もうとする人修羅。
それを咄嗟に制して、濡れた指を掴み上げた。その勢いのまま、君の腰に跨る。
「やめっ」
嗚呼、やはり甘い。きっと周囲の薔薇蜜よりも、ずっと極上。
「やめろ、やめてくれ…もう…」
指先の、一本一本を。爪先に溜まった雫まで残らず啜る。
舌先で指の腹を撫ぞれば、君の脚がひくりと痙攣する。
「は、む…っ…ふ、ふふ、美味しいよ、功刀君」
「な、ぁ…あんた、どうして…」
泣きそうな声で、虚空を睨むままの君が、ようやく我の眼を真っ直ぐに見た。
「どうして此処の世話しなくなったんだよ」
その問いに、答える術は無い。
いいや、依頼の記録を見れば、載っている可能性は高い。
だが、それを取り繕う気は、無い。
「如何して?そんなのは僕の勝手だろう」
「あんなに、しっかり剪定してたじゃないか…」
「最近依頼が立て込んでてね」
「あんたは依頼を云い訳にしない!」
「何故僕を決め付ける?君の知る僕はたかが数年だろう?」
「なあ…アルラウネとの契約はどうしたんだ」
「ああ、最近呼ばぬからね、破棄しようか?彼女との契約は」
わなわなと震える君は、そのままくたりと脱力した。
傷ついた唇の赤さに、吸い付きたい衝動が止まらない。
陽射しは真夏より薄らいだというのに、この熱は何処から来る?
以前、あんなにも欲していた肉。幾度貫いても、欲望が消えない。
それは、この肉体と魂が直結しておらぬが故だろうか…
苦しい、苦しいのだ、いくら欲を満たそうとせども!
「君は何故此処を咲かせたかったの?ねえ、お答えよ」
だらしなくなった着物の袷に指を掛ける。
無言の人修羅の首に掛けられた十字架を、握り締める。
「ねえ!」
「あが、っ…か、かは…っ」
ロザリオの鎖を捻れば、君の首は絞まる。
千切れんばかりに、強く、強く捻り上げる。
「僕の事を最近避けているのは君だろう!?」
「が、ああっぐ、あ」
「昨晩も、その前の晩も、毎晩の様に犯してやっているだろうが!!」
「ひ、ひぎっ」
我が壊れる前に、君を壊してしまえば、ばれないと思った。
止まらない、殺してしまいそうに。君を糾弾したい。
嘘吐きと罵られるより、浅ましい我を見られるより。
縋られるこの、ライドウという空蝉を纏って、今だけは君の主人で居たくて。
「如何して過去の僕を視て快楽を得る!?」
「た…」


悔しい


「助け…ぁ…明さ、ん」
銀の鎖を掴む指先が、凍った。
人修羅の唇は、我を呼んだ…聞き違えたのでは無い、間違い無く、我の名だった。
それは、放心状態からの叫びか…ロザリオから連想された悲鳴か…
それとも…
「アレの名前を呼ぶな!」
「う…っ」
確信したの、だろうか――…この肉の、中身を。
(まさか)
人修羅の頬を強く叩いて、呼吸を落ち着かせた。
君を喰う筈が、名を呼ばれてから、下肢はゆるゆると力を失っていた。
恐怖に背筋が強張る。
まさか、だから、だから君は…
夜の記憶が強い此処で、咲き乱れていたというのか?
夜毎掻き抱くこの我は、夜に成れておらぬのか?
夜にも成れない我は、どうすれば良いのだ?
「死んだ男に救いを求めるなんざ、愚かしい」
呟いて人修羅から離れる我こそ、愚かしい。死んだ男に恐怖する我こそ…
「おい…あんた…」
下から、這い登ってくる君の声。
「どうしてさっき、殺さなかったんだ」
冷たく、それでいて泣き出しそうな君の声。
「雷堂…明さんの名前出したら、更に絞めるよな、あんたなら」
「何が云いたいのだい」
振り返り、平然と哂う。夜のつもりで。
「殺したら勿体無いだろう?あんな労力を費やしてまで取り返したというのに」
ライドウは取り返せておらぬだろうて……この肉体に呪われそうな言葉を吐く我。
「君の好きにして良いよ、この薔薇園」
軽く掌を振り、唇を吊り上げてみる。
「僕にとって、今は何も意味を成さぬから」
「あんた、此処の娘さんの事、好きなんじゃなかったのかよ!!」
紺野が好く人間?まさか。居たというのか…?
「好きなら世話をしている、と云いたいのか?」
「だって…っ」
泥を塗ってやろうか、貴殿に……夜。
「飽きたんだよ、彼女にも、此処にも」
完璧主義者の貴殿らしからぬ、契約の破棄。
気分屋で高飛車な彼とて、悪魔との契約は強固だった。我にはそう見えた。
その“契約”という絆に縋っていた君と彼を…引き離す。
「飽きた…だと」
よろめきつつ、崩れた着物と一緒に己の身を抱く人修羅。
肩口は、先刻我が刺した所為で、赤く染まっていた。薔薇の様に。
「飽きたら…放置かよ」
「悪いかい?僕が世話すると決めた。辞め時も僕が決める」
「好きだった気持ちは…そんなに簡単に消えるんだ、あんた」
消える筈無い、現に、此処に居る。
「僕はもう、誰も好きになぞならぬよ…恋慕の情ではね」
この肉の中身は、魂は、君が好きなのだ、矢代君!
魂のみとなって尚、薄らぐ事すら無い、この情は、どうすれば良いのだ!?
気付いてからというもの、君との日々はあまりに一瞬で。
「…そうかよ」
「君も、僕に飽きられて破棄されぬ様、せいぜい役立ってくれ給え」
「あんなに…必死になって雷堂さんと戦ってたあんたも、いつか飽きれば消えるのか」
紺野の最期の言葉が、耳鳴りの様に脳髄を軋ませる。

“…渡す……ものか”

貴殿が最期、唯一求めたのが…誰だったかを。
知っていて、覆す芝居を打つ。
どうだライドウ…紺野夜。我は貴殿と違い、人修羅をここまで求めているのだ…
貴殿と違い、醜さを晒すを恐れ、震えながら芝居をしている。
叫ぶだけ叫んで、甘い蜜を吸い、結局は云い訳している。
(最低…だろうて…)
ベンチの傍を通過し、来た道を再び踏みしめる我。
と、その前に躍り出る影があった。我を睨み、怒りに震える愛しき君だった。
「好きにしろって云うなら、好きにしてやるよ!」
ぶわりと浮かび上がる斑紋。その瞬間散った君の涙が、夏の空に蒸発する。
舞うかの如き君の両腕には、相も変わらず猛々しく…そして美しい焔が宿っていた。
血に濡れた腕を、薔薇に叩き付ける人修羅。
「ぅぁあああっぁぁあっ」
幾度も幾度も、叫びながら。
小火騒ぎにすら発展しない内に、枯れて尚も荘厳だった薔薇園は
一瞬で灰燼と化した。





『おい、聞いておるのかライドウ』
この世界の童子は、尾をあまり真っ直ぐ立てぬ。
「ええ、薔薇園の焼失ですよね」
『屋敷の者は何と云っておったか』
「“お嬢様は既に葛葉様に庭を譲られておりました、あの跡地もどうぞ御自由に”…との事」
『ほう、身投げする以前より、権利をお主に譲渡しておったか』
「らしいですね、まあ、僕は要りませぬが」
哂ってそう云えば、じろりと翡翠の眼が我を見つめた。
『…燃したのは、お主か』
探るその声音に、失笑してみせた。
「まさか、僕には燃せませぬ」
『…“燃させた”の間違いだったか?ライドウよ』
業斗ほど斬り込んでは来ないが、痛い所ばかりを突いて来る。
恐らく、この童子はライドウの事を可愛がっておらぬ。
「さあ?」
いつからか、はぐらかす時に哂う癖が自然とついた。
先刻訪れた、あの屋敷の人間にも…まるで知っていたかの様に対応した。
いいや、あれから依頼の記録をざっと目通しした事もあって、滞りなく流せた訳だが。
『そうして面倒事は消失させるのか、成程な』
「いつまでも面倒を見てられませぬ」
『人修羅を棄てる際、巧く棄てろよ』
階段を上る脚が、一瞬止まりそうになる。
「ええ、勿論に御座います、童子」
が、進む。止める訳には、いかぬのだ…彼ならば、きっと動じないから。
『拗れては困る、人間に牙を剥く恐れがあるでな…では、我は一眠りする』
「フフ、残暑の暑さで髭も草臥れておりますよ」
『煩い、さっさと行け』
藺草の座布団に寝そべる黒猫。編まれたその寝床は涼やかだ。
“寝苦しいだろう”と、人修羅が近所の雑貨店で見繕った物だそうだ。
(それだと云うに、童子は棄てる事に何の躊躇も無いのか?)
人修羅の童子に対するそれは、優しさとは違うかもしれぬ。
人間としての時間の潰し方の一種…その様な意味しか持たぬのかもしれぬ。
(いや…巧く棄てろ、というのは…人修羅への同情も含んでいるのか…?)
この世界のヤタガラスは…何か、おかしい。
信念と云うよりも、何かに縛られ、動くを命じられるかの様な。
傀儡だった我が云えた事では無いが、紺野こそ…此処の童子こそ…人形、だったのではないか?
他を信用せぬ生き方をさせられて来たのか…情を素直に受け止めれぬ者達ばかりだ。
「あーっ!ライドウ!ちょっとちょっと!」
思想が迷宮入りしそうな瞬間、事務所の中から聞こえてくる声。
扉越しに居る事がばれているのか、仕方ないので溜息しつつ、中に入る。
「どうしました鳴海さん」
「新作完成したよおお!ちょっとうねり加えてみたんだけどさぁ〜ホラ見て見てって!」
その騒ぐ当人の机を見れば、金閣寺では無い形のマッチ棒建造物。
近付くと、確かに細かい。
「円通三匝堂ですか」
「ええ?そんな名前だっけ?さざえ堂じゃなくて?」
「それは通称です、正式名称は円通三匝堂と云うのですよ」
六角形を層の様に重ねた、奇妙な造りという事は知っている。
二重構造の螺旋階段が、他者とのすれ違いを生まずに往き来させるその内部。
「いやー小さい頃行った事あってさ、蝉の煩い時期でねーまたそれが」
「内部反響が酷そうですね」
「そ!やっべ耳潰れるぅ〜!って、思う反面“此処一帯に超大量に蝉居るんじゃないの?”って興奮した訳」
笑って葉巻に火を点ける鳴海。椅子に腰掛けて、ふう、と煙で新築を包み込む。
「でさ、早朝の鳴き始める時間帯に、旅館抜け出して網持ってその辺行ったら…」
朝霧立ち上る光景に錯覚した…紫煙に巻かれるマッチ棒の円通三匝堂。
「んまぁゴロゴロ死んでる訳だ、道端、参道、到る所に蝉の死体がな」
「鳴いた傍から死に逝く様な蟲ですからね」
「あんな大きな声で、沢山鳴いてたのは…何処からだったんだって、妙な気分になったよ」
窓を見れば、夕暮れ。蝉の声も、一日毎に消えている。
「…空蝉の身をかへてげる木の本に…猶人がらのなつかしきかなと」
「え?」
「存じませんか、源氏物語ですが…ああ、鳴海さんはもう少し俗っぽい話の方がお好きでしたね」
「ちょっと待ってよ、源氏物語俗っぽいじゃないか」
「フフ、確かに」
「空蝉なー…大量に壁に有ると微妙だけと、こう…ぽつんと有ると、少しはっとするな」
はは、と笑う鳴海。本当に、朗らかな人なのだろう。
今の位置に居るのは、本当に善意なのかも知れない。普通の人間とサマナーの仲介として、この人の選んだ…
鳴海という探偵の皮を被って、日々生きているそれは、息苦しくないのか?
「皆、空蝉でしょう、この肉体は」
何も作為は無く、我の口から零れた。
「ライドウ…?」
「さて、僕は上に戻りますよ」
「ん?ああ…あ、そういや矢代君にさ、何か喰いたい果物有るか聞いといてよ、俺が買っとくから」
灰皿に葉巻を押し付ける鳴海が云う。
「僕から聞けと云うのですか」
「料理も作れない位ぐったりしてんだろ?夏バテかな」
「フフ、残暑が厳しいですからね…」
哂って答える我は、やはりこの鳴海とも打ち解けそうに無い。
ヤタガラスの傘下だ…この優しさは恐ろしい武器とも成り得る。
欺かれるのでは、という恐ろしさに、却って近づけぬ。
そして、悪魔の見えぬこの人を深みまで巻き込むのは、駄目だろう。
見えぬ振りをしていた我の世界の鳴海を思い出し、少しだけ…震えた。


(空蝉、か…)
能の組で在るのだ、まさしくそのまま、源氏物語の空蝉が題材のものが。
大正八年に廃曲され、それ以来は観る事も無い。
「不思議なや…まどろむとしもなき東雲に…」
源氏が求愛し、向かった寝所に残されていたのは衣一枚。
まるで、蝉の抜け殻…空蝉の如し。
「夢か現か空蝉の…姿顕はし給ふ事…」

この躯も、そうなのか。

扉を開ける、君が居る、夜の寝床に歩み寄る。
「功刀君、そういえば鳴海さんが、何か食べたい果物は無いのか?だと」
幽鬼の様な虚ろな眼、角を貫く封魔の刀。
「無いのかい?」
「んあぁ!…っグ」
ずるりと引き抜いて、傍の棚にかたん、と置いた。
ぱたぱた、と、染みの出来たシーツに新しい赤が咲く。
「自分で慰める必要が無いくらい抱いてやった訳だが」
椅子に腰掛け、脚を組む。後孔が荒れに荒れた君を見下ろす。
「クク…大丈夫?肉が薔薇の蕾の様だよ?」
「ぅ、っ、うう、ぐ」
君の内腑を裏返したら、肉色の薔薇が咲くのだろう。
その肉まで喰らいたいと思うは、罪なのか。
いくら交わろうが、何もひとつになった気になれぬのだ。
喰らえばようやく感じるのだろうか、君を得た感覚を。
「声も出ない?」
毎晩の加虐の色を、更に濃くして。
手脚の腱を斬り、歯を折り、その華奢な首を銀の鎖で絞める。
三日三晩、終わらぬ狂宴。
(嗚呼、我は、一体誰なのだ…同じ事をしている…同じ非道を働いている)
最早、我を求めぬ君が、夜の身体に歓喜する事が赦せない。悔しい、悔しいのだ。
「ねえ、功刀君、僕は此処に居るだろう?君の眼の前に…」
蝉の声が遠くに聞こえる…それも、僅か。今にも潰えそうだ、一匹だろうか。
声のかすれた君の悲鳴は、下の階にすら届かない。
「よ…よ、る」
「フフ…それは吐き出すのか」
「あむ、っう、ウグ、ぅ!!」
改めて生えた、君の真新しい歯列を撫ぞる。
契約の最後に、と、アルラウネに縛らせた君が、いやいやをする稚児の様に蠢いた。
あの時、怪訝な顔をしたアルラウネ、我の中身が違う事に、はたして気付いたろうか?
「は、っ……ァ…」
「薔薇園は…此処で良い、此処に在ればそれで」
「あ、んた…」
「君はずっと此処で僕に飽きられるまで飼われていれば良いのだよ」
「っ!!」
顔を背けられる、再度の接吻を逃げられた。
ああ、この数日、ずっとこうだ。以前より明らかに、我を避けている。
羽交い絞めにしようが、抽出運動を繰り返そうが、何をしようが。君が呟くその言葉は…
我を通り越して、過去を呼んでいる。
「僕を見給え!」
背く頬を、強かに掌で叩く。
「“僕”すら見ないのか!君は!!」
反対の頬を、同じ様に。
「聞こえていないのか!?君は誰を先刻から呼んでいる!?」
荊ごと君の身体を揺さぶり起こす。指先に傷が出来ても構わない。
虚空を見つめるままの人修羅の金色が…潤んだ。
その美しい眼を、今度こそは大事にしてやりたいと、思っていたのに。
「よ…夜…どうした…なぁ…何処、行った…」
か細い声が、血に汚れた唇から紡がれる。
我の眼を見て、続けられる。

「あんた…抜け殻みたい、だ」

その君の一言に、全身が弛緩した、直後、激しい痛みに襲われる。
嗚呼、魂が、肉を、器を拒絶している。
「矢代……っ」
嗚呼、嗚呼!もう、すべてを吐き出しそうで!
「抜け殻では無い!」
突き倒し、部屋を飛び出す。
屋上に駆け上がると、入道雲も散り散りになった秋の空。
夕焼けの沈む妖しい色に、千切れた雲が染められ、花びらの様に優雅に空を舞う。
「こんなに、鳴いているではないか」
黄昏の空に呟く。
「折角君の傍に居れるというのに」
虚像世界から出でた我は、ようやく此処で君という陽を見たのに。
どんなに鳴こうが、気付かれぬではないか。
気付かれた瞬間、魂と器の矛盾に、我が壊れる、君が壊れる。
我の身体が空蝉だったと思ったが、違う。違えていた。
この肉体が、この器が夜の抜け殻なのだ。
君は、夜の空蝉としてしか、我を見ない。
まるで源氏の様に、その残り香を纏った空蝉に縋り…心は彼方なのであろう。

「我は、此処に居る…矢代」

蹲る、軋む身体を抱きかかえ。暮れる空に独り鳴く。

「気付いてくれ…俺に、俺にぃッ」

魂が、季節外れの蝉が如く、狂った様に鳴き叫ぶ。
君を苦しめてしまおうが、お構い無しに、煩く、浅ましく。
疎まれても良い、どうか夜を忘れて呉れ。
夕闇の少ない夏を、どうかずっと齎し給え。
帳が下りる度、君が夜を強く想うなら――…
夜毎、永遠に鳴き続けようか?君が夜を感じれぬ程に。

遠くの蝉の鳴きが、とうとう潰えた。
君と出逢った季節が、また廻り来る…


秋空に空蝉・了
* あとがき*
徒花の雷堂END後…『初夢』の更に後です。いよいよ怪しまれている雷堂。互いに狂い始めている。
愛したい心と裏腹に“身体だけでも”と繋がるばかりの雷堂…
違和感が過去のライドウへと、人修羅を走らせる。狂おしく求めてくる贋物のライドウに人修羅は困惑す。己の良く知る夜の姿を捜し忘我のままに手淫した…己のマガツヒで咲かせた記憶のままの薔薇天井。
『初夏のRhodonite』と対照的に、後を引く暑さ、しのび寄る秋の冷たさ、退廃する庭園。薔薇園を燃す描写こそが対照的。
表題の秋は明と掛けてます。

《空蝉(うつせみ)》
⇒この世に生きる者、現人(うつつしおみ)が訛ったもの。
⇒蝉の抜け殻、夏の季語(そういえば薔薇も夏の季語です)
⇒源氏物語の第三帖に出てくる女性。

《円通三匝堂(えんつうさんそうどう)》
福島県会津若松市に在る仏堂。マッチ棒で作って特長的な形になる建造物を探していたところ、しっくりきました。内部の螺旋階段が芸術的との事。