* あとがき*
“好き女性”で(よきひと)と読んで下さいまし…
いきなりの剃毛シーンで申し訳ありませぬ。
一瞬の夢、赦された錯覚…
雷堂はエイプリルフールを知らぬまま、という終わりです。
結局、鳴海には背後に恋人を見られ…
徒花本編では人修羅から、背後にライドウを見られ…
雷堂こと日向明そのものを見てくれる者が居ない、無慈悲な現実。
言動が似ている、という設定です、鳴海の恋人と雷堂の。そして名前も同じ読みという悲劇。
しかし、雷堂が殺していなければ、きっと普通に接する事が出来たのだろうと思います。
鳴海は雷堂を赦す事が、恋人への裏切り行為と思っているフシがある…
この四月一日は、鳴海の気紛れか…本当はどうしたかったのか…
それは敢えて書きませんが。
最後の突き落とされたシーンは、徒花本編で鳴海が人修羅に聞かせた話です。
【作中のあれこれを適当に解説】
《春寒》
“しゅんかん”と読んで下さい。立春以後、ことに、春になってからまたぶり返す寒さをいう。タイトルは“そのしゅんかんのロンド”となります。瞬間とかけてます。
《産医師異国に向かう〜》
円周率の語呂合わせ。円周率=直径に対する円周の長さの比。
雷堂こと明は、暗記というより睡眠術として憶えている。勉学に対する向上心はあまり無い。しかしそこそこ秀才である。
《花月園》
大正3年に開園。フランスのフォンテンブローにあった遊園地をモデルに造成された。少女歌劇団・活動写真館・ダンスホール・ヒル・ウエイター(ケーブルカー)・大山すべり台…何でも在った。ピークは大正14年度。
《春の声》《美しく青きドナウ》
ワルツ曲の定番。ヨハン・シュトラウス2世作。本当に定番なので、聴けばピンと来るという。
《サーカスの唄》
実は1933年の曲なので、時代的におかしいです。でも引用してしまいました、すいませぬ。いくつかカバーが在りますが、美空ひばりさんも歌ってます。
《ビリケン様》
1912年、大阪の新世界に遊園地・ルナパークがオープン。当時流行していたビリケン像が置かれ、新世界の名物となった。…との事です。明は偶像崇拝だと思っている、あまり良い顔をしない。
《痴人の愛》
谷崎潤一郎の小説。1924年3月から大阪朝日新聞に連載。カフェで見初めた次第に少女にとりつかれ、破滅するまでを描く。耽美主義の代表作。自分の色に染めるつもりが…という。明はきっと「知人の愛」と勘違いしている。ドM小説。
《首筋の春》
お察しの通り、キスマーク。明はあまり良くわかっていない。しかし鳴海も、恋慕の欠片も明には向けていない。噛み合わない寒い春。