『ほ、本当にあの棒っきれが、我々の新たな剣にぃ……!?』
お前も棒どころかスカスカだろう、という隣のツッコミはスルー致しまして。
やんややんやと沸く周囲の中、私めは騒ぐ気にもなれませんでした。


ルシファー様がとりいだしたるは、銀色の蟲。
それはマガタマと称されるアイテムで、実際生物に寄生するとの事。
なるほど、昆虫という生物とさほどの違いは有りません。
しかし、そのマガタマを呑まされた人間を見て、我々下々の悪魔は騒然としていたのです。
そりゃあ驚くでしょうアナタ!
実験的とはいえ、我々悪魔の持ち物を与えるのですから。
それ相応の素体かと思うでしょう? 筋骨隆々とした、それこそ死体になっても役立ちそうな肉体かと思いきや……
ハイピクシーの羽ばたきで飛んでいってしまいそうな体躯の、未成熟な者だったのですから!


ただし、その人間。 マガタマの侵蝕に耐え抜いただけあって、なかなかに食い下がるのです。
いやまあ、最初は酷いモノでしたが。
「彼に容赦する必要は無い」とルシファー様は仰られましたので。
我々は特に注意もせず、それはそれは好き勝手に接触を図りました。
すると、なんという事でしょう! 彼は目覚めたあの病院の中で、あっという間に死んでしまったのです!
しかもガキに喰い殺されて、ですよ!
ちょっと待って下さいよぉ!病院は“揺り籠”兼“墓場”なのですかァ!?
いやいやそれでは困るのです。
マガタマは寄生主を選り好みする、グルメな蟲(オカシイ響きですが)らしく。
あの弱そうな少年の肉体が、現在において唯一適合していたという事。
ですから、また同じ素体でのやり直しが求められます。
少年が死に絶える度に、魂の大移動です。
それは時間を巻き戻す、というよりは前の場所に戻すというだけの事。
軸をいじくり回すのは、色々な管轄の世話になる必要性が御座いますからね!
単純に“運ぶ”のが、我々堕天使の役目。
運搬とはいえ、セエレみたいに担いだり馬に積ませる訳では無いですよ?
東京受胎とかいう呪法は、人間や様々な生命体を世界ごと圧縮する様な仕組みでして。
ですから、理由の無い限りは肉体が滅びます。 維持出来ず、マガツヒの流れの一部と化すのです。
そうそうマガツヒですからねマガツヒ、MAG(マグネタイト)では非ず。
ボルテクス界の中ではエネルギーが皆等しく、赤き雫と化します。
人間如きに創世が出来る所以でしょう、あの球体の中では感情的なエネルギーが物を云うのです。


まぁしかし、肉体ごと破損しただけの少年はともかく。
他の有象無象共を、大気や悪魔から吸い出すのは面倒な話でして。
だってそうでしょアナタ。 ぐちゃっと圧縮なり、ぶわっと霧散なりしたら、選別するのに一苦労でしょうが!
あの人間世界、ボルテクスの素材となった……ええとトウキョウでしたかね?
魂とも云える熱量をあそこに運びきり、再び歴史が巡り出すのは良いですが……
実の所、そこそこの人数が再生出来ておりませんからァ!
ま、人間ってのは「神隠し」だとか云って、今までも適当に済ませて来たのでしょう?
数十人から百人、二百人くらい何て事はありませんよねぇ!?
掬いあぶれるという事は、思念体にすらなり得なかった微弱な意思の存在だったという事であり……
つまりは人間社会においても、消えようが気付かれもしない輩共だったという事です。
それでなくったって、人間というのは自害する者の多い事!
私の扱う死霊共の中にも、居ますよぉ? 自害の裂傷、括った痕!
然様このビフロンス、十八番は死者の扱いで御座いまして……
いえいえ話がズレましたね。


残留思念や、旧世界の強い意識が産み出すのがマネカタです。
アサクサという場所のきったないドブ土から這い出て来る、マガツヒ臭い連中です。
コレに関しては少々ややこしく、旧世界である人間社会で生まれた感情がダイレクトに伝わり……ボルテクスで泥人形が産まれます。
常に繋がってるんですよ! 受胎前の世界でこう、メラメラ〜っと人間が感情を燃やすと……その瞬間、ボルテクスの汚泥からマネカタが焼き上がるのです。
そんな事ですから、マネカタ本来の器である人間を捜すのは実に簡単、楽勝中の楽勝で御座います。
ま、しかし時折、我々も仕損じますからね……カカカ。
皆さん、憑きものが落ちた様に鎮静化したり、性質の変わる者に見覚えは有りませんか?
あれはですね、マネカタの核となった感情が、その人間へと還らなかった証拠なのです!
皆さんは知らずの内に、世界ごと転生している訳ですが。 その時に件の連中は、ぽっかりと感情が抜け落ちるという事になりますね。


……しかし前置きが長くなりまして、申し訳御座いませんでしたネ。
あのお方について改めて、これまでの歩みをお伝えしましょう。


我々は、幾度も繰るボルテクス界を、暫く眺めておりました。
あの弱々しい少年が、まずは病院から抜け出せる様にと。 しつこくない位置に回復スポットを置くのです。
これはまあまあ自然に出来ましたねえ、何せ病院ですから。 うろついている思念共も、治療する事に抵抗が無いのです。
あの少年も、いつもボロッボロですから……治療し甲斐も有るってもんでしょう!
姿も手伝いまして、人間として見れば異質、悪魔にせよ何処か微妙でしょう?
興味を引く検体としてはもってこい……いやいやあまり発かれても困りますが。


思念体の少ない場所につきましては、少々やり過ぎかと思いましたが宝の箱を設置致しまして。
中身は私共の用意した、これまた癒しのアイテムです。
だからって、そこらじゅうにソーマをばら撒いてしまっては過保護過ぎますから。
そこは薬学に長けた私が!(他の悪魔も参加しておりますケド)こう、傷薬などをですね……
ええ、つまり“程々”にしか回復しない逸品です。 度合いの調整は難しいのですよ、ましてや相手は半人半魔という稀有な存在ですから。
毎度毎度「少年がそろそろ危ないか……」というタイミングでの、実に絶妙〜な設置で御座いました!
そして、確認という事で遠視などして、宝箱を回収する少年の顔をチラっと見る訳ですが。
これがまさしく地獄に“仏”といった(おっと失敬、特定の個人や団体を指してはおりませんですよハイ、アクマで諺で御座います。)
こう……実に安堵した表情をするのですよ。
それこそ最初のうちは「何と甘ったれた小僧だ」と、我々一同、嘲弄したもので御座いましたが。
世界が繰れば繰るほど、回復措置を与える数が減少しまして。
不思議なもので、記憶を持ち越していない筈の少年ですが、次第にカンが良くなっていったのです。
そして、肉体の治癒能力も増してゆきました。 どうやら人間部分が作用し、マガツヒの巡りを好くしている様子。
快活とは云い難い少年は、放り出された無法地帯の理不尽さに対し、常に怒れておりましたから。
激しく燃え立つ感情は、血潮の如くマガツヒを循環させるのです。
観察している内に我々は、それが半人半魔の強みなのだという事に気付きました。
いよいよ悪魔を従わせ、顎で使う様になった少年を見て……今度は私が安堵の表情でしたネ!(いや、表情筋が無い事は分かっておりますカラ。)


順調に育ち始めたその少年は、ミロク経典からの引用で《人修羅》と呼ばれる事となりました。
彼がいつかはルシファー様の元に辿り着き、真に我等の新たなる剣と成り得るか否か……
一部の者は戦々恐々としておりました、ケテルの関係者全てが意見を揃えている訳では御座いませんからね。
統一? 連帯感? そんなの有って堪りますカ!
まるで薄気味悪い“天使”と自称する連中の様ではないですか。 もうあそこには嫌気が差したのですから、思い出したくも無いですね!
あの連中共も半人半魔に興味を示し、ちょっかいを仕掛けてくる始末ですし。
ま、嬉しい事に人修羅自体は天使を嫌っておりましたからね。 其処は我々も、ウンウンと頷く勢いでした。


しかしまたもや問題発生ですよ、何者をも信用しない人修羅の行く末なのですが……
なんと、ボルテクス界の調停者とも云える《カグツチ》に見放されてしまったのデス!
大失敗ですよォ! 確かに倒れる事無く創世の塔へと辿り着いたのですが、其処で終わってしまいました。
茫然と荒野に立ち微動だしない人修羅は、そのまま風化しそうな調子で。
かなり待ってみましたけど、やっぱりやり直しに決定!
魂が停滞した様子でしたから、もはや見込みが無いとルシファー様も判断されたのでしょうね……いや〜あれは残念でした。


という事で、少し発破をかけてみる事にしたのです。
異世界から喚び寄せた悪魔狩人(デビルハンター)をぶつけてみました。
人修羅にとって、やや手強い輩でしたから、我々は少々不安でした……勢い余って狩られてしまうかもしれぬ、と。
しかもその悪魔狩人というのは、人修羅と同じく半人半魔。
我等過半数の想定通り、彼等は手を組みました。
ですがそこはルシファー様、駒は未だ盤上からはみ出しておらぬと云うのです。
確かに、アマラ深界への誘いは、そこそこ巧くいきました。
が、しかし。 最下層へのリフトに……人修羅は乗らなかったのです。
いよいよ彼の意志のもと、我々の血色に身を沈める……と思っていた矢先の事でした。
そこで干渉は終了、人修羅は悪魔狩人に絆されてカグツチを壊しました。
大ブーイングですよそりゃ、私も燭台を壁に投げつけましたからね! 炎上モノですよ炎上!


新たに生まれた世界は、我々がいつもの様に設置し直したトウキョウそのものです。
そうです、まだまだ諦めきれません。 マガタマの適応する素体は、あの少年だけなのですから。
疼く気持ちを抑え込み、我々は遠巻きに見つめておりました……
すっかり記憶の沈殿した少年の魂は、トウキョウ受胎を避ける事が出来ません。
つまり、放っておけば再び受胎に巻き込まれてくれるのです。
結局自ら創世し、元の環境に戻ろうが……それ以前の干渉が無いので、歴史は殆ど同じ様に流れるのです。
が、其処でまたまたお邪魔虫ですよォ! 悪魔狩人が首を突っ込んできたのです!
雇ってもいないのに、無理矢理押しかけて……とんでもない愚か者です。
しかも、受胎を引き起こすファクターである人間二名を、バッサリ斬り捨ててしまいました。
奴はどうしても少年を人修羅にしたくない様子で、もはや我々の敵でしかありません。
いやぁ〜冷や冷やしましたが、ゴモリーが既に根回しをしていたので窮地は脱しました。
マガタマも宿らせてあったそうで、その辺りはなんとも姑息……いやいや用意周到でしたネ! 有り難うゴモリー!


再び悪魔狩人と共にボルテクスに降りた人修羅は、案の定アマラ深界に訪れません。
以前の記憶を所有されたまま繰り返すので、流石に行動は的確で。
真っ直ぐにカグツチを屠ったので、お次はどの様な創世を成すのかと思いましたら……
なんと、己の消滅を願ったのです! これには我々も、悪魔狩人も驚かされました。
何とも人間的、これは自害に等しいです。
転生させられ、人修羅としての生を繰り返す事に恐れた様子でした。
記憶が有ろうが無かろうが死滅へと向かうのは、歪な存在の業なのでしょうか……


私と致しましては、そろそろ我慢の限界でした。
既に器は充分育っているのです、半強制的に引き入れてしまっても良いのでは? と、ウズウズウズウズ、常にしておりました。
他の人間や、悪魔狩人との接し方を見ていれば判るでしょうに。
あの人修羅は……口では畏まりつつも、絆され易いという事が。
それは我々悪魔の嫌う“弱さ”でもあり、同時につけ入る“大好きな所”でもあります。
両極端なバランスが、危うげに揺れ惑うのが人間としての「葛藤」という感情です。
バイオリズムにバラつきが有りますが、振り切った時の勢いは凄まじいもので。
あの方の焔を見る度に、私の持つ燭台の灯りがぐらぐらします。
火の先端を、じぃっと見つめた事は御座いますか?
時折踊るでしょう? 姿も見えぬ、遠くの誰かの息吹にでさえ震えるでしょう。
吹けば消えそうになり、かと思えば煽がれ更に燃え立つ事も有り。
……ああ……いつしか私は人修羅という名を呼ばず、個体名を唱える様になりました。
例え他にマガタマの適応者が居たとしても、彼が私にとって唯一無二と成り始めていたからです。
ガキに喰われた残骸から魂の運び出される光景が、今となっては懐かしい……
悪魔を蔑む冷たい眼は、まさに悪魔に相応しく。 荒れ狂う焔の熱は、場所が違えど私の袖を揺らしました。
早くお傍に仕え、直に声を聞きたいと……あの斑紋の輝きを、この虚に吸い込むまで見つめたいと……


執心雇用




『まだー? 眠いよー伯爵のあらすじ……』
『何を云っているのですか! 眠気なんか有りゃしないでしょうに!』
『もっと簡単で良かったのに……』
愛馬に項垂れるセエレですが、いつもとなんら変わり無く見えますね。
普段からボケっとした腑抜けの様な態度ですので、ま、仕方ありません。
『ボルテクスの件も殆ど知らなかったアナタの為ですよぉ! ヤシロ様のこれまでの苦労!武勇!そして今後の――』
『悪魔にならないとボルテクスぐるぐるしちゃうって、ほら一言で済んだよ……』
『様々な情報が抜け落ちているではありませんかァ!! いつどこで何回死んだと思っているのですかァ!』
此処まで叫んだ私は、ハッとして顎をカクカクさせました。
前方を歩く人修羅……ヤシロ様が一瞬、ヒリつく気を滲ませたからです。
あれは恐らく怒気という類でして、そりゃあもう私はドキドキで御座います。
「悪かったですね、弱くて」
ややあってから、ぼそりと捨て置く様に呟かれました。
違う、違うのです! それは過去の貴方様で御座います。
確かに弱かったのかもしれませんが、生まれた瞬間から強い人間は存在しません、それは承知しております!
だって悪魔では無いのです、神と呼ばれる存在でも無いでしょう。
元は人間なのです、そして未だその要素を残すヤシロ様は……脆弱な過去の上に現在が有る訳でして!
それは何も可笑しい事ではありません!
『声になってなかったよ、伯爵……』
『カカカカ』
『あらら……顎が外れてる。 云いたい事が右往左往しちゃったのかな。 あ、でもねヤシロ様、大丈夫、伯爵いつもはベタ褒めだから……』
セエレめ、もう少し考えて言葉の順序を選びなさいな!
まずは謝罪! そして次に賛美でしょうが!
この場合は、台詞の頭に『このガイコツ見た通り脳が無いんでー』とか云って、私を貶すのがポイントでしょうがァ!
悪魔を毛嫌いするヤシロ様がそこで少しばかり機嫌を戻され、そして仰るのです、「卑しい悪魔め」とォ!!
して、すかさず私めが『はいぃ! ヤシロ様こそが真の魔と成るに相応しい器をしておられるのでありマス!』と……
ん、んん? それでは怒りを買いますかね? しかしこれが真実なのです。
人間というのは矮小な生き物で御座いますが、欲するは《混沌の悪魔》だと仰られたルシファー様の意向に副うには重要な要素なのです。
我等が存在するにあたって、人間の存在が不可欠ですからねェ……嘆かわしい事実ですが、覆す事は無理なのです。
『尊い』
『大丈夫? 伯爵……』
『だってアナタ! 人間と悪魔だから一粒で二度美味しいんですよォ! 単独で存在出来るなど、まさしく唯一無二の個! 縛られる事は無いのデス!』
『ねえヤシロ様、サンシャインだっけ? 到着したらどうするの、日没ってあとどれくらいかな……お茶する暇有ると思う?』
『セエレ! 私の話を聴いているのですかぁああ!?』
軽く内股で急かすセエレに従い、黒馬はスタスタとヤシロ様に接近しました。
ああそんな、足代わりの獣を近付かせるとは……気が気でなりませんよ私は。
『人間はどんなお茶を飲むの? 最近ボク達の間で流行っているのはね、カヴァラリタスで風味付けしたお茶。 カヴァラリタスって知ってる? 根っこが色んな形をしているの……だからカップに浮かべると香りも相俟って、薬湯に小さな人間や動物がプカプカ浸かっているみたいなの……』
「お茶なんてしませんよ」
『あれ、サンシャインの中ってゆっくり出来るよね? ルシファー様と会食していたんでしょう……?』
「場所の問題じゃないです、俺は貴方達と遊ぶ為に居るんじゃない」
『人間界の方のサンシャインもちゃんと見たいなあ、噂で聞いた……水族館っていうのが有って、たっぷりの水の中に泳ぐ生物と草を入れたりしてるんでしょう……? 保存の為? 育ちきったら食べるのかな……』
「食べません」
『じゃあなんでそういう場を設けるの……』
「いちいち訊かないでくれませんか、人間の事詮索するの得意でしょう? 俺じゃなくったって、人間社会への問いには答えられる」
『ねえヤシロ様――……』
しつこいですよセエレ! 私がもっともっとお声掛けしたい所を、こんなにも我慢しているというのに貴方は……
っていうか、コレって私だけ仲間外れっぽくありませんか!? 何を並んで歩いているのです、おいコラっ、セエレェ!
「だからっ……いい加減に」
『ねえ、それじゃああの人間も、いつか食べる為に養ってるの?』
安穏としたセエレの声音と裏腹な内容に、私は戦慄しました。
此処は我々の空間、つまり人間共にとっては異世界な筈。
普通の人間なんてのは居る筈が無いのです、つまり今セエレの指した人物とは……
『御護りしなさぁい! セエレェ!』
私が叫ぶと同時に、生白い腕がヤシロ様を抱え込みました。
飛び立つ黒馬の麓で金属音が響き……私の眼の虚を風音が潜り抜けます。
背後に転がるそれは跳弾です、人間の使う鉄砲の。
『あーびっくりしたね……』
「ライドウ」
『あれが? もっとゴツゴツかヨボヨボだと思ってたのに、子供みたい……』
「子供なんかじゃない、解ってやってる確信犯だ!」
ああっ、怒っておられますねヤシロ様!
急かされつつ上空から舞い戻るセエレが、先ずヤシロ様を降ろしました。
二発目に警戒しているのか、鼻息も荒く着地する馬。
「なんなんだあの男、もうお相子なんだから俺と戦う必要は無いだろ……くそっ」
殺気立つヤシロ様とは裏腹に、セエレは呑気に愛馬を撫でているではありませんか。
私は先刻立って居た位置を思い出し、弾の発された方向を定めんとしました。
おお恐ろしや……セエレが連れ発っていなければ、ヤシロ様に命中している所でした。
『ヤシロ様! 敵はあちらの背の高い塔の麓ですよォ!』
「見えてます! 先刻も云いましたけど俺、戦う気ありませんから」
『な、やられて黙っているのでありますか! 一発撃ってきたのですよ!』
「もう小翼羽は五枚持っている、このまま持ち帰れば引き分けです。 あんな奴の相手をまともにしたくない、どうせあいつも五枚見付けただろうし」
『では、攻撃を避けつつルシファー様の元へ向かうと、その御予定で宜しいでしょうか!』
「……俺は貴方達の特性も知らない、適切な指示を与えられる訳が無い。 多少の被弾は覚悟して下さい」
そう云いつつも、その足は目的地へと接近を始めているではありませんか。
幸い、黒き影が銃を構えている様子は見えません。
真っ直ぐに向かって来るヤシロ様を見て、満足しているのでしょうか。
『わあ、護衛戦だ』
「……貴方達に盾になれって云ってるんですよ」
『今度弾が飛んできたらどうする? ヤシロ様が避けられないなら、ボクが庇ってあげなきゃだけど……でもいちいちそんな事してたら、なかなか目的地にたどり着けないよね……』
「さっさと建物の中に入って、階段から上がります」
『面倒くさそう、乗せてあげる? 階段って脚でぐるぐる上り下りするアレでしょ? 飛べば一気に上まで行けるよ……』
「狭いから飛べませんよ、多分」
ちょっと待って下さい御二方、私を完っ全に無視した作戦が立てられておりませんかねコレ。
と、それよりも何よりも、大事な事を忘れておりますヤシロ様。
『差出がましい真似を、どうかお許し下さいましヤシロ様!』
「先に内容を云ってくれませんか、奴の間合いに入る前に、早く」
『あのデビルサマナーを撒く事は難しいと思われます!』
「はぁ? そんな事知ってますよ、何回やりあったと思ってるんですか」
『ええとですねェ〜我々は一応ケテルに拠を置く団の一員です! ヤシロ様がこれまで使役してきた連中は殆どが野良だった訳で……』
ああっ、なにやら敵に対してでは無く、一瞬私にヤシロ様の殺気が注がれましたよォ!
だから先に断ったではありませんか! しかし御安心を、聴く耳持たぬ貴方様では無いと分かっております。
無茶を始める前ならば、ヤシロ様は冷静なのです!
「何が云いたいんです」
『あのデビルサマナーも、此度のヤシロ様を支援する仲魔の毛色が、かつてと違う事を認識しているでしょう。 小手調べでなく、本気で襲ってくる可能性が高いのです!』
「そこまで把握されてますかね? だって貴方達を従えてから、あいつと一度も交戦してない」
『もう向こうからも見えていると思いますが、我々がケテルに居た事を奴めは知っております!』
知っているどころか、私とは面識も……おっと。
「……同一の悪魔かなんて、遠目には判らない筈だ」
『ケテルには我等の形をする者は、我等しか居りません! そしてヤシロ様の旅したボルテクスでも、見た憶えは無いで御座いましょう!』
「悪魔なんて、いちいち憶えてません…………そろそろ駆けますから、妨害を阻止して下さい。 全力で走れば、俺はあの男より速い」
云うなり地を蹴るヤシロ様、私も慌てて走り出すのですが、いかんせんこの体躯……
いえ、短足では無いのですよ? 全体的に小さいだけです。


『ねえ伯爵……クズノハライドウは何が効くの』
頭のすぐ傍で声がすると思いきや、セエレが私を拾い上げて馬の首に乗せておりました。
どうりで、つい先刻からスカスカと空を蹴っている心地がした筈です。
『んなモン断定できませんよ! 人間は装備で耐性を替えてきますからねェ! 全く姑息な』
『あー、召喚してる』
『ぬぬぬ……アルラウネと……モー・ショボーですか? ハハァ、思ったより安心かもですねェ、あんな低位の女子供を此処で出してくると、はぁああ〜っッ!? 』
ちょっと待って下さい、自身の絶叫に驚きましたよ。
いやだって、唐突に景色が横転したのですから!
片脚に重く圧し掛かるは馬の首。 背からセエレの軽い気合いが聞こえ、ぐぐっと持ち上がる馬。
しかし、暴れる脚に絡まる緑色の茨蔦。
それを視線で伝えば、件のアルラウネがいやらしく微笑んでいるではありませんか。
『ねーえ、今ワタシの事、馬鹿にしたでしょ? 聴こえるんだからぁ……そーい、う、の』
『ボクはしてないよ……』
『確かにそうね。 それじゃ、そっちの骸骨だけバラしちゃおうかしら』
なぁに余計な事を云っているのですかセエレェェ!
とりあえずこの状況を脱し、ヤシロ様に追従せねばなりません!
私は燭台を翳し、蝋燭の先を吹きつけました。
しめしめ、私の思い通りに蔦へと焔が零れてくれましたよ。
拘束の緑はジリジリと焼け千切れ、自由を得た馬が嘶き暴れます。
アルラウネの再び伸ばしてくる茨を、見た目からは想像もつかぬ程の軽いこなしで躱し。
この機動力なら何とか行けそうですね、絡む茨は私が焼けば良いだけです。
後は我々が手下連中よりも先へ進み、ヤシロ様を補助しつつ、あわよくばあのデビルサマナーを――……
「良い馬ですね、セルロイドの艶が上品だ」
『えー本当? ありがとう……』
はぁぁ!? 何ですか今の会話はぁ!?
気付けばアルラウネの傍に、黒づくめの男が……あ、あれはクズノハライドウ。
何故ヤシロ様を追わないのだ!?
「人修羅に追いつく事など容易い、先ずは従者の足を潰す事が肝心かと思いましてね」
『訊いてもいないのに、説明するんじゃぁありませんん!』
「そうですか? それにしても先日は有難う御座いました、お陰ですんなりと人修羅が――」
『でぇすからッ! 云わずとも良いと云っているじゃあないですかああッッ』
あまりペラペラと語られては困るのですよ、私が干渉した事に良い顔をしない連中も居る事ですし!?
何より、人修羅としてルシファー様の手の内に降りた結果に、私が直接関わったという事を……
ヤシロ様に知られたく……あ、アレ?
「貴方の望み通りになった訳ですよ伯爵、少しくらい歓んでも宜しいのでは? 本より、悪魔に信用などアレはしておらぬでしょう」
『それはそれ! これはこれ!』
「フフ……概ね同意しますよ、僕も割り切る性質でしてね」
ふわふわと浮かぶ仲魔共が、クズノハの左右を固めました。
完全に此方へと向いておりますね、大いに結構。 少しの間だけでも、引き留める事が出来れば良いのです。
勿論、負けるつもりも毛頭御座いませんが。
『馬なんか褒めてないで、ワタシ達を鼓舞しなさいよぉライドウ』
『そーだよっ! 早くヤシロ様の脳味噌吸いたい!』
これまたきゃあきゃあと……一人足りないですが、なんとも姦しいではありませんか。
しかもモー・ショボーの発言は聞き捨て成りません、何としても喰い止めなくては。
『人間如きに従属しおって、アナタはそのまま人間界でカニ味噌でも啜ってなさァい!』
『なによっ、このガリガリ! あんたなんて吸う所も無いじゃん! 脳無し〜』
少女の剣幕と共に吹き荒れる疾風、確かにモー・ショボーにしては強風ですね。
馬の固い鬣がミシミシと音を立て始めると、私の背からぼうっと熱い光が溢れました。
普段のセエレが滅多に使わぬラクカジャです。
それは我々全体を包み、風のヒリつく感覚を幾許か和らげました。
『伯爵ミシミシいってたもんね……』
『エッ、私だったのですか!? 』
『自覚ないのか。 どうしよう、突撃する? 火を撒いても煽がれちゃうよ……』
『どうもこうも無いでしょうが! 噛み付いてでも足止めするのですよ!』
『はいはい……よい、しょ、っと』
ようやくヤル気になった様子のセエレが、私の背中でスラリと武器を取り出しました。
馬の背から引き抜いた鉄棒を掲げており、その影が燭台の灯に揺れ踊ります。
棍の代わりという事です。
『魔界魔法が効かないなら、殴るしかないね……』
『そぉいうコトですッ! 突撃せよ、狙うは使役者ただ一人! 使役される連中なぞ、サマナーが倒れさえすれば立ち往生するに決まってますからねぇ!』
煽がれる事を前提に、まず私が突破の為の焔を撒き散らします。
モー・ショボーがザン系にて煽ぐ……かと思っていたのですが、アルラウネが氷塊を吹きつけて参りまして。
そうですね、場合によっては煽げば火力が増しますし。
すっかり抜刀したクズノハは、マントを焦がす事も無く我々を迎え撃ちます。
『セエレ! アナタの方がリーチ有るでしょーに! はよツッコミなさい!』
『だってアナキストの首と伯爵が邪魔だもの』
『んじゃ私が後ろに乗りますよ!』
『あれって人間界のカタナでしょ? 昔触った事有る……あれ打ち合う物じゃないから、正面は避けるね』
『ねえ! アナタさっきから聴いてます!?』
側面での最接近を意識し、やや大回りにぐるっと近付いて往くという。 この状態はさながら回転木馬……
セエレの一振りは、先ずクズノハの得物へと向かいました。
鉄棍が刃を舐める様にして、先端を微かに交わらせるだけの接触。
激しくぶつかり合うか、または擦れる音が響くと思ってましたので、ホッとした様なガッカリした様な。
私も伸び来る茨蔦を振り払うべく、焔を撒き散らします。
アルラウネに引火しては不味いと見たか、あの凶鳥の小娘はジッとしておりまして。
おやおや、これは召喚する組み合わせを見誤ったのではないでしょうかねェ? デビルサマナークズノハよ。
しかし、攻め時と踏んだ私とは裏腹な軌道で、景観が流れます。
セエレが馬の胴横を軽く蹴ったのです、これは退けという合図。
『今ならクズノハに届いたでしょうに!』
『返事は後……』
先刻絡まれたセエレの鉄棍は、焦げた蔦の残骸をくっ付けたまま頭上に閃きます。
あまり距離を作ってしまっては、銃撃される可能性が有りますからね。
私はいつでもマハラギが撒ける様に、馬の首を盾にしつつクズノハの手元を凝視しておりました。
あの武器……刀は両手で扱う物、指の挙動を観察していれば動きの予測くらい出来ますよ。
『ねえ伯爵、クズノハ本気じゃない』
『なぁにを今更!』
『彼の欲しているものが此処には無い……』
セエレには人間の望むモノが、おぼろげに視えるのです。
鮮明では無い上、事象なのか物体なのかすら判断がつかない事もしばしば……
それでも一定の信頼は寄せておりますよ。 こやつめ、妙にカンが良いのです。
ですが! 私にだってクズノハの欲望の矛先くらいは分かります!
『きっと我等をさっさと往なし、ヤシロ様を追いたいのでしょう! 気が散っていてくれて好都合!』
『違う、なんかこう……慌てる必要も無いって方の』
『やはりヤシロ様の追跡を優先するつもりですかねぇ? しかしクズノハも所詮人間、しかも人間という生物は足で上るのでしょう? この馬は飛べますし、すぐに足止め再開ですヨ』
と、此処で件のデビルサマナーが動きました。
一歩、二歩……真っ直ぐ武器を構えたまま、後退する仕草。
ええいさっさとするが良い、私も早くヤシロ様の元に駆け付けたいのですから!
『追い駆けたいのならば、そうしたらどうですかぁ? あっという間に追いついて、引き摺り下ろして差し上げましょう!』
「僕の方からも忠告致しましょう、早く降りるべきだとね」
するりと刃を仕舞ったクズノハが、再び銃を手に取りました。
私は核を砕かれなければ、骨の器なぞいくら欠けても構いませんし。
セエレも蜂の巣になる前には、奴の懐に飛び込んでくれるでしょう。
『負け惜しみは見苦しいですよクズノハ、撃つのなら撃って御覧なさ――』
唐突に響く銃声、見事に私の台詞を掻き消しました。
全く、此方が喋っている最中に射撃とは無礼な奴……
『あっ、アナキスト……』
『何ですかナンですか! この馬は血も通っていないのでしょう!? 穴の一つや二つ……』
セエレの声に馬を見下ろせば、確かに脚を被弾した様子。
もたつきはするでしょうが、コレは痛覚も恐怖感も持ち合わせぬ造魔。 機能する限りはこき使うのが当然!
『ほらセエレ! さっさと突撃なさ――』
まぁた私の台詞を遮って!
って、あ、あらら? 視点が低く……
『アナキストの脚が……』
くしゃんと蹲った馬は、がくんがくんと首を上下に振り乱します。
弾かれた様に私は飛び降り、その折れた馬脚を覗き込みました……
でろりと黒い脚の脛が、見事に爛れて凹んでいるではありませんか!
『融けている!? あの男、特殊な弾でも撃ち込んだのですか!? 』
『確かに熱には弱いよ……それでも硬質な物は先ず弾く筈だけど……ラクカジャもかけたし』
物体の焼けた臭いが、骨鼻腔を掠めました。
この臭いに既視感を覚えた私は、何やら重要な事をしでかした心地に襲われたのです。
「セルロイドの艶が上品だと申し上げたでしょう……じっくりと脚を炙ったのは、何処の誰でしたかね……フフ」
慌てず騒がず、寧ろじっとり虐める様な人間の声。
脚を炙った……という箇所を、私は改めて脳内再生させました。
『あああああ〜ッッ! 蔦を焼き切った際のぉぉ!? 』
そうです、そうですきっとアレの時です!
弾や魔法ならば、すぐに払い除けられたものを。
馬脚に巻きついていたソレを、じっくり焼いたのは私です!
セルロイドは焔にがっちりと絡まれて、あの時既に融け始めていたのです。
アルラウネの茨蔦は、足止めに使われたのでは無い。
焔を扱う私が焼切ると踏んでの……つまりは罠だったという事です!
其処に一発撃ちこまれたので、完全に馬の脚が割れたのでしょう。
『なぁんにが“良い馬”だ! 真っ先に狙っていたという事ではないかぁ! ついに馬脚を現したなぁこのデビルサマナーめが!』
『足を潰す事が肝心って、さっきクズノハ宣言してたよ……』
『アナタは黙ってらっしゃい!』
『馬脚を剥き出しにされたのアナキストだし……』
『それはコトワザです! 比喩です! To show the cloven hoof.(割れたヒヅメが現れる)の方です!』
『アナキストは山羊じゃないよ、馬だよ』
『120%どうでもいいですゥゥ!! 』
馬に私のディアをかけたものの、まぁ玩具クオリティといいますかナンといいますか。
脚の一本をぐらんぐらんさせたまま、よろよろと起き上がり……他三本も怪しい痕が残ったまま。
泥船に乗っているに等しい状態と云えましょうか……
『ボク等も足で上らなきゃだね』
『……しがみ付いてでも止めますよ! ほらっ、突撃ですーッ!』
『自分で走るの久し振りー』
なりふり構って居られません。 私は燭台の焔を轟っと揺らめかせ、タルカジャを唱えました。
持久戦は難しい。 馬の使えぬ今、機動力も誇れたものでは御座いません。
そんな我々に残された道は、身一つで壁となる事、それだけなのです!
「フフ……大した忠誠心だ」
『貴様よりも昔からヤシロ様を眺めていたこの私に! 全くとんだ戯言ですねェ!』
指先の骨に燭台を噛ませ、クルクルと回せば鬼火が私の周りを浮遊します。
カチカチとこの歯を鳴らし、号令の様に敵を取り囲ませるのです。
アギと比べやや神経を使いますが、ある程度の追尾力がこの火共には備わっているのであります!
『しつこい火ね』
「お前はもう戻って良い」
『まだあの骸骨サンを、ビッシバシしごいてないわ』
「どうせ、いつか再びまみえるさ」
ステップで私の鬼火を躱しつつ、セエレの棒術を鞘で受け流し……
そんなにも忙しない中で、クズノハは召喚を平然とやってのけるではありませんか。
アルラウネと入れ替わりに現れるは、巨大な体躯のツチグモ。
建物の入口前に佇むだけで邪魔くさいというのに、また何だってこんな悪魔めを。
「五十九階まで伝ってくれ給え」
『この塔をか? ライドウよ。 こりゃあ眺めが良さそうだのぉ、振り落とされるなよ!』
まさかこのデビルサマナー……
建物の“中から”上る気は、元々無かった!?
我々がしていた様に、騎乗しているのです、アッチはツチグモですが。
蜘蛛という生物は、壁を這うでしょう……まさか。
『さ、させませんよォ!』
糸を伸ばしている連中の頭上へ、私の鬼火を向かわせます。
自分でも煩いと感じる程、カチカチと歯を鳴らしました。
モー・ショボーがザンで鬼火を吹き飛ばすのが見えましたが、その一瞬をついてセエレが投擲します。
放たれた鉄棍は補助効果もあって、かなりの威力を帯びている筈。
小娘の風壁にも穴が開くでしょう!
『ハアァァッ!? 』
『伯爵……!』
唖然としていた私を、セエレが庇って床に転がりました。
礼をするより先に、納得いかぬとこの口がカタカタ喚いてしまいます。
ツチグモに乗るクズノハが、投擲された鉄棍を受け止め、更には投げ返してきたのですから!
『ど、どどどうやって受け止めたのだ!? 人間の掌では焼け爛れても良い筈ですよォ!? 』
『MAGの光が見えたよ……綺麗だった。 あれでほんの一瞬、得物や自身に防御膜を作ってるんだね……』
『感心してる場合ですかァ!』
『あの時も……カタナの一番弱そうな所を狙おうと思ったんだけど……受け流されちゃうから、打ち込めなかった』
『あぁ、だからあんなに寄っては離れを繰り返していたのですか?』
『召喚されている仲魔が回復魔法を使う可能性を考えると、武器を壊した方が早いからねー……まあ、ボク達の足を先に壊されちゃった訳だけど……』
近くの床に突き立つ鉄棍は、セエレの投擲と同程度の魔力を滲ませており。
上空から下方への物理考慮を省いたとしても、異様なまでの攻撃力……おぞましい、たかが人間のクセに。
『ああいうのと初めて戦ったよ……あれは戦闘訓練を受けた人間……ヤシロ様と正反対……』
『褒めなくて宜しい! ああ畜生めえぇ〜もうあんな所まで……』
残り僅かに追尾していた鬼火も、ふわりふわりと風に追いやられていく様を確認しました。
私はモゾモゾとセエレの腕から飛び抜けると、塔の入口から侵入します。
『わ、エレベーター、なんかボコボコだね……コレ動くのかな?』
『…………階段で行きますヨ』
『わあ、人間気分……』
『嬉しくないわァ!』
『ねえ、後でちゃんとアナキスト迎えに行くから、伯爵も付き合ってね……修復に必要な素材はね、えっと……』
ええい、黙って足を動かしなさいな。
私の倍は長い脚だからって、気楽なもんですね!
ああヤシロ様……あのサマナーの妨害を受ける前に辿り着けているのでしょうか。
すぐに我々も駆けつけます、どうか御無事で!
『ねえ、フロアマップ見た? 五十九階ってレストラン有るんだって……お茶してからアナキスト迎えに行こ?』
『そこはアナタすぐに迎えに行ってやりなさいよおォ!』


執心雇用・了


* あとがき*
人修羅vsライドウまで書き切れませんでした…倍の長さになる可能性があった為、今回はここでキリとします。
ビフロンスの語りが本気で長い訳ですが、長編における人修羅(功刀)の状況がこれで大体判明した事となります。ただ、これは現在までであり、今後は割とトンデモな展開が続く予定です。
あくまでも真3のマニアクスクロニクルなので、その二次創作である様に意識して書いていきたいです。
って、これじゃライ修羅目的で読んで下さっている方には、物足りないかもしれませんが… とりあえず次回は人修羅とライドウしか出ない勢いなので、軽く御期待下さい。
セエレの馬から生えているポールを武器にさせたのは、完全に捏造&妄想です。この連中の物理攻撃がイメージ湧かな過ぎて、少々止まってました。


↓ここから本気で雑談↓

序列46番の地獄の伯爵
「皆様は「三國○双3」を御存知でしょうか……そう、あの孔明がビーム出すゲームで御座いますよ! あれの曹操をメインキャラとして使用しておりましてねェ、まだ成長しきっておらぬ状態で『宛城の戦い』を迎えた訳ですよ。 どういう内容か説明しますと「めちゃんこ強い呂布から逃げつつ、ゴール地点まで逃げる」というのが、そのステージのクリア条件です。 しかしですね、ゴールに到着したのに、クリアにならなかったのですよ! いやもう、座標がズレているのかと思いウロウロしましたしィ?他の敵も全員倒してありますから、やり残しも無い筈ですよぉ? 何故かゴールにならないのでス!恐らくバグってやつですねぇ、納得いきませんがァ! と、そうこうしている間に、現在のレベルでは到底勝ちようも無い相手《呂布》が追いついてきちゃいましてね……「あーこれは死んだな」と悟り顔になりつつも、私は悪あがきをしたくなり…乗馬状態で逃げつつ試行錯誤しておりましたが、なんとか「一方的に攻撃出来る方法」を編み出したのです! それはですね……「武器をひたすら振りながら一定の角度にカメラを合わせ、呂布の周囲を最短距離でひたすらぐるぐると回り続ける」という方法です! いやハタから見たら意味不明な図ですが、これが効果抜群! 本当に一方的に討ち取れちゃいましてねェ!いやー愉快愉快!それ以来、あの方法をメリーゴーランドと呼んでおりまして、あのバグ事件は「曹操のメリゴ」という名称で身内一同に親しまれております。

序列70番の地獄の君主
「うーん120%どうでもいい……」