* あとがき*
日常に戻れたのは形だけ。
人修羅にとっては、変質した世界に見えるそれも、ライドウにとっては今まで生きてきた世界と何ら変わり無い、そんなトウキョウ。ボルテクスで無くとも、悪魔は既に存在していた事を認識する、そんな回。人修羅の心理描写で解る様に、彼は契約時の行為を思い出せていないです。これが後々波乱を…
SSにはちらりと出ましたが、人修羅のバイト先は書店。
ライドウは愛撫好き、キス魔。人修羅は色々浅い所為か、感度鋭敏。悲劇なり。
名について指摘され、少し逆切れなライドウ。
《エンプーサ》
ライドウの説明のままです。交差点というワードから採用。翼は無いデザインの方で。
《林檎》
…がテーマでしたが“冷蔵庫に比較的有りそうな物”で選出しました、という無計画性。
禁断の果実、黄金の林檎、は神話によく出るモチーフですが。あえての《不和の林檎》
不和の林檎は、ギリシャ神話のトロイア戦争を引き起こしたきっかけで…黄金の林檎の別名だそうですが。祝いの式に呼ばれずに怒ったエリスが「この林檎を一番綺麗な女神に」と云い、ぽん、と式場に放置すると…ヘラ・アフロディーテ・アテナがそれを取り合う…誰が美しいのかを周囲に問い…と、まあ林檎ひとつで戦争に発展してしまうという…
「己が真に美しいと思う一人を選定すれば、他の二人によって何かをされる。己はそれを回避したい⇒他の者に選ばせる」これが廻り廻って、結局火の粉になるのですが。
黄金の林檎は“認知的不協和”を対象者に引き起こす為のメタファーらしく。認知的不協和というのは「人が自身の中で矛盾する認知を同時に抱えた状態、またそのときに覚える不快感を表す」との事。
矛盾を抱えてその不快感を解消する為に、幾つかの行動指針を定める。しかし、それが実行出来なければ、他の捉え方(認知)をして解消せんとする。
ややこしい上、勝手な解釈で文中に置きましたが…
人修羅とライドウにとって、互いが黄金の林檎の状態。という事をそれとなく表現したかった。
《人修羅にとっての矛盾》
認知A「散々甚振ってきたライドウが憎い」
認知B「今の自分を知る、拾い上げてくれた人間、縋れる相手」
この矛盾を解す認知Cを追加する
⇒認知C「互いの目的の為、契約中は共生する」
しかし、契約と無関係な部分で依存が発生すればどうなのか?ここで認知を追加する可能性が有る。
⇒認知D「 」
《ライドウにとっての矛盾》
認知A「人修羅を利用して、ヤタガラスを潰す」
認知B「自分と同じ心を共有してくれるのではないかという深層心理」
この矛盾を解す認知Cを追加する
⇒認知C「契約という形を取り、人修羅を悪魔に育て上げる(認知Bの最終的な打破)」
しかし、これが今後完全に遂行出来るのか?人間の彼を消す事に戸惑わぬのか?ここで認知を変える可能性が有る。
⇒認知D「 」
この認知D以降を考えるのが好きで書いている…そんな感じです。
軽く云えば、己へのいいわけであって、誰しもが齧る林檎だと思います。
《葛葉ライドウ=善悪を知る果実⇒不和の林檎》
これを欲するには、人間を捨てる覚悟が必要。それを食まんと、烏達は喰い合う。それを喰らう為に育てられた仔烏の一羽だった夜。善悪を知る果実を喰らえば、いつかは人間に成れると心のどこかで思っていた。ライドウの立場に成り、外界に出た時、彼は哂うしかなかった。文献の知識は有ったものの、彼の守護する世界は、ヤタガラスが暗躍する里と大差無い世界だった。そして己は、ライドウとしてしか生きれないのだと思い知った。
善悪を知る果実と云えば聞こえは良いが、夜はこの林檎を、ただの不和の林檎としか、今は思っていない。そして善悪というものは表裏一体であり、境目は無に等しいと思っている。
妙にだらりと書いてしまいましたが、流してやって下さい。上記の様な意識で書いた回。林檎の薫りのMAGとマガツヒ。