雷堂ちゃん〜陵辱黒マントは王子様!?〜

 

暗い廊下を出て、中庭の見える渡りを歩んで行く。
掌で揺れる眼帯の紐が、暗闇にちらちらと目立っていた。
「終わったかい?」
ぬらり、と暗がりから現れたのは我の分身…葛葉ライドウだ。
「…ああ、魂魄剥がれず、紐が切れた…恐らく今回は満足した」
「何その今回って、喧嘩売っているのか?お前」
伸ばされた腕を避けもせずに、首を絞められる。
「ねぇ、人修羅に何をした?本当に侵入していないのか?ねえ雷堂?」
ざりざりと、中庭に引っ張られる。
互いに裸足なのに、芝の上を踏み荒らしていく。
「げはっ…ほ…本当、だ…表面を…頂いた…だけ、だ」
苦しいが、弁解はしたかった。
すると口を吊り上げたライドウが、少し背の高い草むらに我を押し倒す。
がさがさと草の音に、ふわりと蛍が数匹舞って、光を消した。
烏の息が通るこの茶屋は、酷く豪奢であり、中にはせせらぐ水路があった。
そんな美しい庭を荒らしている。
「どれだけ僕を苛々させたいのだお前は…」
首を解放されて、咽かえった。
「本当はね、聞き耳のひとつも立ててやりたかったのだがね」
「げふっ!は、ぁっ…げほっ」
「流石は烏の羽で黒いだけある……呼び出されたよ、他の部屋にね」
暗闇で光る彼の眼は、蛍の所為では無い。
憎しみに揺れる、ヤタガラスのデビルサマナーの眼。
「こんな処だ…確かに御偉方が来ていて、おかしな事は何も無い…」
「何をされた…のだ?」
「云わせるのか?ククッ…本当にお前は残酷だよ」
外套を開き、学生服の詰襟を弛めたライドウ。
暗闇に白い肌が浮かび上がったが、その白に点々と赤が混じっている。
眼を凝らし、ようやく鬱血痕だと分かった。
「な、何故…」
「何故?知るか…そんな事、奴等に聞けばどうだい?」
すると、掌をばしりと衝撃が奔った。
眼帯の感触が無い。
取り上げたライドウが薄っすら哂って我を見下す。
元より返上するつもりだったので、そこまでは問題無かった。
「僕はね…喰われるより喰らう方が、好きなのだよ」
右瞼に、何かがかぶさる感触と、頭にぐるりとライドウの腕が回された。
「っは、あ、ぐ、ああああッ」
身体の熱が流転して、胸がぐ、と苦しくなった。
ホルスターを押し上げて、膨らんだ胸が主張していた。
再度女体に成った事に、ようやく脳内が追いついた。
強制的につけられた眼帯は、きっと外しても魂魄は剥がれない。
しかし、ライドウが眼の前に居る限り、容易いとは思えぬ。
「な…んだ…女体の我を哂いたいのか?貴殿…っ」
動きが、その両腕で封じられる。同じ影なのに、この差は男女のだろうか。
「雷堂……功刀のMAGがさぁ…流れ込んで来たよ…僕にもねぇ」
視線が近付く。額が触れる程に、近くから、その眼に射抜かれる。
「部屋が遠くない所為かね…感情で溢れるから、あれはマガツヒと呼ぶべきかな?」
唇が吊り上がるが、我を羽交い絞めにする腕の力は増すばかりで。
「あいつ、微かに歓んでいるじゃないか…ねぇ…どういう事だい?」
「…」
「聞いてるのか日向」
我の胎にライドウの膝が入る。背が地面から浮いて、くの字に身体が折れる。
だが、咽返る呼吸を抑え、我は云った…
「何故?知るか…そんな事、矢代君に聞けばどうだ?」
先刻のライドウの言葉を借りれば、みるみる内に彼に殺気が宿った。
何故ライドウを挑発したのだろうか…我は、やはり諦めきれていないのか。
「そうだね…では、また功刀を鳴かせて、聞き出すとしようか」
クスクスと哂って、続いて耳元で述べられる。

「だが、その前に、お前を喰らってやるよ」

括ってあるホルスターの結び目が、ライドウに噛まれて解かれる。
弾む胸が露わになると、片手をそこに持ってきたライドウ。
「ぐぅッ!」
乳房をギリリと握られて、身体が強張る。
離された片腕を、その顔に向けて拳と見舞おうと振るう。
しかし、咄嗟に乳房から離れた手が、我のその腕を逆手に取り、捻りあげた。
外れる感触。
声も出なかったが、その闇色の眼を片目で睨んだ。
「下手に動かしたら関節外される事くらい習ったろう?」
「…こんな無体を働く為にとは、教わらなんだ」
「へぇ、僕は全部外されて犯されたから、実に良い実習だった訳だ」
再び乳房に指が舞い戻って来る。
「ナルシズム溢れる発言で、少々自分に辟易するが…」
緩急つけて揉みしだかれる其処に、息が上がる。
「吸い付いてくる、好い胸だよ雷堂」
「…黙れ」
「これは功刀も血を噴く訳だ」
やがて、近くの水路を流れる水音が煩くなってきた。
いいや、違う。
「先刻の擬態が継続しているのか?凄く濡れてるな?雷堂…ククッ」
指が、下に入っている。さらさらと流れる音ではなく、粘着質な水音。
「散々濡らしておいて、功刀だけ善がっていた訳か」
「わ、我の…っ、勝手だ!それ、は、当然だろう」
「君も功刀も残酷だな、ああ残酷だ」
唄う様に紡いだライドウが、指を抜いた。
「だがね、一番残酷なのは誰か、知っているか?」
唇を歪めたライドウが、そう云った、次の瞬間。
「っ…く………ぅ」
一気に突き抜けた衝撃と圧迫感に、何とか悲鳴は抑えた。
だが、それが癇に障ったのか、ライドウがぐい、と腰を打ち付けてくる。
ぐじゅっ、と酷い音がして、臀部に他人の張った陰嚢が当たる妙な感覚。
見下す視線のライドウが、我を観察でもするかの如く、眺め見ていた。
こんな凶悪なものを後孔に呑まされている人修羅を思うと、ぞくりとした。
それに悲鳴を上げて、身体を蠢かす彼を思うと…
今、無い筈の雄が反応した錯覚に陥った。
「フン、何故今締まる訳?」
嘲笑しながら、ライドウが奥に抉りこんできた。
「ひぎっ、あぁッ!」
油断が零した喘ぎに、やや満足したのか、ライドウが腰を強くする。
「ねぇっ、僕がさぁ!犯されている時に、お前達は、どんな気分で抱き合った!?」
「あっ、くうぅッ!!」
「気持ち悪い豚共に舐められつつ、使役悪魔のMAGがヒリつく程うざったくてねぇ!!」
胸元にライドウの唇が寄り、ちゅう、と音を立てて吸われる、
それに震えが来て、足下からがくがくと波が押し寄せた。
「やめっ…やめぬかッ!ラ、ライドウ…!!」
叫ぶ己の声が、決して苦痛のみを帯びている訳で無い事に絶望する。
「お膳立てした功刀にはっ…寧ろ礼を云うべきかな?ねぇ…どう?」
「ひ…ぃ…ッ」
「は…ぁっ……フ、フフッ…僕と同じ顔で、そんな表情しないでくれ給えよ…」
学帽をくい、と上げられ、少し視界が開けた。
「犯されてる時の僕の顔、そうなっているかと思うと腹立たしいのだよ!」
膝裏に手を回され、思い切り下半身を持ち上げられる、繋がったまま。
ライドウの両肩の、弓月の君の白ラインの上に、我の脚が乗せられた。
角度を変えられ奥に当たるライドウのそれに、嬌声が上がってしまう。
「あっ!あああああ」
「いくら待合茶屋とて、声が大きいよ…蛍も逃げてしまった」
「あ、ああ、抜け、抜いてくれ…っ…頼む…ライドウ」
「ほら、こうすると結合部がよく見えるだろう…ね?ククッ」
「ぅぁあ…ぁ」
「だらしなく涎垂らして、そんな眼帯着けて、本当に無様だね、お前」
ずるり、と半分程抜かれて、少しの安堵に息を深く吐いた。
「弱いお前は、僕に助けられ…マーラの餌食にならずに済んだ訳だが」
出口をわざと擦る、その腰の動きのもどかしさが卑猥で、頬が熱くなる。
「あの時の借り、今返させて頂こうか…雷堂っ!」
ごりゅ、と一気に奥まで突かれて、その壁を長々と擦られた感触に
ビクビクと爪先が痙攣した。
「ぁぁあああぁぁ」
つう、と首筋を唾液が伝っていくのが分かった。
きっと、今男だったのなら、下は吐き出していた、ほとばしっていた。
「ほら、雷堂」
バシリと頬を叩かれ、顔が横に向いた。
「だらしない顔、もっと見せておくれ!」
哂って云うライドウが、顎を掴んできた。
ぐい、と視線を合わされる。
「お前、僕の形だが、やはり人修羅に似ているよ」
ニタリとして、唇に指を突っ込まれる。
舌を引っ込めたが、狙い済ましたかの様に指先に摘ままれた。
ぐい、と引かれ、自然に口が発声するみたいに開いた。
「自己保身で弱くなっている事にも気付かぬ、その愚かしさに殺したくなる!!」
突き出させられた舌に、ライドウが引き抜いた自身を向けた。
「んッ ん んん゛ぅ っ」
舌にびゅくびゅくと、白い粘液が、樹液みたくこびりついて薫った。
どろりと、喉に流れ込んでくる…
「っは……」
息を乱したライドウが、我の脚をようやく離して、地面に放った。
どさ、と放られた脚は、達した際の痙攣が未だに続いていた。
「…ぁ…ははっ……汚い顔」
我を見て嘲笑う彼は、眼帯を我から外していった。
少し白く濁ったその桃色を見つつ、ライドウが呟いた。
「殺したい反面…嗜虐心を煽られるよ、惨めなお前達にね」
赤い鬱血を隠す様に、事が済んだ途端学生服に身を包み始める。
微妙に萎えきらぬ雄の先端を、ぐり、と我の脚で適当に拭ったライドウ。
「この眼帯…予定通り、僕が預かるよ、烏もそれは承認したからね」
横たわり、男に戻る感覚を湿った空気に晒していた。
ライドウが、我の傍に屈み、耳元で囁いていく。
「今度、人修羅に関わってみ給え…」
その声音が、低くなった。
「また、女体のお前を犯してやる」
男の我の尊厳を殺いでいく、その宣告。
立ち上がる彼の黒い外套が、暗闇に溶け込む。
「そうそう、女体のお前とは意外と相性が良いみたいだからねぇ…クク」
何を返して良いか分からず、阿呆の様に横たわる我。
草を掃うライドウが、桃色の眼帯に口付けて吐き捨てた。

「僕の為に今度は変身してもらおうか?雷堂ちゃん?」

蛍達が帰ってきた。
独り横たわる我に、はらりと留まる。
眼帯を無くした右眼を、仲間だと思っているのだ。
同じ金色を、仲間だと思っているのだ。
同じ金色を持った所で、同じ存在に成れぬと、分かっていたのに。

熱を帯び始める右眼の為に、新しい眼帯を帰ったら探そう。
そう思い、重い腰を持ち上げた。
甘美な痛みが、腹立たしくて、ライドウを呪った。
きっともう、変身しない。
(そう…そうあって欲しい…我はそう願う筈…だろう?)
呼応するかの如く、身体が疼いた。
熱を冷まさんと、水辺に…よろよろと近付いた。

水面には、愉悦を滲ませる顔が映っていた。


陵辱黒マントは王子様!?・了
* あとがき*

酷いな(二回目)
こちらの方が書くの疲れました…難しい。
大してエロくならず、もう駄目だこりゃ。
ライドウはあんな事云ってますが、ナルシストです。
きっと女体化した雷堂の身体は、美味と感じています。
雷堂はあんな事思ってますが、最後ので分かる様に…
女体で犯された快楽が尾を引いています(変態)
おまけに最中に人修羅が犯されている妄想でたぎってるし、ド変態です。
あっ!『雷堂ちゃん』は当然、本編及び徒花のパラレルですので!
コレが真実になったら、雷堂はライドウにも疼いている事になってしまう…!